このページの本文へ

熱中症対策の「おでこに冷却シート」がおすすめできない理由

2019年08月02日 06時00分更新

文● 福永篤志,羽根田真智(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
熱中症対策
熱中症対策、正しく行えていますか? Photo:PIXTA

今年も猛暑に見舞われるのか……。昨夏は、各地で40度前後に達する歴史的な猛暑だった。しかし気象庁の発表によれば、今年の夏の気温は、沖縄・奄美で「平年並みか高い」ほかは「ほぼ平年並み」の予想だ。では、熱中症のリスクも低いのか――? 気象予報士の資格も持つ公立福生病院脳神経外科診療部部長の福永篤志医師は、「そうとは言えない。今年も十分な対策が必要」と話す。(ライター 羽根田真智)

油断大敵!梅雨明け後の
気温が一気に上がる今が危ない

――今年の夏は平年並みの気温といわれていますが、気温が低くても熱中症対策は必要なのでしょうか?

福永篤志福永篤志
公立福生病院脳神経外科診療部部長
慶應義塾大学医学部卒業後、大東文化大学大学院法務研究科(法科大学院)卒業。脳神経外科医のほか、気象予報士、法務博士と多彩な顔を持つ。気象と病気の関係に興味を持つようになったのは、クモ膜下出血で倒れた40代半ばの患者が救急搬送されてきたことがきっかけ。普段から健康に留意していたという患者が、寒い中屋外で車を水道水で洗っていた時に発作を起こしたという家族の話から、寒さと血圧の関係に着目、その後、さまざまな論文を調べ、気象と病気の関係について調べるようになった。著書に『その症状は天気のせいかもしれません 医師が教える気象病予防』(医道の日本社)がある。

 昨年の夏より気温が低いというだけで、油断はできません。地球温暖化の影響で気温が上昇し、夜間の最低気温が25度以上の熱帯夜や猛暑日が増えていることを考えると、熱中症対策は必須。特に注意していただきたいのが、暑くなり始める「梅雨明け直後」です。

 例年、GW頃から熱中症患者の救急搬送が始まり、7~8月にピークをむかえます。昨年の熱中症による救急搬送状況(5~9月、消防庁)を見ると、全9万5137人のうち、半数以上の5万4220人が梅雨明け後の7月に搬送されています(2018年の関東・甲信越地方の梅雨明けは6月29日)。死亡者は133人でした。それに次ぐ8月は3万410人(うち死亡者は20人)なので、7月が8月を2万人以上、上回っているのです。

――昨年は7月23日に埼玉県・熊谷で国内観測史上最高の41.1度を記録し、7月は平年より2~3度気温が高い状況でした。救急搬送された人が多かったことに関係しているのではないでしょうか?

 もちろん、それも言えるでしょう。たしかに、各地の最高気温の動きと熱中症患者数を見比べると、多くの地域で7月に最高気温が上がり、それに伴い熱中症患者数も増えています。ところがその後、最高気温が高い状況が続いていても、必ずしも熱中症患者が多いとは限らないのです。7~8月と2ヵ月にわたって見ても、最高気温は同じく高いのに、一気に気温が上がった時に熱中症患者は増え、その後は減っていました。

 これは、人間の身体に「暑熱順化」という機能が備わっているから。暑さが続くと次第に慣れて熱中症になりにくくなるのです。つまり、7月と8月が同じくらいに暑いとすると、暑さに慣れる前の梅雨明け直後の方が熱中症になりやすいといえます。梅雨明けの気温が一気に上がる時には、かなり注意をした方がいいでしょう。

「少し頭が痛い」を放置してはダメ
けいれんを起こし死に至るケースも

――熱中症の症状を教えてください。

 初期症状としては「頭がボーっとする」「くらっとめまいがする」「ちょっと気持ちが悪い」「少し頭が痛い」などが挙げられます。ただ、これらは人によって感じ方が違う上に、熱中症を経験したことがなければ「寝不足や単なる疲れかな」と思ってしまうかもしれません。そして、そのまま水分補給をせずに、炎天下を歩き続けてしまう。この段階では普通に会話もできるため、周囲の人間も気づきません。

 しかし、実のところ徐々に体温が上昇しており、突然けいれんや意識障害を起こしてしまいます。こうなれば、一刻も早く救急車を呼ばなければなりません。手遅れになれば死に至るケースもあり、また、命は取り留めても、認知障害や運動機能障害などの後遺症を患う可能性もあります。

 オーストラリアのRoyal Adelaide HospitalのEmily M. Lawton氏らによる調査では、2000~2016年に発表された熱中症関連文献の熱中症90例のうち、約2割が死亡、2割が長期の後遺症を患っていたとのことです。

――初期症状のうちに速やかな対策が必要ということですね。

 それよりも、「症状が出ないように、事前に熱中症対策を講じる」という考えの方が適切でしょう。前述のように、初期症状ではすぐに「これは熱中症だ」と思わない可能性もあるからです。

医師が教えるおすすめの
対策グッズ・飲み物・食べ物は?

