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パワハラ慣れした中高年管理職に必須、アンガーマネジメントは健康にも効く

2019年05月22日 06時00分更新

文● 真島加代(ダイヤモンド・オンライン

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正しく怒りの感情と付き合うスキルを持つことは大切です。
全員が同じ目的に向かって画一的に働くことに慣れている中高年にとって、「多様な価値観を尊重する」というダイバーシティーの理念を実践するのは難しい。アンガーマネジメントは必須のスキルである Photo:PIXTA

近年、ビジネスパーソンに必要な能力のひとつとして「感情のコントロール」が注目を集めるようになった。中でも、正しく怒りの感情と付き合う“アンガーマネジメント”は、上に立つ管理職にとって必須のスキルとなりつつある。アンガーマネジメントの必要性や、その具体的な方法について専門家に話を聞いた。(清談社 真島加代)

ダイバーシティーの実現に欠かせない
「アンガーマネジメント」

 部下を怒鳴りつけたり、会議中に不機嫌な態度を取ったりするなど、感情に任せた言動によって周囲とあつれきを生んでしまった…。そんな経験はないだろうか。このように、人間の感情の中でもっとも厄介な“怒り”と向き合うトレーニング「アンガーマネジメント」がビジネスパーソンの耳目を集めている。

「アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで開発された怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングです。アメリカのカリフォルニア州で、DVや差別、スピード違反などの軽犯罪者に対する矯正プログラムとして確立されたのが始まりです」

 そう話すのは、日本アンガーマネジメント協会代表理事を務める安藤俊介氏だ。現在、アメリカでは矯正プログラムだけでなく教育・職場環境の改善、学業・業務パフォーマンスの向上を目的として、広く導入されているという。

「近年では、世界各国でその重要性が認められ、公的機関や大手企業が研修に取り入れています。日本でも当協会のアンガーマネジメント講座の受講者は2012年の年間約8000人から、2018年には年間25万人まで数を伸ばしていますね。医療、福祉、青少年教育、アスリートのメンタルトレーニングなど、幅広く活用されています」

 日本でアンガーマネジメントが盛んに行われるようになった背景には、働き方改革が関係している、と安藤氏は指摘する。中でも「ダイバーシティー」の導入は、アンガーマネジメントと深い関わりがあるという。

「ダイバーシティーは、国籍、性別、年齢、ライフスタイルなど、あらゆる面で多様な人材を採用することを指します。多様な人々が働ける環境を整えて、生産性の向上を図るのが目的なので、現場のスタッフには『自分以外の価値観を受け入れる度量』が求められます。その場合、パワハラが横行している職場や、怒りに任せて怒鳴る社員を雇うことはリスクになります」

軍隊のような職場に慣れた
中高年にこそ必要なスキル

 典型的な例が「自分と意見が合わない若手社員に腹を立てる上司」だ。若い人の感覚が理解できない上司が、上から押さえつけるような職場ではダイバーシティーを実現するのはとても難しい、と安藤氏は話す。

「特に、長い間パワハラが常態化した職場で、全員が同じ目的に向かう画一的な働き方をしてきた中高年層がダイバーシティーに慣れるのは至難の業。そんな中高年層にこそ、アンガーマネジメントが必要になるのです」

 怒りの感情がコントロールできないことのデメリットは、ダイバーシティーの導入を阻むだけではない。

「感情に任せて怒る人は、相手に『反省させること』だけが目的になってしまい、相手に『こうしてほしい』という、明確なリクエストが伝わりません。この状況では、怒られている部下は“何を反省するべきなのか”“このあとどう行動すべきか”がわからず、同じミスを繰り返す可能性があります。お互いに体力を消耗するだけの、ムダな時間を過ごすことになってしまうんです」

 また、怒りの感情がコントロールできなければ、集中力の低下、思考力低下、短期記憶喪失や判断・決断力低下などの「ストレス反応」が発生するという。怒りで我を忘れることは、心身ともに大きな負担がかかるのだ。

「アンガーマネジメントは、怒ってはいけないというものではなく、怒りと上手に付き合う方法を習得するのが目的です。アンガーマネジメントを学び、怒りに向き合う技術を習得すると、ストレス反応を軽減することができます。感情のコントロールによって、心身の安定と疲労回復を促すことにつながるのです」

 ただでさえ、管理職の中高年は業務内容や責任の重圧など、自分でコントロールができないストレスが多い。せめて自分の感情くらいは自らコントロールして、ストレスをひとつでも減らしたいのがホンネだろう。

ポイントは「6秒間待つ」
日常でできるトレーニング

 安藤氏によれば、日常的にトレーニングをするだけでも、徐々に感情のコントロールがしやすくなるという。代表的なトレーニングのひとつが「6秒間待つ」というもの。

「イラッとするような出来事が起きたときには、まず6秒間待ちましょう。諸説ありますが、6秒間あれば人は理性的になれるといわれているので、落ち着いて6秒を数えると怒りが落ち着いてくるはずです。また、6秒間のうちに頭の中に温度計を思い浮かべて、怒りを温度として数値化するのもおすすめですよ」

 怒りを、温度として「見える化」すると、過去の経験と比べて「この前よりは怒っていないから大丈夫」と、自分に言い聞かせられるようになり、次第に衝動的になりにくくなるという。

「もうひとつ有効なトレーニングが『思考のコントロール』です。怒りの感情にとらわれる人は、起きた出来事に対して『許せる』か『許せない』かの2択で判断しがちです。しかも『許せない』と判断すると、怒りが増幅する傾向があります。2択の間に『まあ許せる』という判断基準をひとつ加えると、大抵のことは『まあ許せる』に分類できるようになります。まあ許せる、という基準ができるだけで気持ちに余裕が生まれるはずですよ」

 たしかに、すべての事象を白か黒に分けられるとは限らない。「まあ許せる」という感覚を意識して生活すると、ムダ怒りを回避できるという。

「日本の社会がダイバーシティーに向かえば向かうほど、アンガーマネジメントは必須のスキルになります。何より、自分以外の考え方を認めて、多様な価値観を受け入れることは自身の成長にもつながりますよ」

 怒りがコントロールできず、職場で独り取り残されてしまう前に、感情と上手に付き合う方法を身につける必要がありそうだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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