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2分CMでも再生1000万回!ウェブ動画広告が長くても見られる理由

2019年05月05日 06時00分更新

文● 沼澤典史(ダイヤモンド・オンライン

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アロンアルファのWebCM第2弾は約3分という長尺で790万回も再生されています。
2~3分もの長尺CMでも見てもらえるウェブ動画広告。テレビよりも広告費がかなり安く、長尺でも見られるとなれば、ますますウェブへのシフトが進むだろう(東亞合成ホームページより)

CMといえば15~30秒が一般的、という常識が崩れ始めてきた。YouTubeなどで流れる動画広告では2~3分という長尺のものが増えており、すぐにスキップされるのかと思いきや、最後まで見ている人も多いという。そこで、増加する長尺動画広告の理由と、5G到来による影響などをYouTubeビジネスに詳しい「カティサーク」の押切孝雄氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)

YouTubeは2分台へ
伸びる動画広告の再生時間

 今やインターネット広告は1.7兆円市場。なかでも動画広告の市場規模は伸び続けており、2018年は前年比40%増の1612億円と予測されていた(2018年3月電通などが発表)。サイバーエージェントなどの調査によれば、2024年には4957億円にまで膨らむ見通しだという。

 そんな成長著しい動画広告だが、近年は長尺化が顕著になっている。これはGoogleが調査分析データを提供しているサイト「Think With Google」が発表する「Japan YouTube Ads Leaderboard」のランキングからも分かる。

「Japan YouTube Ads Leaderboard」とはYouTubeで公開された動画広告のなかで、最も再生回数が多かったものを表彰するランキングのこと。そのなかで2017年下半期のトップ10の広告の再生時間の平均は「1分46秒」だったが、2018年上半期は「2分53秒」と、1年間で約1分も伸びているのだ。

 実際に、昨年話題となった動画広告の再生時間を見てみよう。東亞合成による瞬間接着剤「アロンアルファ」をテーマにしたCMは、第1弾が1分59秒で再生回数は1000万回以上。第2弾は2分57秒で再生回数790万回以上。また中小企業基盤整備機構(中小機構)のCM「今日、部下が会社を辞める。」は3分で、再生回数は155万回以上となっている。

長尺化の原因は
動画広告の「ストーリー性」

 そんな長尺動画広告の主戦場はYouTubeだ。

 少し古いデータになるが、2016年にマクロミルとデジタルインファクトが広告関係者に行った調査によると、最も利用したことが多い媒体はYouTubeで68.8%だった。このことからも動画広告においてYouTubeがいかに大きなウエートを占めているかが分かる。

 動画広告が長尺化している要因は、近年のウェブ動画広告の作り方にあると押切氏は語る。

「近年の動画広告はストーリー仕立てになっていることが多いです。冒頭のインパクトで視聴者の心をつかみ、ストーリーの展開でスキップさせない努力をしています。まるで映画の予告編のように目まぐるしい展開で一気に見せていくパターンや、初めは何の広告なのか分からないようになっていて、最後のオチの部分で商品名や企業名が分かり、視聴者も納得するというパターンもあります」

 動画広告冒頭でインパクトを与え、そのまま長時間見てもらう手法は「キャッチ&ホールド」と呼ばれる。前出の東亞合成の動画は、アニメ調で突飛な設定を冒頭から打ち出し、最後まで見せることに成功した例だろう。

 さらに、ウェブ広告ではターゲットに合った広告が自動で流れるため、ユーザーの興味関心が高い動画広告が流れやすい。テレビとは違いピンポイントのターゲットに見てもらうには、動画広告も相応に作り込む必要がある。

「今や視聴者は、優れた動画広告をコンテンツとして見ています。それはYouTubeに顕著です。プロではない一般人が作ったYouTubeチャンネルの本編の動画よりも、動画広告は予算が投入されて、ストーリー性があるため視聴に堪えるクオリティーのものが増えています。また、視聴者自身もYouTubeを見るのは、帰宅後の夜など時間のある時に見る傾向があるため、長尺の動画広告でも受け入れられる素地があります」

 ストーリー性やコンテンツとしてのアート性が強まることで、すぐに購入を促す「売り売り」な広告も減る。この点も長尺化の要因であり、視聴者が最後まで見てしまう要因でもあるのだ。

5G到来でますます
長尺化が進むか

 ますます長尺化しそうな動画広告に深く関係しているのが、5G時代の到来だ。5Gとは2020年に日本国内で本格運用を予定している次世代通信規格で、これにより現行4Gの約100倍の速度で通信が可能になる。5G到来により動画広告は「さらに視聴者に受け入れられ、発展していく」と押切氏は語る。

「現在は『ギガ不足』を心配して、出先で動画を見ない人もいます。しかし、5Gが定着すれば、通信が速くなるばかりか、通信各社から大容量のプランの提供も見込まれるため、通信速度や容量を今よりも気にせずに見られるようになる可能性が高いです。そうなると視聴時間が伸び、制作側も質の高さとストーリー性を求められるため、動画広告の時間はさらに長くなっていってもおかしくはありません」

 最後に押切氏はYouTubeにおける動画広告の展望をこう語る

「YouTubeの広告費はテレビに比べて相当安い。テレビは全国ネットで打とうとすると億円単位はざらですが、YouTubeはターゲットを絞って数万~数十万円からでも十分に広告出稿が可能です。さらに、国内の月間ログイン視聴者数は6200万人と規模も大きい。テレビよりも細かくカスタマイズできて、視聴者との接触時間を増やせるため、ますます広告数は増えていくでしょう。また、YouTubeの視聴者は時間に余裕がある人や、関連動画などを受け身で見る人も多いため、長尺CMが視聴者に受け入れられる可能性は高いです」

 手軽さと間口の広さを売りに、ウェブ動画広告はこれからも、さらなる成長を遂げることになりそうだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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