――どのような対策が有効ですか?

 まずは、こまめな水分摂取です。喉が乾いてから飲むのでは遅いといえます。クーラーが効いた室内で過ごしている人以外は、「1時間に1回」などと時間を決めて、定期的に水を飲むとよいでしょう。

 緑茶やコーヒーなどの嗜好品は、利尿作用があるものもあります。これらは水分補給のカウントに入れず、あくまでも水で水分補給をしてください。言うまでもなく、ビールは論外。むしろ、利尿作用が強いため脱水症状を招きかねない。「水分補給はビールで」などとはくれぐれも考えないようにしてください。

 体への吸収力が高い経口補水液は、熱中症らしき症状が出てきた時や大汗をかいた時などに取りましょう。普段の水分摂取は水で十分です。スポーツドリンクを熱中症対策に利用されている人もいますが、糖分が多いのが問題です。スポーツドリンクを飲むなら、経口補水液を飲みましょう。汗をかいた時は、汗で失われた塩分を補うために、塩あめなどをなめるのもいいですね。

 次に、クーラーや扇風機を上手に利用し、室内を適切な温度に保ちましょう。実は、熱中症を最も起こしやすい場所は「住居」なのです。2017年、18年ともに、救急搬送された人の熱中症発症場所は住居がトップ。昨年は40.3%と半分近くを占めています。

「クーラーは体に悪い」「節電のために」「もったいないから」などと考えずに、クーラーを使ってほしいと思います。私はリビングに気温計を置き、28度を超えたらクーラーをつけます。寝ている間も、つけています。設定温度27~28度であれば体に害はないでしょう。

――帽子や日傘も熱中症対策に役に立ちますか?

 直射日光を避けられるので、熱中症対策になりますよ。通気性のよい衣服を選ぶのもいいですね。

 今は冷却グッズがたくさん売られています。これらを活用するのもおすすめです。特に、熱中症の症状が出てきた時は、すぐに体を冷やすことが不可欠。冷却グッズを持ち歩いていると、いざという時に役に立ちます。

――体を冷やす時、冷却グッズや氷をどこに当てればいいでしょうか?

 おでこはひんやりして気持ちいいですが、体全体を冷やす場所としてはNGです。首元、脇の下、足の付け根など、太い血管が体の表面近くを走っているところを冷やすようにしてください。

 これらに加えて、私自身が「熱中症対策にいいな」と思っているのが、かき氷です。食べると血液が急激に冷え、それらが体中をめぐるので体全体をスピーディーに冷やせます。

高齢者と子どもは重篤化しやすい
家族は十分に注意喚起を

――もし身近な人などに熱中症の症状が見られたら、どうすべきですか?

 けいれんや意識障害を起こしていたら、すぐに救急車を呼び、首元、脇の下、足の付け根を冷やしてください。

 けいれんは見た目で分かりますが、厄介なのは意識障害です。単にボーっとしているようにも見えるからです。「何を聞いても『うん』『はい』しか答えない」「返事をしなくなった」といった場合は、救急車を。たとえ熱中症でなくても、意識障害は医師の緊急な対応が求められます。
 
――最後に、どんな人が特に熱中症に気を付けるべきでしょうか。

 熱中症は、「自分の勘に頼って対応」はNGです。気温が高くなれば水分摂取を心掛け、クーラーを活用します。住居で熱中症の発症が多いのも、屋外では気を付けるこれらの熱中症対策を、家の中では油断してやらなくなるからでしょう。

 すべての世代において熱中症対策が必要ですが、特に高齢者と子どもは要注意です。高齢者は体内に水分がもともと少なく重篤化しやすいですし、子どもは何らかの不調を感じていてもうまく言葉にできず、重篤化してから周囲が気づく場合が少なくありません。高齢の親御さんや小さなお子さんがいる人は、注意喚起を怠らないようにしてください。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