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JALがエアバス機を初導入する理由、A350-900型の客室仕様を公開

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赤坂祐二社長(中央)とエアバスシニアバイスプレジデント、ロースロイスジャパン社長
赤坂祐二社長(中央)とエアバスシニアバイスプレジデント(右から2人目)、ロールスロイスジャパン社長(左から2人目) Photo by Rika Yanagisawa

日本航空は国内・国際線の主要路線を飛ぶフラッグシップ機としてエアバスA350を導入する。ボーイング一辺倒だった機材調達を改め、なぜエアバス機を導入するのか。9月1日に運航開始する国内線の機材仕様も詳細にレポートする。(ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)

 まさに「初物尽くし」のオンパレードである。日本航空(JAL)は6月20日、最新鋭のエアバスA350‐900型機の客室仕様を公開した。JALがエアバス機を導入するのは初めて。ロールス・ロイス製のエンジンを採用するのも初、ファーストクラスのシートを日本のジャムコ社と共同開発するのも初、国内線機材で全席に個人用モニターと電源を装備するのも初となる。

 JALはA350を最大56機導入し、ボーイング777の後継機として国内・国際線の主要路線に飛ばす計画だ。ダッシュ900型機を18機、長胴型のダッシュ1000型機を13機、発注済み。900型は国内線向けで、9月1日に東京~福岡線で運航を開始し、東京~那覇、大阪、札幌などへ順次拡大していく。1000型の就航時期は未定だが、東京~ニューヨークなど主要な長距離国際線を飛ぶ見込みだ。

 JALがエアバスを飛ばすのは、2002年に統合した日本エアシステム(JAS)が持っていた機材を除けば初めてのこと。

 各部門には「A350プロジェクト」が立ち上がり、5年以上の歳月をかけて準備を進めてきた(詳細は、機内仕様、運航、整備部門のプロジェクト担当者への取材から、準備の全貌を追ったレポート「初挑戦のエアバス機、新モデル『A350』導入プロジェクトの全貌」参照)。

 JALの赤坂祐二社長は「20年に渡ってJALを支えてきたB777の後継機として、今後はA350がJALの新たなフラッグシップとなる」と語る。「どのような客室仕様が相応しいか社内で多くの議論をしてきたが、特に次世代を担う若手社員がエアバス社と一緒に作り上げており、私も自信を持って送り出すことができる」。

出張客に人気「クラスJ」の席数が増える

 客室仕様の特徴をクラスごとに見ていこう。

ファーストクラスの座席。マッサージ機能が加わった Photo by R.Y.

 ファーストクラスのシート開発は従前の小糸製作所に変わって今回、初めてジャムコと組んだ。貝殻のように包み込む大型シェルシートと中央部の仕切りを付けたことでプライベート感がアップ。クッション性を高めてソファのような座り心地に仕上げた。座席操作が電動ボタンになり、国内航空会社で初、マッサージ機能が備えてある。記者が試してみたところ、ボタンを押すと背面とレッグレストから心地よいバイブレーションが振動した。一般的なマッサージ機はローラーで揉むものであり、それに比べると簡素な機能ではあるが、それなりのリフレッシュはできそうだ。

 プレミアムエコノミーの位置づけである「クラスJ」は、ピッチは変わらないものの、レッグレストの角度と長さが調整できるようになった。これも試してみたところ、従前のクラスJよりもレッグレストを使った時の座り心地が格段に良くなったと感じた。レッグレストを自分好みの位置にセットできるので、よりリラックスできる。

クラスJの座席
クラスJの座席。レッグレストが調節できるようになった Photo by R.Y.
普通席。座席幅がB777より1.5cm拡大した Photo by R.Y.

 

 普通席(エコノミー)は座席幅がB777より1.5cm拡大し、約44cm(ひじ掛け間)に広がった。窮屈な感じはほとんどない。

 各クラスの座席数も注目だ。クラスJは普通席にプラス1000円で「プチ贅沢」を味わえる値ごろ感から、特に出張客に人気が高い。「クラスJから予約が埋まる。予約したくてもできないというお客様の声が多かった」(JAL関係者)という。

 そうしたニーズも汲んだ結果、B777ではファースト14席、クラスJが82席、普通席279席の合計375席だったのが、A350ではファースト12席、クラスJが94席、普通席263席の合計369席。クラスJを12席も増やした。B777では普通席が横3・4・3席並びなのに対してA350では横3・3・3席並びであり、全体的にゆとりのある空間だ。

「隠し技」は大容量の手荷物スペース

 シートとは別の、機能面では3つのポイントがある。

 個人用モニターでは映画などのプログラムがあるが、国内線では飛行時間が短くて十分に楽しめない人は多いだろう。そこでプログラムを中断しても次に乗る時に再開できる機能を初搭載した。中断時に提示される8ケタのコードを入力すれば、例えば往路で見た続きを復路で見ることが可能になる。

大きくなった収納スペース
大きくなった収納スペース。荷物が詰まって重たくても片手で軽く締められるような機構を新たに開発した Photo by R.Y.

