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「ルノーと統合」の方がマシだった?日産、FCA合流の大誤算

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ルノーとFCAの統合で日産の立場は?資本構成をシミュレーションしてみた
Photo:AFP=JIJI

ルノーに経営の主導権を奪われることを恐れた日産自動車は、ルノーとの統合議論を先送りしてきた。だが、急転直下で誕生するFCA・ルノー連合は、日産の独立性を阻むことにもなりかねない。(ダイヤモンド編集部 浅島亮子、竹田孝洋)

 6月4日、仏ルノーの取締役会は、欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)からの統合提案を前向きに検討するとの声明を出した。

 両社がこのまま経営統合へ突き進んだ場合、新統合会社(FCA・ルノー連合)と、資本構成上はルノーの支配下にある日産自動車との関係性はどう変わるのか。これまで通り、日産の独立性は維持されるのだろうか。

 次ページの図は、ルノーと日産の2社だけで経営統合する場合と、FCA・ルノー連合に日産が合流する場合について、時価総額に基づく試算により統合後の姿をシミュレーションしたものだ。

 試算には、国際間M&Aに詳しいスティーブン・ギブンズ弁護士による試算方法を参考にした。試算に利用するルノー、日産の正味の時価総額は、それぞれの時価総額から株式持ち合い分(ルノーが持つ日産株式と日産が持つルノー株式)の時価総額を差し引いて計算した。

©ダイヤモンド社 2019 禁無断転載 拡大画像表示

 まず、ルノーと日産が経営統合する場合だ。ルノーは日産株式の43.4%(議決権あり)を保有しており、日産はルノーの実質的な子会社となっている。そのため、日産はルノーのみならず、その筆頭株主であるフランス政府にも間接的に支配されるという、複雑な資本構造になっている。

 ここで両社が統合するとき、ルノーと日産の既存株主(ルノーと日産自身を除く)が保有する持ち株会社(=統合会社)に、両社が100%子会社としてぶら下がるスキームとなるのが通例だ。統合会社における(ルノー以外の)日産株主の保有比率を現在の時価総額を基に計算すると、51.8%と過半に達している。ルノーと日産のアライアンス協定を考慮しないという前提ではあるが、資本構成上、日産はルノーと対等の立場となり、ルノー支配の“くびき”から逃れることができる。

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 次に、FCA・ルノー連合に日産が合流する場合だ。FCAとルノーの時価総額に大差はなく、1対1の統合比率として計算した。

 FCAとルノーの統合会社に日産が合流しない場合は、日産の統合会社への出資比率は7.5%(ルノー株式15%の半分)になるとされている。これでは、FCA・ルノー連合に対する日産の発言権はほとんどない。

 では、FCA・ルノー連合に日産が合流するとどうなるか。3社の統合会社における(ルノー以外の)日産株主の保有比率は、31.9%にすぎない。ルノーとの2社統合ならば過半を握ることができるが、3社統合ならば約3分の1にとどまり、日産は連合の主導権を掌握することはできない。

3社連合誕生でも
生産拠点の統廃合が最初の仕事

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 しかも、イタリア政府も統合会社に出資する可能性がある。 株主として残るフランス政府と合わせ、うるさ型の両政府が3社連合の経営に関与してくる公算が大きい。

 日産は経営の独立性を守るために、「ルノーとの経営統合を検討する段階にない」(西川廣人・日産社長)との姿勢を貫いてきた。だが皮肉なことに、独立性を担保するためには、FCA・ルノーとの3社連合よりも、ルノーとの2社連合の道を歩んでいた方がマシだったという言い方もできるだろう。

 もっとも、この3社連合が実現したところで、規模拡大志向と政治的思惑が一致しただけの弱者連合の様相が強い。例えば、生産拠点の稼働率は、日産72.2%、ルノー73.8%、FCA66.6%と総じて低く、3社共に過剰設備を抱えている状況だ。

 FCAによる統合提案では、「工場閉鎖はない」としているが、連合誕生で最初に取り掛かるべき仕事は生産拠点の統廃合だろう。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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