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7Pay中止、不正原因は公表せず責任も取らないセブン経営陣の「居直り」

2019年08月02日 06時00分更新

文● 岡田 悟(ダイヤモンド・オンライン

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わずか3カ月でサービス中止が発表された7Payだが、セブン&アイの経営陣は誰一人として責任を取ろうとしていないように見える
わずか3カ月でサービス中止が発表された7Payだが、セブン&アイの経営陣は誰一人として責任を取ろうとしていないように見える Photo:JIJI

7月のサービス開始直後に不正利用が発覚し、その対応や説明をめぐってゴタゴタを繰り返した末の結末は、開始3カ月でのサービス中止だった。コンビニエンスストア業界首位のセブン&アイ・ホールディングス(HD)が肝いりで始めた独自キャッシュレス決済サービス「7Pay」は失敗に終わった。しかし、担当する後藤克弘HD副社長は辞任を否定。むしろ“再チャレンジ”に意欲を見せた。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

 わずか3カ月の命だった――。

 コンビニエンスストア業界で2位以下を圧倒的に引き離すセブン“王者”セブン-イレブン・ジャパンを擁するセブン&アイ・ホールディングス(HD)が、失態に次ぐ失態を重ねている。

 7月1日のサービス開始直後に不正利用が発覚したスマートフォン決済サービス「7Pay」について、9月末で終了すると8月1日に発表した。

 記者会見での説明によると、不正利用の原因はいまだにはっきりと特定できていない。トラブル発覚後に専門家の間で指摘されていた、フェイスブックなどのSNSアカウントによる「外部ID連携」や、利用者がパスワードを忘れた際に、通知を受けたり再設定したりする機能が不正利用の原因になった事例は、見つからなかったというのだ。

 その一方で、他のサイトから漏えいしたIDとパスワードを用いて不正アクセスを試みる「リスト型アカウントハッキング」を受けた可能性が高い、と一応の結論のようなものは示した。

 だが、現在調査を続けている、社外の専門家や弁護士らで構成される「セキュリティ対策プロジェクト」のチームが最終的な結論を出しても、システムのセキュリティ保護を理由に、「監督官庁には報告する」(セブン&アイ・ネットメディアの田口広人社長)という程度で、記者会見などを開いて外部に説明する予定もないという。

 不正利用の被害者や客の苦情への対応に追われた加盟店は、原因を知ることもできないまま、7Pay問題の“本質”は闇に葬られてしまうわけだ。

二段階認証は「使用感から」導入せず
不正は事後的にモニタリングできると考えた

 今回の不正利用発覚で、7Pay に「二段階認証」を導入していなかったセキュリティのずさんさも問題だと指摘されてきた。この理由について、運営会社である7Payの奥田裕康取締役営業部長は、「開発段階では二段階認証を想定していたが、使用感を考慮して“入り口”を低くした」と説明。利用者の保護については、「決済が利用されるのはセブン-イレブンの店舗のみであり、不正が起きても、モニタリングによって事後的に対処できると考えていた」と釈明した。

 実際に不正が起きても、原因の特定はおろか、適切な対処がまるでできていない。混乱の末にサービス中止に至った運営側の責任を、果たして理解しているのだろうか。

 7Payは、10月に予定される10%への消費増税に伴って政府が進める、キャッシュレス決済利用時のポイント還元を睨んで導入された。失態の挙句にサービスを中止するとあって、ポイント還元の国への申請は辞退するという。

 デジタル戦略の責任者であるセブン&アイ・HDの後藤克弘副社長は、7Pay中止による加盟店への影響を問われ、「グループの銀行やカード会社は申請を続けるので、特段の大きな影響は出ない」と主張した。

 これこそが、グループのナンバー2に君臨する後藤副社長が、加盟店の事情を理解していないことの証左である。

 もし、7Payがトラブルを起こすことなく利用が広がっていれば、消費増税後のポイント還元を求め、セブン-イレブンの店頭で7Payを使って決済する買い物客は、さぞ増えていたことだろう。

 PayPayやメルペイなど他社のキャッシュレス決済は引き続き利用できるとはいえ、セブン-イレブンというブランドへの信頼感や、nanacoポイントと紐づいた7Payだからこそ使いたい、という利用者も多くいたはずだ。なにせ、セブン-イレブン・ジャパンの永松文彦社長が7月1日の7Pay発表記者会見で、「クーポンの付与などで500億円を投じる」と意気軒高に語っていたのだから。

 10月の増税後は消費の落ち込みに加え、最低賃金の上昇も懸念され、加盟店の苦境はさらに強まる。このタイミングで7Payの利用やクーポンの付与が進み消費が活性化すれば、加盟店の経営の一助となっていたことだろう。

 また、他の先進国や中国に比べて普及が大きく遅れているキャッシュレス決済は現在、国策として進められている。だからこそ、ヤフーやLINE、メルカリなどIT大手が莫大なコストをかけて利用者への還元策を実施し、サービス拡大に努めているのだ。そこに後発で乗り込んだ“コンビニの王者”が、とんでもないトラブルを引き起こしたという構図だ。

 東京都八王子市でセブン-イレブン八王子万町店を経営する増田敏郎さんは、「キャッシュレス決済全体に泥を塗った幹部は、経営責任を厳しく問われるべきだ」と怒りをあらわにする。

引責辞任は完全否定で“居直り”どころか
後藤副社長はキャッシュレス“再チャレンジ”を宣言

辞任を否定した“居直り”後藤克弘副社長
辞任を否定した“居直り”後藤克弘副社長 Photo by Satoru Okada

 だが記者会見で経営責任を問われた後藤副社長は、「原因の調査と再発防止に全力を尽くす。デジタルと経営は切り離すことはできない。セキュリティを強化していくのが経営責任の取り方だ」と強調。減俸などの処分についても「プロジェクトの調査結果が出てから社内基準で決める」として、「辞任する考えは、今はない」と断言した。

 後藤副社長はかつて、セブン-イレブンの“生みの親”である鈴木敏文HD名誉顧問の秘書を努めた経験があるが、16年に鈴木氏が会長の座を追われたクーデターでは反鈴木派に回り“風見鶏”との人物評がある。そうして、井阪隆一HD社長に次ぐ副社長の地位に就いたわけだ。現体制は「井阪・後藤体制」とも呼ばれるほどであり、後藤副社長なくして会社は回せない、ということなのだろう。

 もちろん、そんな社内事情が世間に通じるはずはなく、通常ならば経営責任を負う立場だ。それでも結果として、今回のトラブルの原因を生み出した後藤副社長以下、担当幹部たちは現時点で、辞任はおろか処分すら受けていないのである。7月4日、不正利用について最初に記者会見し、二段階認証について「二段階云々」と発言して不興を買った7Payの小林強社長は、8月1日の記者会見にすら現れず、進退についてもアナウンスされなかった。

 後藤副社長は「失った信用を取り戻すのは大変だが、7Payという名前でもう一度チャレンジしたいということではなく、バーコードやQR決済でチャレンジしていきたい」とさえ口にした。

 不正利用の被害者や、苦情対応に追われる加盟店、そしてキャッシュレス決済に取り組むあらゆる関係者にしてみれば、問題の解明と責任の明確化が信用回復の第一歩だ。再度の失態を引き起こしかねない“居直り”は、頼むから勘弁してほしいというのが本音ではないか。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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