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“Ariba+Fieldglass+Concur”で包括的かつ戦略的な支出管理を実現、担当幹部インタビュー

SAPが3つのSaaSで考える「インテリジェント支出管理」とは

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 SAPジャパンが2019年7月下旬に東京で開催した「SAP Ariba Live Tokyo」では、同社が掲げる“インテリジェント支出管理(Intelligent Spend Management)”のコンセプトや、それに基づく施策が紹介された。間接材調達/購買管理の「SAP Ariba」、外部人材/サービス調達管理の「SAP Fieldglass」、出張経費管理の「SAP Concur」という3つのクラウドサービス(SaaS)間で連携を強化し、そこにAI/機械学習技術も適用することで、企業全体を包括する支出管理や関連業務プロセスの効率化/自動化を実現するというものだ。

 このコンセプトによってSAPはどんなことを実現しようとしているのか、同日の基調講演とインタビューで語られた内容から読み解いてみたい。

SAP Ariba Live Tokyoは東京・六本木のグランド ハイアット 東京で開催された

個別インタビューに出席したSAPジャパン VP 調達・購買ネットワーク事業本部長の佐藤恭平氏、SAP Ariba & SAP Fieldglass SVP ビジネスネットワーク&エコシステムのショーン・トンプソン(Sean M Thompson)氏、SAP Ariba CPO(最高製品責任者)のダレン・コーチ(Darren Koch)氏

「インテリジェント支出管理(Intelligent Spend Management)」とは

 基調講演の中でコーチ氏は、インテリジェント支出管理を簡単に言うと「Ariba、Fieldglass、Concurがそれぞれ持つ“最良の部分”をひとまとめにして提供するもの」だと説明した。コーチ氏によると、このコンセプトは「3つのサービスを統合してほしい」という顧客の声から生まれたという。

 具体的には、これら3つの支出管理系SaaS間でデータ/機能連携を可能にし、さらには企業バックエンドの“デジタルコア”であるERP「SAP S/4 HANA」や、データ分析/BIツールの「SAP Analytics Cloud」データ統合管理基盤の「SAP Data Hub」、AI/機械学習技術の「SAP Leonardo」なども組み合わせようというものだ。

 これにより、間接材調達/外部人材手配/旅費・経費支払に関するデータを統合的に可視化できるほか、支払に関するポリシーやサプライヤー管理の一元化、さらに支払業務プロセスの自動化など、包括的かつ戦略的な支出管理環境を実現する。

インテリジェント支出管理の概念図(SAPホワイトペーパーより)。各カテゴリの支出やそのポリシー、サプライヤー情報をまとめて管理する

 SAPではこの製品間連携の取り組みをすでにスタートしている。ただし、これはAriba/Fieldglass/Concurを統合していくような取り組みではなく、それぞれ独立した製品間での機能/データ連携を可能にしたソリューションとして提案していく方向性だという。

 コーチ氏は、このインテリジェント支出管理においてSAPが提供する「5つの柱」があると語る。アプリケーション間で統一された「ユーザーエクスペリエンス」、豊富なデータに基づく「アナリティクス/インサイト」、幅広い「サプライヤーとの関係」、LinkedInやDocuSignといった「外部サービスとのオープンな連携」、そして「包括的な支出管理」という5つだ。

 特に、幅広いサプライヤーとの関係については、SAP Aribaネットワークの急速な成長ぶりを強調した。Aribaでは現在およそ400万社のサプライヤーネットワークを持っており、それに伴って年間3兆ドル以上のB2B取引が行われるようになっている。「この3兆ドルという数字は、AmazonとAlibaba、eBay上の商取引をひとまとめにして、さらに2倍したほどの規模だ」(コーチ氏)。

SAP Ariba CPOのダレン・コーチ氏

 また、昨年から日本市場でも提供を開始したFieldglassについても「特に今年に入ってからは加速度的に成長しており」(佐藤氏)、今後はさらに成長が期待できるという。2020年度以降、働き方改革関連法に基づいて日本企業にも“同一労働・同一賃金”の実現が求められるようになるため、派遣社員など非正規雇用労働者への待遇を全社的に可視化し、一元管理する仕組みが必要となるからだ。Fieldglassを利用することで、日本を含む各国の労働法制に準拠した外部人材手配や管理を容易に行える。

 「“同一労働・同一賃金”化に加えてもうひとつ、労働人口の減少を踏まえて“高度人材”をどう確保していくのかも、日本の顧客企業におけるトピックとなっている。製造、建設、SIer(IT)など、外部からの雇用で高度人材を確保している現場は多い。単に外部人材が多いだけでなく、その雇用形態も多様で複雑なため、その全社一元的な管理が課題となっている」(佐藤氏)

 佐藤氏は、最近では顧客企業においても「スペンドマネジメント」という名前の部門を設立するケースが出てきていると説明した。つまり包括的、戦略的な支出管理を考える企業が増えており、SAPのインテリジェント支出管理というコンセプトも市場に受け入れられるだろうと語る。

SAPジャパン VP 調達・購買ネットワーク事業本部長の佐藤恭平氏

機能モジュール群の統合、さらにAI/機械学習技術の幅広い適用

 基調講演では、SAP FieldglassのCTOであるヴィッシュ・バリガ氏が、AribaとFieldglassの具体的な連携方針について紹介した。まずはAribaとFieldglassにおいて機能が重複するコンポーネント群を統合し、合理化していく作業を現在進めているという。

