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銀行同士がATMで「相乗り」しにくい理由、メガは独自性で地銀は通帳

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三菱UFJ銀行と三井住友銀行で始まるATMの共同利
三菱UFJ銀行と三井住友銀行で始まるATMの共同利用。対象となるのは店舗外ATMだ Photo:Bloomberg/gettyimages

7月5日、三菱UFJ銀行と三井住友銀行が、メガバンク同士で初となるATMの共同利用を発表した。1台につき年間数百万円というコストがかかるATMは、共同利用による費用の見直しが一大関心事だ。ただ、各銀行の思惑や通帳という存在が動きを鈍くしている。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

「うちはメガバンクと簡単に提携できない。全てはバランスの問題だ」

 ある大手銀行の幹部は険しい表情でそう述べた。頭の中にあるのは、7月5日に発表された、三菱UFJ銀行と三井住友銀行が店舗外ATMの共同利用に踏み切ったという話題だ。

 メガバンク同士がATMを共同利用するのは本邦初。9月22日から、どちらのATMでも平日日中の取扱手数料が無料になる。両行は共同利用に伴い、拠点が重複しているATMを数百カ所という規模で削減していく考えだ。

 目下の銀行界では、構造改革によるコスト削減が大きなテーマだ。銀行ATMは年間「約200万~300万円」(中小地方銀行の幹部)とも、1000万円近くともいわれる維持・管理コストがかかるため、ATMの台数をどう減らせるかに関心が寄せられている。

 ただ、ATMはむやみやたらに共同利用できない。というのも、自行のキャッシュカードが提携先のATMで使用されると、そのたびに手数料を提携先に支払う必要がある。つまり、メガバンクのように巨大ATM網を持つ銀行と提携すれば、顧客が提携先のATMばかりを使い続け、一方的に手数料を“搾取”されかねないわけだ。

 故に、提携先の銀行を増やすことは、自行のATMの台数を減らしてコストを削減することと両輪で取り組む必要がある。冒頭の幹部が指摘した「バランスの問題」とは、まさにこのことだ。

 そして、共同利用に関しては、3メガで唯一手を挙げていないみずほ銀行の動向が注目されるが、そうなっている背景には同じ「バランスの問題」があるようだ。

 そもそもみずほ銀は目下、新しい勘定系システムへの移行に取り組んでいる最中。三菱UFJ銀・三井住友銀の両陣営は、共同利用は「みずほさんから話が来れば検討する」(メガバンク幹部)という待ちのスタンスだ。

 みずほ銀はさかのぼること2013年、イオン銀行と一緒にATMの相互開放にいち早く踏み切っており、すでに当時から、「ナンバーワンのATMネットワーク」(みずほ銀元幹部)という自負があったという。

 みずほ銀は、イオン銀との相互開放を含めた受け入れ手数料の収支は今でもプラスという。そのため、ATMの共同利用について、他メガとは一線を画し、「独自戦略でやりたい」(事情に詳しい関係者)という思惑も捨て切れないというのだ。

 その一方で、顧客利便性を考えると、メガ同士の共同利用への期待が高いのも事実だろう。みずほ銀は、7月の3連休にシステム移行の最後のヤマ場を迎える。3メガそろい踏みの巨大ATM網ができるか否かは、システム移行という課題克服後の、みずほ銀の腹積もり次第といえそうだ。

地銀がせまられる
コスト削減か顧客利便性かの選択

 ATMの共同利用は地銀同士でも検討が進んでいる。だが、ある中堅地銀の幹部は、「効率化を図ろうと話し始めるが、内容を詰めていくとスムーズに進まない」とある問題を指摘する。

 同行は東北地方の地銀で、コスト削減という観点から、同じ県の最大手地銀とATMの共同化の話が進んだが、課題にぶつかった。

 隣接するATMを相互開放し、片方を撤去してどちらか一台を共同利用しようとすると、「自前のATMがなくなった地銀の顧客は、通帳が使えなくなる」(同)のだ。

 銀行の通帳は、基幹系システムが異なるなどの理由から、「読み取りの規格が無駄に異なる」(別の大手銀幹部)場合が多い。

 くだんの三菱UFJ銀と三井住友銀の共同利用においても、他行のATMでは通帳は使用できないままだ。

 とはいえ、この問題を無視してしまえば、通帳に愛着のある顧客から不満が出るのは間違いない。そうした理由から、その地銀の提携話も頓挫したという。

 反対に、問題に目をつぶらざるを得ない事例も出ている。今年5月、東邦銀行と福島銀行という福島県に本店を構える2行がATMの共同利用を発表した。

 県内は経営環境が厳しく、収益低迷に伴うコスト削減は必須。その一環でATMの共同利用に着手したが、「基幹系システムが異なるため、結局、通帳の相互利用という課題まで踏み込むことができなかった」と、2行のうちのある中堅幹部は顔を曇らせる。

 印紙税がかかる通帳は、有料化やウェブ型の通帳などにして「どうにかコストを減らしたい」(別のメガバンク幹部)というのが銀行の本音だろう。だが、急な方針転換は顧客の信頼を失いかねない。

 コスト削減か、顧客利便性か。メガも地銀も、ATMにまつわる難問が頭痛の種となっている。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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