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武田薬品「ホワイト企業認定返納」のお粗末な一部始終、内部資料を入手

文● ダイヤモンド編集部,土本匡孝(ダイヤモンド・オンライン

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武田薬品のグローバル本社
武田薬品のグローバル本社。本編集部が入手した内部資料によると、グローバル本社で18年9月~19年4月に36協定違反2件と賃金不払い1件があり、労基署が是正勧告を出した

 国内製薬最大手で世界のメガファーマ(巨大製薬会社)の一つに数えられる武田薬品工業が、経済産業省が制度設計する「健康経営優良法人2019大規模法人部門(通称・ホワイト500)」の認定の返納手続きを始めたことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。このまま認定取り消しになる可能性が高く、7月1日付で発表される見通し。

 健康経営優良法人(大規模法人部門)は5月1日時点で、820法人もが認定を受けており、認定返納も初めてのケースではない。それでも武田薬品の返納がニュースな点は、判明したそのお粗末な経緯だ。

 法人が認定を受けるためには、健康管理に関連する法令について「重大な違反をしていない」ことが必須条件になっていた。具体的には2017年4月から申請日までに「長時間労働等に関する重大な労働基準関係法令の『同一条項』に『複数回』違反していないこと」などが課されていた。ただし自主申告のため、違反の事実を伏せて虚偽申請することも可能だ。

 本編集部に6月上旬、現役の武田薬品社員から、「複数の社員が虚偽申請の事実を経産省に内部告発した」「近く認定がはく奪される予定」と憤慨する情報提供があった。本編集部の取材に対し、経産省ヘルスケア産業課は「返納があった」と説明し、経緯は非回答。武田薬品広報担当者は「虚偽申請の事実はない」と明確に否定した。ただそうであっても、後述のように、武田薬品の“残念ぶり”は変わらない。

一時はホワイト企業だとアピール

「健康経営優良法人」認定をアピールするリリース
写真(2):武田薬品のホームページに掲載されていた「健康経営優良法人」認定をアピールするリリース(2019年3月1日付)。既にホームページから削除されている 拡大画像表示

 広報担当者によると、武田薬品は17年4月以降、労働基準監督署から36(サブロク)協定で定めた時間外労働限度時間を超えて労働させたとして、是正勧告を1回受けていた。前出のルール(『同一条項の違反を複数回』)には抵触しないため18年11月に申請し、今年2月に認定を受けた。

 武田薬品はニュースリリースを出して、国お墨付きの“ホワイト企業”だと世間にアピールした(写真(2)、現在は削除)。

 だが直後に同種の違反事案が発覚。そして4月に是正勧告を受けて『同一条項の違反を複数回』に該当する事態になったため、すぐに経産省に相談。協議の結果、6月5日に認定を自主返納する手続きに入り、同日までに社員向けに経緯を説明したという。

 広報担当者は「是正勧告を真摯に受け止める」と強調。“ホワイト企業”認定返納だからといって当然“ブラック企業”に振れるわけではないといい、「コンプライアンス遵守を徹底して参ります」と神妙に話した。

実は1年間で是正勧告4件、指導1件

グローバルHR日本人事室名で最近の労基署による指摘事例を挙げ、社員にコンプライアンス遵守を求めている内部資料
写真(3):本編集部が入手した武田薬品の内部資料。グローバルHR日本人事室名で最近の労基署による指摘事例を挙げ、社員にコンプライアンス遵守を求めている 拡大画像表示

 一方、本編集部は武田薬品グローバルHR日本人事室名の内部文書(写真(3)、5月24日付)を入手した。そこには18年9月~19年5月にグローバル本社(東京)、大阪工場、光工場(山口)であった労基署による是正勧告4件、指導1件が記されていた。

 36(サブロク)協定の時間外労働限度時間を超えて労働させたケースや、賃金不払いのケースなど。4月の是正勧告(36協定違反)も記載されていたが、加えて5月にも光工場で是正勧告(賃金不払い)があった。つまり“ホワイト企業”認定中も、残念ながら“ブラック企業”な指摘が2回もあったことになる。

 武田薬品は近年、激動期にある。子会社や資産の売却、旧湘南研究所(現湘南ヘルスイノベーションパーク)の研究員リストラ、アイルランド製薬大手シャイアー買収など、社員の運命を左右する大イベントが立て続けに発生。一方で経営中枢は元メガファーマの外国人が大半を占めるようになり、年12億円もの報酬を得るクリストフ・ウェバー社長兼CEO(最高経営責任者)を筆頭に社員との給与格差も大きくなった。

 一部社員の間に経営陣への不満がマグマのように沸々と湧いているのは確か。その結果、前出の社員による本編集部への情報提供のような具体的な動きにつながっているのかもしれない。

 6月27日にはシャイアー買収完了後初めての定時株主総会がある。財務体質悪化などを理由にシャイアー買収に反対していた一部創業家筋やOBから「クローバック条項」(*将来シャイアー買収による減損などがあった場合、過去に遡って取締役の責任を追及できる条項)の株主提案があり、会社側と提案者の攻防に注目が集まっている。

 自業自得とはいえ、その本番を前に会社側に一つミソがついた。

(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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