 JALが他社に先行して始めた無料Wi-Fiサービスは、飛行機の地上走行開始時から目的地のゲート到着時まで、より長時間利用できるようになる。これまでJALは米Gogo社のWi-Fiシステムを採用していたが、A350ではパナソニック製の個人用モニターを採用したのに合わせてWi-Fiシステムもパナソニックにしたことで可能になった。

 赤坂社長自ら「隠し技」と自信満々で紹介したのが大容量の手荷物スペース。特に国内線の主要路線では機内持ち込み荷物の量が多く、乗客も客室乗務員も収納に難儀するケースがままあった。そこで大容量かつ客室乗務員が開け閉めしやすい収納棚サポートシステムをエアバスと共同開発した。荷物が詰まった重たい収納棚も片手で軽く締められる。

エアバスにした理由は燃費や整備性能の良さ

 長く“ボーイング一辺倒”だったJALがエアバスとA350の大量契約を結んだのが2013年10月。購入総額は発注した31機分だけで約9500億円に上る(割引を勘案しないカタログ価格、定価で概算)。機材調達を大転換したことは国内外の航空関係者を驚かせた。10年に経営破綻し、コスト意識が非常に強くなったJALに対して「エアバスが相当お値打ち価格で取引したのでは」と方々から指摘されたほどだ。

 客室仕様を発表する壇上、赤坂社長は改めてエアバス導入の理由について「(事業計画に沿った機材更新の)タイミングと、A350の優れた機能が極めてマッチした。エアラインにとってボーイングとエアバス、2つの選択肢があるのは喜ばしいこと。2社には切磋琢磨しながら飛行機を作っていただいて、そこから良いものを選んでいく」と調達方針に言及。決め手になったポイントは、「長距離にも短距離にも優れている大型機」(同)と解説した。これは、A350は長距離飛行を念頭に設計された大型機である一方、JALは国内主要路線、つまり短距離で大量の旅客を運ぶために大型機を使うという世界的にレアなケースを計画し、「効率的に飛ぶ」ことが至上命令だった。

 飛行機の効率性においてはいくつかあるが、まず、A350にすれば従前機材(国内線)と比べて年間の燃料費が1機あたり約2億円改善されるという。JALは年間で2000億円以上の燃料費を計上している。そしてA350では、壊れる予兆を検地して整備のパフォーマンスを上げる「予測整備」の技術を一層高めているという。燃費や整備など、航空会社にとって切っても切れない費用の改善が期待できる。

 ダイヤモンド編集部が18年11月に赤坂社長の単独インタビューを行った際、「整備出身の技術屋社長」ならではの、エアバス機に対する考えを激白している。

「エアバスが劇的に良くなった。昔のエアバスはボーイングに勝てなかったの。安かったけど、ボーイングと肩を並べるような性能がなかった。例えばメンテナンスビリティ(整備性能の良さ)。これは稼働の良さに繋がるんだけど、ボーイングの足元にも及ばないくらいだった。こう言うとエアバスには悪いかな(苦笑)」

「エアバスは国(フランス)を挙げて育ててきた企業で、A320が大ヒットしたことで経済的余裕が生まれて、色んな投資が進んだわけです。製造プロセスが改善され、優秀な技術者が集まるようになり、良い飛行機が作れる体制が出来上がった。A320の大成功を背景に作られたのがA350なんですよ」

 ボーイングとエアバスの最大の違いが、コックピット内にある。ボーイングは操縦桿だが、エアバスはサイドスティックで運航する。一般的にボーイングは人的操作(アナログ)を残していて、エアバスはオートメーション化されているといわれる。こうした違いに対して赤坂社長は「エアバスは後発者メリットを享受しうまく成長した。だから技術的な立場で見ても、今のエアバスとボーイングの力関係を見ても、航空業界でエアバスを使わないほうがむしろ恣意的な感じを受けますよね。そして何よりタイミング。これは技術的な話とはちょっと違うが、ボーイングは777X(B777の新シリーズ)を開発しているけど、この開発が遅れていて、われわれのリプレイスに間に合わない」と解説する。

コックピット内
コックピット内。ボーイング機は操縦桿だが、エアバス機はサイドスティックで操縦するのが大きな特徴だ Photo by R.Y.

 ちなみに赤坂社長は客室仕様発表当日も、「こうして壇上から話すよりも、その辺りでタイヤチェンジでもやりたい」と記者団を笑わせた。

 A350は紛れもなくJALの次世代フラッグシップになるわけだが、25機分は導入時期など詳細が確定しているわけではない。JALは20年2月に中期経営計画を更新する予定で、その時に国際線への展開が見えてきそうだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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