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日産「大リストラ計画」でも不十分、業績悪化の底見えず

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日産の西川廣人社長
Photo:EPA=JIJI

日産自動車が赤字スレスレの大減益に陥った。併せてぶち上げた「大リストラ計画」は1万2500人を削減する大掛かりなものになった。日本や欧州での合理化圧力は高まるばかり。業績悪化の底は見えない。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

 赤字に転落したのではないか──。日産自動車の2019年4~6月期決算が発表される数日前、突如として持ち上がった赤字観測に、日産の投資家界隈は色めき立った。

 ふたを開けてみれば、19年4~6月期の営業利益が前年同期比98.5%減の16億円、当期純利益が同94.5%減の64億円。利益は絶望的な大減益ではあるものの、何とか黒字は維持されていた。

 売上高や利益が大幅にへこむのは避けられないが、ギリギリのところで赤字を回避する──。神業ともいえる黒字確保術は、用意周到な日産経営陣による決算マジックだろう。

 仮に赤字に転落するならば、西川廣人・日産社長の責任問題になりかねない。今期は減配になるとはいえ、手厚い配当政策にけちがつくとややこしい。ただでさえギクシャクしている大株主ルノーとの関係に支障を来すからだ。

 19年3月期の通期決算を発表した5月時点で、日産経営陣は業績の大不振を想定していたに違いない。主に北米や欧州での販売不振の惨状は、覆うべくもなかったからだ。併せて、大胆な構造改革プランもすでに出来上がっていたことだろう。

 だが、ルノー問題を沈静化させて6月末の株主総会を乗り切ることが最優先された。波風が立たぬように、5月に対外的に公表されたリストラ計画は踏み込みの甘いものにならざるを得なかった。

 そんな経緯を経て提示されたのが、今回の「大リストラ計画」である。

 まず、23年3月期までに不採算モデルを10%以上削減する。13年より展開されている新興国モデル「ダットサン」を中心に、打ち切りにしてゆく方針だ。ダットサンの積極展開は、三菱自動車への資本参加と並んで、規模拡大路線をまい進したカルロス・ゴーン氏の代表施策ともいえるもの。経営陣にとって、ダットサンの否定はゴーン路線の否定でもある。

 そして何といっても、リストラ計画の肝は、23年3月までに世界の日産グループ従業員の10%に相当する1万2500人を削減することだ。

 7月25日、アナリスト向け説明会で開示された資料では、20年3月期までに、世界8拠点で合計6400人を削減する計画の詳細が示された(上図参照。現在は、日産ホームページ上での生産拠点・人数の内訳は非開示になっている)。

 8拠点の内訳は、削減人員が多い順に、インド(1710人)、米国(1420人)、メキシコ(1000人)と続く。国内では栃木県と福岡県(日産自動車九州)の生産拠点2ヵ所で880人もの要員を減らすというものだ。

 23年3月期までに、残り6拠点で6100人が削減される計画になっているが、その中身は明らかにされていない。

国内100万台体制の維持は不可能
さらなる合理化は必至

 それでは、懸案の「6拠点」の候補地はどこか。

 日産幹部の説明によれば、「拠点とは生産拠点(工場)1ヵ所という意味ではなく、生産ライン1本を示している」とのこと。生産ライン14本で何らかの人員合理化策が取られるということであり、2本の生産ラインがリストアップされることがあれば、工場閉鎖となる場合もありそうだ。

 決算会見の席上、西川社長から「小型車を生産している海外拠点(は候補)」という発言があったことから、「すでにリスト入しているインドネシアなど、ダットサンの生産拠点では」(日産社員)という読みもある。

 ただし、残りの6拠点にリストアップされているかどうかは別にして、「(開示された8拠点に含まれている)欧州、日本、米国のさらなる合理化が必要」(自動車アナリスト)という見方も根強い。

 削減人数の多いインド、メキシコ、インドネシアなどはもともと人件費が安く、抜本的な固定費削減に直結するのは、先進国における合理化策だからだ。

 19年4~6月の日産の生産台数で見ると、欧州は前年同期比30.8%減(そのうち英国は34.3%減)、日本は前年同期比20.9%減と稼働が劇的に落ちていることから、合理化圧力はますます高まるはずだ。

 その最たる例が、英国工場だろう。現時点では90人の削減にとどまっているが、ジョンソン新英首相の誕生により、欧州連合(EU)からの「合意なき離脱」が現実味を帯びている。となれば、日産の英国拠点での生産コストは跳ね上がってしまう。

 また、880人の削減を明らかにしている国内拠点にしても、合理化策は十分とはいえまい。国内市場の低迷はもとより、深刻なのは輸出の低迷だ。保護主義化の様相を深める米中のみならず、新興国でも現地生産化の流れは変わらない。国内の年産100万台の生産能力は明らかに過剰であり、この体制を維持するのは難しいだろう。すでにリストアップされている栃木、福岡に加えて、神奈川・追浜もリストラ候補に入ってくるだろう。

 実は日産は、この大リストラ計画を公表してもなお、5月時点での20年3月期の業績見通しを変更していない。

 5月には、4800人の削減に470億円のコストがかかるとしていたので、人数が1万2500人まで増えるとざっと1200億円強のリストラ費用が必要になる計算だ。すでに、3分の1は前期に計上しており、もう3分の1も今期業績に織り込んでいるとみられるが、残りの「3分の1」費用に追加リストラ分が増えれば話は別だ。

 それでも、リストラに実効性がありV字回復を描けるならばよい。販売台数を上げる策として、ガソリン車よりもコスト増の電動車の投入計画くらいしか目玉はなく、「ポスト・リストラ」戦略は見えていない。23年3月期に「営業利益率6%」の達成に赤信号がともっている。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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