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「1on1ミーティング」ブームも失敗例続出、成功へのカギは何か

2019年08月01日 06時00分更新

文● 藤崎雅子(ダイヤモンド・オンライン

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「1on1ミーティング」を導入する企業が増えているが、なかなか成果が上がらないことに悩むケースも散見される。そんな中、社外人材との1on1を提供するサービスに注目してみたい。

1on1ミーティングが
定着しない職場も

社外の人との1on1ミーティングが好評です
成功する「1on1ミーティング」には、いくつかのポイントがあります Photo:PIXTA

 上司と部下が1対1で定期的に行う、人材育成のための「1on1ミーティング」(以下1on1)を導入する企業が増えている。

 複雑で未来予測が難しい現代、従業員一人ひとりを自律的に行動する人材に育成する重要性が増している。また、人材の流動化が進むなか、優秀な人材の流出防止も欠かせない。1on1は、そうした人事の様々な課題に対する施策の1つとして注目されているのだ。

 従来から行われてきた業務報告や人事評価のための1対1の面談とは性質が異なり、これは「部下の育成」に重点を置くもの。上司は傾聴やコーチングの姿勢で部下の感情や悩みに寄り添いながら話を聞くことによって、部下自身が、自分はどんな人間で何をしたいかと自己理解していく過程を応援する。その上で現在の仕事に紐づけ、どう力を発揮していくかを一緒に考えていく。そうして部下がやりがいをもって仕事に取り組む環境を整備することが、業績のアップやエンゲージメントの強化につながると期待されている。

 しかし、組織内に1on1の制度を導入したものの、「多忙な日々の中で時間の確保が難しい」「部下のやる気を引き出すどころか逆効果に」との声も出るなど、現場への定着はなかなか難しいようだ。

 そんななか、上司に代わって社外のサポーターが1on1を行うサービス「YeLL」が登場した。部外者に1on1の相手が務まるのか?と思われるかもしれないが、事後アンケートで8割超が「有意義」と回答するなど、利用者からの評価は上々。その理由に目を向けてみると、効果的な1on1実践のポイントが浮かび上がってくる。

 まず、YeLLとはどんな仕組みなのか。同サービスには現在300人以上がサポーターとして登録しており、そのプロフィールは会社経営者、大手マネジャー職、営業職、研修講師、プロコーチなど多彩で、約8割は副業として取り組んでいる。その中から1人が担当サポーターとしてつき、週1回30分間、「日々の仕事の振り返り」「自分の強み」「理想の未来」などをテーマに、電話で1on1のセッションを行うというものだ。

 同サービスには、社外のサポーターだからこその長所が目立つ。その1つは、安心安全の場がつくりやすいこと。上司と部下の1on1では、日常の人間関係や評価への影響を気にして部下が本音を言えないが、社外のサポーターには心置きなく悩みや本当にやりたいことを話せるという人も多いだろう。もちろん、社外なので業務の話はできない。だが、だからこそ内面の部分に焦点を当てることができ、1on1にはプラスに作用する。

安心安全の場づくりと
相性マッチングがカギ

エール株式会社代表取締役を務める櫻井将さんは、「これからは『行動』だけでなく『感情』もマネジメントする時代」と1on1の必要性を語る (C)GC Story

 もう1つの特筆すべき点は、“相性の良さ”でサポーターのマッチングが可能なこと。上司と部下は必ずしも相性が良いとは限らないが、YeLLでは大手シンクタンクと共同開発したAIシステムを活用し、事前アンケートやセッション実績などのデータに基づいて、利用者に最適なサポーターを選定する。それによって1on1の効果の引き上げを図っているのだ。

 利用者の感想コメントからは、

「最初は本当に第三者に話せるのか?と疑心暗鬼でしたが、杞憂だった」
「自分の中で大事にしてきた価値観に気づくことができた」
「内省から行動、行動から内省のサイクルが回り、業務のアウトプットの質が高まった」
 
 といった意欲や行動の変化がうかがえる。ただし、同サービスを運営するエール株式会社の代表取締役・櫻井将さんは、「社外のサポーターがすべての課題を解決できるわけではない」と語る。

「YeLLで部下のやりたいことが明確になったら、次にそれを組織内の仕事に繋ぎ、力を発揮させていくのは組織内の上司にしかできないこと。YeLLと組織内のコミュニケーションをうまく組み合わせることで、効率的・効果的に人材育成を行うケースが多く見られます」(櫻井さん)

まずは“上司”が、徹底的に
話を聞いてもらう経験を

 また、誰が行うかに関わらず、1on1の質を大きく左右するのは「上司側に1on1を受けた経験があるかどうか」だと、櫻井さんは指摘する。

「上司世代の多くはトップダウンのマネジメントを受けてきました。美味しい料理を食べたことのない人が美味しい料理をつくることができないのと同じで、自分も経験したことのない1on1を部下に行うのは簡単ではありません」

 そのため、部下の前に、まず上司自身が1on1を受けてみると効果が大きいという。実際にYeLLを利用した「上司」からは、こんな感想コメントがあがっている。

「本当に“人の話を聞く”ということを知った」(40代/部長)
「徹底して傾聴・応援される体験を通し自らの1on1力も向上した」(30代/人事部長)

「人は自分が経験して良かったことは、他の人にもしてあげたいと思うものです。他者の話に耳を傾け誰かを幸せにすることが、企業の枠や場所、世代を超えてつながり、循環していく。そんな世界の実現に向けてYeLLを推進していきたいですね」(櫻井さん)

 YeLLの事例から見えてきた1on1実践のポイントは、「部下にとって安心安全の場であること」「相性の良さ」「上司側の『聞く』姿勢」など。しかし、そのすべてを上司だけに依存するのは難しい。

 櫻井さんは「1on1の対話的コミュニケーションは、これまでも喫煙所や飲み屋で部署や立場に関係なく行われてきた会話や相談のようなもの。しかし、日常にそうした機会が減っている今、意識的に組織の枠を超えた対話を充足させることも必要ではないか」という。上司の皆さん、部下に別部署の先輩に相談してみるよう促したり、社外の友人を紹介して話をする機会を設けたりしてはどうだろうか。

(藤崎雅子/5時から作家塾(R))


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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