アップル「iPadOS 13」戦略解説:
アップルはiPadでWindowsを打ち負かしたい
2019年06月18日 16時00分更新
●名前はマーケティング上のこと?
個人的にiPadOS 13の最大の進歩は、Safariです。
これまでiPadのSafariはモバイルOSとして振る舞っており、Safari自身の能力とは関係なく、デスクトップ向けにJavaScriptを多用したウェブサイトなどが表示できませんでした。しかしiPadOSのSafariはユーザーエージェントで「Mac」を名乗り、デスクトップ向けのサイトがそのまま表示されるようになりました。
デスクトップではマウスが前提で組まれているJavaScript等の振る舞いを、いかにタッチ操作で再現するかという点が、これまでMacを名乗れなかったポイントだったはずで、ただ名前を変えるだけの実装というわけにはいかなかったようです。これによって、今までiPadだけでは対応できずMacが必要となっていたWebアプリケーションに絡む仕事も、iPadでこなせるようになりました。
と、様々な「違い」を見せたiPadOS 13ですが、初年度となる今年は、やはりiOS 13との共通点が目立ちます。
例えば3本指のジェスチャーやテキスト選択の変更、アプリを介したフォントインストール、キーボードの上で指をスライドさせて文字入力するQuickPath、各種セキュリティ機能、Face IDのロック解除高速化、そしてiOS最大のニュースであるダークモードのサポートは、iPhone向けのiOS 13と共通しています。つまり、根底にあるコアな部分は分離していないのです。
そのため今年のうちは、iPadOSという名前自体が「マーケティング上の名前変更」という解釈で間違っていないと思います。しかし、ずっとそうではないと思います。
アップルはプレゼンテーションで、iPadについて「タブレット」ではなく「コンピューター」と呼ぶようになりました。iPadOSに込められた戦略は、WindowsやChromebookを、iPadが打ち負かすことに他なりません。いよいよその作戦に本腰を入れ始めた、という姿勢が、マーケティング上の名前に現れた、と解釈しています。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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