Kubernetesなど新領域に強く踏み出す、VMworld 2019レポート 第1回
vSphereへのKubernetes組み込みにも言及、「VMworld 2019 US」ゲルシンガーCEO基調講演レポート
「VMware Tanzu」発表、“エンタープライズKubernetes”加速を支援
2019年08月28日 07時00分更新
米ヴイエムウェアは2019年8月26日(現地時間)、米国サンフランシスコで開催中の「VMworld 2019 US」において、Kubernetesベースでモダンアプリケーションの開発/実行/管理を支援する製品/サービスポートフォリオ「VMware Tanzu(タンズ)」を発表した。1日目基調講演に登壇したCEOのパット・ゲルシンガー氏は、TanzuはエンタープライズグレードのKubernetes環境を実現する包括的なポートフォリオであり、VMwareにしか実現できないユニークなものであることを強調している。
Tanzuには、買収合意を発表したばかりのPivotal製品をはじめ、あらゆる場所にあるKubernetesクラスタを一元管理する「Tanzu Mission Control」、「VMware vSphere」にKubernetesの実行/管理を統合する「Project Pacific」なども含まれるという。
アプリケーション開発者/IT運用担当者の間を橋渡しする「VMware Tanzu」
VMware Tanzuは、Kubernetesベースでモダンアプリケーションの開発/実行/管理を実現する幅広い製品/サービス群を包含するブランド名だ。ちなみに「Tanzu」はスワヒリ語で「枝(branch)」を意味しており、単一のコントロールポイントから大量のクラスタを管理するイメージから取られたという。
Tanzuによって、開発(Build)/実行(Run)/管理(Manage)という3領域をカバーする包括的なモダンアプリケーションの世界を実現し、開発者(Developer)とIT運用担当者(Operator)の間の「橋渡し」もできる、というのがヴイエムウェアのビジョンだ。ゲルシンガー氏は、これが実現できるのは幅広いポートフォリオを有するヴイエムウェアだけだと強調したうえで、それぞれの主要な構成要素を紹介していった。
まずモダンアプリケーション開発(Build)の領域は、PivotalやBitnamiの製品/サービスで構成される。いずれもここ数カ月間でヴイエムウェアが買収予定を発表した企業であり、開発者コミュニティに深く浸透している製品/サービスを保有する。
たとえばクラウドネイティブアプリの実行環境「Pivotal Application Service(PAS、旧Pivotal Cloud Foundry)」は、世界中の75万以上の企業本番環境で稼働している。またKubernetesクラスタ向けに事前構築/テスト済みのアプリケーションパッケージカタログを提供するBitnamiは、250万の開発者ユーザーを抱えるサービスだ。
次に、アプリケーションの実行(Run)の領域では「Project Pacific」という大きな発表が行われた。これは「VMware vSphere」の次期バージョンにおいてKubernetesの実行/管理機能を組み込むことを目標とし、現在のvSphereを再構成していくというプロジェクトである。
具体的にはvSphereのコントロールプレーンにKubernetesを組み込み、VMware仮想マシン環境とKubernetesを統合管理できるようにするほか、ESXiハイパーバイザに対応するコンテナランタイム(軽量VM)を用意してKubernetesベースのアプリケーションを実行可能にするという。
また仮想マシンやコンテナの単位ではなく、アプリケーション単位でのポリシー適用やアクセス制御といった管理も実現する。これにより、アプリケーションが多拠点にある複数のクラスタで構成されている場合にも、シンプルな管理が可能になる。
Project Pacificによって、IT運用担当者はvSphereを通じて開発者にKubernetesクラスタを提供し、また開発者はKubernetesのAPI経由でvSphereの管理機能にアクセスできるようになる。
ヴイエムウェア プリンシパルエンジニアのジョー・ベダ(Joe Beda)氏は「vSphereをすべてのモダンプリケーションのために拡張し、最も信頼できるプラットフォームにしていくためのプロジェクトだ」と説明した。またESXi上でのKubernetesのパフォーマンスについては、開発中の製品では「Linux KVMよりも30%、またベアメタルよりも8%高速に動作する」結果が出ていると述べている。
またゲルシンガー氏は、vSphereには約50万社のカスタマーベースがあり、数百万人規模の運用エンジニアを持つため、vSphereがKubernetesに対応することになれば、コミュニティや市場に大きな影響を与えることになるだろうとの見方を示した。
最後に、Kubernetes環境の管理(Manage)領域においては、新しい管理ツールであるVMware Tanzu Mission Controlのテクノロジープレビューが発表された。このツールを使うことで、パブリッククラウド、マネージドサービス、オンプレミスのディストリビューション、あるいは上述したvSphere組み込みの環境まで、あらゆる場所にある大規模なKubernetesクラスタが単一のコントロールポイントから管理可能になる。
Tanzu Mission Controlにも、ヴイエムウェアの幅広い製品/サービスやオープンソースプロジェクトの機能、技術が組み込まれている。具体的にはKubernetesクラスタやコンポーネントの健全性評価といった監視機能、詳細な診断機能、運用担当者によるクラスタ単位のポリシー管理機能などが提供される。あらかじめ運用担当者が設定したポリシーの枠内で、開発者がセルフサービス型で自由にリソースを利用できるような環境も実現可能だ。
なお前述したとおり、VMware Tauzuはある種の“ブランド名”であり、上述した製品/サービス以外にもさらに幅広いものが含まれる。今後もさらに拡大していくものと考えられる。
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