大気中から二酸化炭素を除去する技術を開発するスタートアップ企業とエクソンモービルが交わした契約からは、この技術に対する石油・ガス産業の関心が、ますます高まっていることがうかがえる。
エクソンモービルは、ニューヨークを拠点とする温室効果ガス回収スタートアップ企業「グローバル・サーモスタット(Global Thermostat)」と提携した。その目的は、グローバル・サーモスタットが持つ、発電所および大気中からの二酸化回収技術を詳細に検討することだ。両社はプレスリリースの中で、もし有望な結果が得られれば、エクソンモービルが自社施設でパイロット・プロジェクトを立ち上げる可能性があると述べている。ただし、金銭面での条件は明かされなかった。
エクソンモービルは、グローバル・サーモスタットとの契約に関する正確な目的や動機について明らかにしていない。エクソンモービルは、二酸化炭素の回収・貯留技術は「気候変動のリスクを軽減する二酸化炭素排出低減策の開発に焦点を当てた、当社の一連の研究プログラム」の一環だと説明する。
とりわけ、大気中からの二酸化炭素の直接回収は、エネルギー企業の事業運営上排出される二酸化炭素を相殺したり、単にイメージアップのためのマーケティングや宣伝に利用したりするための手段を提供できるかもしれない。また、二酸化炭素を油井に圧入することで石油の採取量を増やす、増進回収法に用いる二酸化炭素の供給源ともなる(「CO2の大気回収が次の「鉱脈」に?ベンチャーの資金調達相次ぐ」を参照)。
今回の発表の直前に、大手石油・ガス企業オキシデンタル(Occidental)の子会社、オキシー・ローカーボン・ベンチャーズ(Oxy Low Carbon Ventures)からも、似たような計画が発表された。オクシデンタルは、ブリティッシュコロンビア州に拠点を置き、大気からの二酸化炭素の直接回収に取り組むカーボン・エンジニアリング(Carbon Engineering)に出資する。カーボン・エンジニアリングはオキシー・ローカーボン・ベンチャーズと共同で、世界最大規模となる二酸化炭素回収プラントの開発に取り組む。もし実際に建設されれば、テキサス州のこの施設は大気中から年間50万トンもの二酸化炭素を除去する。
この場合、回収された二酸化炭素の主な供給先となるのは、テキサス州のパーミアン盆地に所有する油田において、二酸化炭素を使用した増進回収法を導入しているオキシー(Oxy)だ。
二酸化炭素回収と石油の増進回収法の組み合わせによる環境面からの懸念の1つは、単に石油の生産量を増加させることになり、二酸化炭素を回収するそもそもの意味が大きく損なわれるのではないかということだ(「世界最大規模のCO2大気回収プラント抱える根本的な矛盾」を参照)。