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動物実験大国・日本の残酷な真実、禁止国が増えているのになぜ?

2019年09月08日 06時00分更新

文● 福田晃広(ダイヤモンド・オンライン

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動物実験で使われるマウス
世界では動物実験を止める方向の動きが進んでいるが、日本は大きく後れているという Photo:PIXTA

医薬品、健康食品、化学製品、農薬などの研究開発、安全性確認、有効性評価など、あらゆる分野で人類に関係している「動物実験」。安全性を確かめるには必要悪と考える人も多いかもしれないが、動物実験に代わる方法を取り入れている国が増えてきているという。NPO法人動物実験の廃止を求める会の事務局長である和崎聖子氏に詳しい話を聞いた。(清談社 福田晃広)

疑問を感じず
残虐な実験を続ける日本

 動物実験といえば医学研究や新薬開発のイメージが強いかもしれないが、化粧品、日用品、食品添加物、農薬、工業用品などでも行われている。

 そのほかにも化学物質の毒性試験や生理学、栄養学、生物学、心理学などの基礎研究、大学や学校といった教育現場における解剖や手術訓練などの実習、あるいは兵器開発などの軍事領域まで、さまざまな分野に広がっているのだ。

 実験に使われる動物も多岐にわたり、マウスやラット、モルモットから、犬や猫、ウサギのほか、鳥類、魚類、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、さらにはサルやチンパンジーなどの霊長類まで幅広い。

 動物代替センターを運営し、動物を用いない研究への助成機関のAnimal Free Research UKと、英国動物実験廃止連合(CFI)の調査によると、世界では毎年、推定1億1530万匹以上が犠牲になっているというデータがある。

 しかし日本では、どのくらいの数の動物が犠牲になっているのか、はっきりわかっていないという。和崎氏はこう語る。

「EUやアメリカでは、施設の登録、査察が義務になっていますし、違反が見つかれば罰則があります。一方日本では、兵庫県のみ条例で施設の届け出制があるだけで、国として実態を把握するシステムがなく、実験施設の場所はおろか、年間どのくらいの動物が実験に使われているかといった統計が一切出てこないのです。なかには雑居ビルの一室で動物実験が行われていたという、驚くような例もありました」

得られるデータは
人間に当てはまるとは限らない

 動物実験の目的として、「医学の進歩のため」「科学の発展のため」「人間の安全のため」「教育のため」が挙げられる。それらの大義名分のもとで行われている実験とは、具体的にどのようなものなのだろうか。

「たとえば、化粧品の安全性や有用性を調べるために、ウサギの目に化粧品の成分原料である化学物質を注入したり、モルモットの背中の皮膚をあらかじめ損傷させそこに被験物質を塗布したり、絶食させたマウスに強制的に被験物質を投与したりするなど、およそ美しさとは程遠い残酷な実験が行われています。いずれの実験でも動物は徹底的に苦しめられた後、殺され廃棄される運命をたどります」

「化粧品や日用品、食品添加物などの安全性を調べるためにはやむを得ないのではないか」と考える人もいるかもしれない。ところが、その動物実験で得られたデータの多くは人間に当てはまらないと、疑問視する医師や専門家も増えているという。

「動物に化学物質を飲ませたり、有害物を皮膚に塗ったりする実験によって、人間には安全だと判断されたはずが、後になって人体だけでなく環境への危険性が明らかになったケースは数多くあります。というのも、人間と動物では体の構造や代謝機能などに大きな差(種差)があり、薬物に対する反応も違うからです」

「研究施設内で行われた動物実験のデータを、人間にそのまま当てはめることはできないと主張する医師や科学者も多いのです。むしろ『動物実験によって得られたデータが、人間の病気の治療に誤った知識をもたらし、医学の進歩を遅らせている』と主張する声が高まっていて、専門的見地からも動物実験の過ちが指摘されています」

欧州では小中高での
解剖実習は禁止!

 欧州諸国では、大学以下の学校で動物の解剖が法律で禁止されているが、日本の教育現場では、今でも多くの小中高校でカエルや魚などの解剖実習が行われていると和崎氏は指摘する。

「学校の解剖実習は、動物の命を実験材料としてモノ扱いさせるため、子どもたちがふざけて弱いものは殺してもいいんだと思うようになるなど、動物に対する感覚を狂わせる危険性があり、倫理観の欠如につながりかねません。ソフトウェアを使った代替法で学んだ生徒と、実際に生きた動物を解剖した生徒の成績を比べると、前者の生徒たちのほうが良かったという論文があります。代替法だと、何度も繰り返し実験できるので、学習効果が高いのです」

 和崎氏によれば、大学の医学部、獣医学部においても、たとえば、すでに英国に8つある獣医学校すべてで生きた動物を犠牲にするカリキュラムがなく、米国とカナダにある医学校100%(211校中211校)には生きた動物を用いるカリキュラムがないという。

 動物実験をすることに何の疑問を持っていない日本とは、大違いなのだ。

 先述したように動物実験が行われる分野は幅広い。すべての分野で代替法があるわけではないが、特に化粧品開発に限っては、培養細胞、人工皮膚モデルなどを用いた代替法が確立しているものも多く、世界的に動物実験禁止に向かっている。

世界で広がる
動物実験の代替法

 欧米では、消費者たちが「動物を犠牲にした製品は使いたくない」と声を上げた結果、多くのメーカーが動物実験廃止を宣言した歴史がある。

 国としてもイギリス、ドイツは1998年に禁止に踏み切り、EUは2004年から、化粧品(シャンプー、リンス、整髪料などを含む)開発の際、段階的に禁止することを決め、2013年には完全禁止とした。

 さらにOECD(経済協力開発機構)やICH(医薬品規制調和国際会議)といった国際機関の化学物質や医薬品の安全性試験ガイドラインにおいても、代替法を取り入れる努力が進められている。

 EUにならうかのように、イスラエル、インド、ブラジル・サンパウロ州、ニュージーランド、台湾などでも化粧品の動物実験が禁止になっており、世界標準となりつつあるのだ。

 大前提として、動物実験は、実験動物を維持管理のための場所の確保、給餌の手間など、飼育コストがかかる。

 それに比べて、代替法は試験管やコンピューターで行うことで経費も時間も圧倒的に削減できる上、人間の細胞を使って、人間に対する安全性を調べられる。また、有毒廃棄物を少量で抑えられるので、実験者の労働衛生や環境保護の点からも有益であることもわかっている。

日本では広がらない代替法
問題意識の希薄さがネックに

 では、なぜ日本ではなかなか代替法が普及しないのだろうか。和崎氏は憤る。

「世界各国の動きに対して、日本でも化粧品に関しては大手をはじめ、自主的に動物実験を廃止している企業が多数あります。厚労省も代替法を勧める通知を企業に出しているものの、なかなか広がらないのが現状。確かに今までとはまったく種類が違う実験方法なので、施設や人員も様変わりさせる必要があり、企業に負担はかかるでしょう。しかし、国際的な動向を考えると、代替法に切り替えるほうが企業にとっても良いはずです」

 今年の6月12日、動物虐待の罰則強化や、ブリーダーやペットショップといった動物取扱業への規制強化などが盛り込まれた改正動物愛護法が成立した。しかし、実験動物に関する改正は、皆無に終わった。

 現状、世界各国から後れを取っている日本も、国として問題意識を持ち、動物実験からの脱却を考える時期にきているのだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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