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ビットコイン急騰、それでも消えない仮想通貨2つの懸念

2019年07月04日 06時00分更新

文● ダイヤモンド編集部,田上貴大(ダイヤモンド・オンライン

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Facebookが独自通貨の「リブラ」を発行したことに関心は高まったが、国内の仮想通貨交換業者の心配事は尽きないようだ Photo:Chesnot/Getty Images

機関投資家の参入やFacebookによる独自通貨の発行などの好材料が相次ぎ、仮想通貨の代表格であるビットコインの価格が100万円台に再突入した。同時にビットフライヤーを含む国内交換業者の行政処分が解かれたが、それでもなお、国内勢には懸念すべき点が残されている。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

 約1年越しで1ビットコイン(取引単位:BTC)=100万円を突破し、ブーム再燃の兆しを見せる暗号資産(仮想通貨)。だが、大手交換業者のコインチェックで起きた巨額不正流出に始まり、交換業者に対する金融庁からの相次ぐ業務改善命令など、2018年は仮想通貨業界にとっては「沈む」1年だった。

 その結果、仮想通貨の価格はピーク時の5分の1以下まで急落したが、今年6月下旬に再び急騰に転じる。代表的な仮想通貨であるビットコインの価格は、今年4月頃まで1BTC=40万円台だった。それが、18年5月以来となる1BTC=100万円を突破したかと思うと、一時的に1BTC =150万円付近まで上昇したのだ。

 直後に海外取引所でハッキング被害が発生したことなどを受けて、価格は不安定な動きを見せているが、足元で1BTC=100万円台を維持し続けている。

Facebookが独自通貨を発行発表

 この急回復の背景にあるのは何か。最も大きいのは、海外で「法律の改正に伴い、機関投資家の参入が進んでいることへの期待感」(交換業者幹部)だ。さらに国内外の業界関係者が注目を寄せている点として、Facebookが独自通貨である「リブラ」の発行を発表したことが挙げられる。

 このリブラの特徴は複数ある。1つは、1コイン=1円のように、価格が法定通貨で固定された「ステーブルコイン」であること。しかも、単一の法定通貨ではなく複数の法定通貨を裏付け資産として持つことが類を見ない点だ。他にも、リブラは100社限定で出資企業を募っているが、そこにVisaやMasterCard、Uberといった大手企業が多数参加を表明したことで話題を呼んだ。

 日本の現行法ではステーブルコインはいわば「通貨建資産」に当たり、「解釈上、仮想通貨としては扱われない」(大手金融機関の幹部)。そのためリブラが国内ユーザーの手に届く道筋は明確ではないが、「米国で大手企業が参入していることを受けて、国内でもリブラを扱いたい機運が高まるだろう」(交換業者幹部)と、その利便性が明らかになってくれば、日本国民もリブラ経済圏に巻き込まれる可能性が高まるだろう。

 さて、主に海外勢の動向に熱視線が寄せられる中、国内では、交換業者が取引環境の整備で一歩前進したようだ。

 これまで金融庁は、内部管理態勢の不備が多数見つかったことなどから、複数の交換業者に対して業務改善命令を出していた。その中で、国内最大手のビットフライヤー、ビットポイントジャパン、そしてBTCボックスの3社に対する業務改善命令を6月28日付けで解除したのだ。

 すでに、行政処分が解除されたビットフライヤーでは、自粛していた新規の口座登録を7月3日から再開した。それだけではない。すでに海外で仮想通貨の取引所を展開しているLINEも、「書類審査は通過しているよう」(大手交換業者幹部)で、今月中の国内でのサービス提供が見込まれる。こうした動きに対する期待感は高い。

懸念される「日本離れ」と「マネロン」

 しかし、国内の交換業者には2つの懸念がある。その1つが、そもそも足元の取引の主役が、「国内」から「海外」に移っていることだ。

 海外仮想通貨比較サイトであるCryptoCompareによると、日本で“仮想通貨バブル”が膨らんでいた17年後半、取引全体に占める日本円の割合は40%超を誇っていた。だが、今や日本円の取引は数%程度であり、取引の大半は米ドル、もしくは「テザー(取引単位:USDT)」と呼ばれる米ドルと固定した仮想通貨トークンでの取引だ。

「テザーの買い手は実質的に中国人が牽引している」(小田玄紀・ビットポイントジャパン社長)と目されており、くだんのバブルの時期ほど、国内ユーザーの関心を取り戻せていないことがうかがえる。

 2つ目の懸念が、今秋に予定されている、国際組織の金融活動作業部会(FATF)による日本のマネーロンダリング(資金洗浄)対策状況への審査だ。これに対する仮想通貨業界の警戒感は大きい。FATFは審査のガイドラインで、すべての金融機関に送金先の個人情報を把握することを指示しているが、今の仮想通貨取引では送金先のアドレスは分かっても、そのアドレスと個人情報が紐付いていない場合が多いからだ。

 それ故、「交換業者の間で、送金先を把握できるウォレット(仮想通貨の保管場所)の仕組みを検討している」(業界関係者)など対策を進めている。だが、技術的なハードルは高く、仮にFATF審査で大きな減点対象として挙げられてしまえば、当局による規制の締め付けが強くなるだろう。

 いくら新規顧客を獲得しても、マネロンの対策状況が前進しなければ元も子もない。一度失った信頼を取り戻すために、国内の仮想通貨業界はもう一度正念場を迎えそうだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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