 「たとえば『契約統合』モジュールはAribaにもFieldglassにもあるが、より機能が優れたAribaのモジュールを両方のデータに対応させ、それを使う。同様に『サプライヤーオンボード』も、これまでは別々にプロファイル管理していたものを統合する。『サービス見積』についてはFieldglass側がエンジンになる。『カタログ統合』においては、間接材と労働力(人材)を単一のカタログに統合することで、まとめて調達可能にする。顧客企業がRFP(提案依頼書)にモノ/人材を一緒に書き込むことも可能だ」(バリガ氏)

Fieldglass CTOのヴィッシュ・バリガ(Vish Baliga)氏は、SAP AribaとSAP Fieldglassの機能連携/統合やイノベーションの計画について説明した

 さらにバリガ氏は、Fieldglassの将来的なロードマップにも触れた。統合されたデータに対してAI/機械学習技術のさまざまな適用が考えられており、たとえば現場の管理者がチャットボットと対話するかたちでポリシーに応じた契約を完成させたり、機械学習エンジンが多数の候補者から履歴書データ基づき最適な候補を推薦したり、RPAを組み込んで業務プロセスを自動化したりといった将来像を描いているという。

 AI/機械学習の適用先についてコーチ氏は、製品コードのルックアップなど「ルーチンタスクの自動化」、購買プロセスにおける「最適なアイテムのレコメンド」、そして複雑な承認プロセスにおける「承認の自動化」など、幅広い用途が考えられると述べた。

 「たとえば、経営層があるプロジェクト全体を承認済みの場合は、そのプロジェクトに属するより小さな承認申請をいちいちチェックする必要はない。これを自動化することができる。そのほかにも、承認段階で取引先のリスクを自動的にスコアリングし、リスクの高低を見極めたりすることもできる」(コーチ氏)

オープンなプラットフォームとしてサードパーティとの連携も強化

 オープンなプラットフォームとして、パートナーエコシステムを拡大していく方針も強調された。エコシステムの担当役員であるトンプソン氏、製品開発の担当役員であるコーチ氏はそれぞれに、SAPの姿勢が急速に変わってきたと説明する。

 「この18カ月ほどの間に、われわれはカルチャー、そしてやり方を大きく変えた。これは重要な変化だ。具体的には、もっと『エコシステムのパワー』を受け入れていこうという考えになってきている」(トンプソン氏)

SAP Ariba & SAP Fieldglass SVP ビジネスネットワーク&エコシステムのショーン・トンプソン氏

 「製品開発においても“オープンさ”が重要な要素になってきている。以前はすべて“自前主義”だったが、多様なデータやコンテンツが必要になってくると、すべて自前では難しい。他の会社(パートナー)が得意な領域は、やってもらうほうがいいと考え始めた。これは顧客のためにもなる変化だ」(コーチ氏)

 基調講演の中で、SAPジャパン 調達・購買ネットワーク事業本部ソリューション部 ディレクターの川崎雅弘氏は、サードパーティサービスをインテリジェント支出管理プラットフォームと連携させる例をいくつか紹介した。

 たとえば業務プロセスの見直しについては、プロセスマイニングツールの「Celonis(セロニス)」と連携させ、Aribaなどに蓄積された膨大な社内トランザクションデータを収集/分析してプロセスの最適化を実現できると説明した。分析した結果「手戻り」が生じているような場合、機械学習エンジンによってその原因を推察するといったこともできるという。さらにDocuSignと連携させることで、捺印が必要なためこれまで紙ベースで動いていた業務プロセスを、エンドトゥエンドでデジタル化できると紹介した。

AribaとCelonisとの連携例。蓄積された社内トランザクションデータを収集、現状の業務プロセスを詳細に分析/可視化。企業のプロセス改善を支援する

 また今年7月、SAPジャパンでは東京商工リサーチ(TSR)とのパートナーシップを発表している。同日の基調講演ではTSRもゲスト登壇し、両社による取り組みを紹介した。

 この取り組みは、TSRが持つ840万件超の国内企業評価データをサプライヤーリスク管理ツール「SAP Ariba Supplier Risk」に取り込み、顧客企業に提供するというものだ。これまでも海外のデータプロバイダー(米ダンアンドブラッドストリート)が提供する企業データを組み込んでいたが、TSRが提供する詳細な日本語データによって、サプライヤーリスクをより正確にとらえることができる。

 「Ariba Network自身が持つデータにサードパーティのプロバイダが提供するデータも組み合わせ、顧客がより良い意思決定を行えるように、調達プロセスの中にインテリジェンスを組み込んで提供している」(コーチ氏)

 また佐藤氏は、日本市場においてはやはりTSRのような国内データプロバイダーからの情報が重要であり、SAPとしてもそれを強く認識していること、コーチ氏ら幹部からも国内パートナーシップのさらなる強化についてサポートを受けていることを説明した。

 今後の日本市場におけるビジネスへの期待はどうか。トンプソン氏は次のように語った。

 「すでにSAP Concurにおいては、日本は米国に次ぐ第2位の市場となっている。したがってAriba、Fieldglassにおいても、日本市場はこれから重要な位置付けとなってくるものと考えている」(トンプソン氏)

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