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口コミサイトは嘘だらけ?映画レビュー「サクラビジネス」の全容とは

2019年05月01日 06時00分更新

文● 沼澤典史(ダイヤモンド・オンライン

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映画レビューにおける最新の「サクラ」問題は?
映画公開直後から「星5」が並ぶ、日本語がおかしなレビューがたくさん載るなど、サクラが疑われるケースが相次いでいます Photo:PIXTA

ネットの発達により、商品や作品へのレビューがユーザーに与える影響力はますます強くなっている。そんな中、気になるのが「サクラ」の存在。Amazonや食べログでのサクラレビューは有名だが、最近は映画のレビューにもサクラが目立っているという。最新の映画レビューのステマ、サクラの実態についてITジャーナリストの三上洋氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)

星5の最高評価だらけ!
レビューサイトに跋扈する"サクラ“

 昨今、ネットのレビューの影響力は大きくなっている。マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングは、昨年10月全国47都道府県に在住する18歳~69歳の男女5867人を対象に、「オンライン上の口コミ利用に関する実態調査」を実施。その結果75.9%が口コミを見ているという事実が判明した。

 しかし、ネットに付きものなのが“サクラ”の存在。近年、サクラレビューは映画の口コミサイトにまで及んでいるという。

「映画のサクラ、ステマレビューが始まった時期は正確にはわかりません。ただ、世の中に広く知れ渡ったのは2017年12月に公開された実写版『鋼の錬金術師』からだと思います。明らかに日本語のおかしいレビューと軒並み最高評価の『星5』が並び、誰が見ても怪しいレビューが多数掲載されました」(三上氏、以下同)

 Yahoo!映画の「鋼の錬金術師」のレビューには「素敵映画最高映画よろしい!」といったちぐはぐな日本語と「星5」が並び、同サイトでの平均点は4という高評価に。

 ところがほかの映画口コミサイト「Filmarks」「映画.com」などでは平均2.5前後と評価が乖離していた。こうした状況から“サクラ”の存在が指摘されるようになったという。

「サクラレビューは、『Yahoo!映画』や、『ぴあ映画生活』に多い印象です。はっきりとした理由はわかりませんが、映画館のアプリとひも付けられていたり、口コミが比較的長文で詳しいものが多く玄人向けであるなど、観客への影響が大きいことから、これらの映画サイトにステマが多いのかもしれません」

 ぴあ映画生活では、2015年公開のとある韓国映画のステマぶりも話題となった。上映初日からレビュワーの評価がすべて星5で、三上氏も「明らかなサクラレビュー」と語るほど。同サイトは新作でも比較的、高評価のレビューが並ぶことが多いという。

末端は数十円から
ステマレビューは貧者のビジネス

 映画のサクラレビュー自体は以前からあったというが、それらは、どのように生み出されてきたのか。

「映画のサクラレビューは配給会社から発注を受けたPR会社がやっています。ただ、その会社が直接手を下すわけではなく、次の下請けのSNSプロモーション会社におろしている。そこの会社、もしくはさらに下請けに発注していく、という構図です」

 4次5次の下請けが行っているというサクラレビューを実際に書いているのは、在宅ワーカーや主婦だ。

「サクラレビューを書いているのは、ランサーズやクラウドワークスといった副業サイトに登録している人たちだと思われます。多くは主婦や在宅ワーカーで、彼らはお小遣い稼ぎのために1件数十円のレビューを書いているのです。それをPR会社の下請けがそのまま映画サイトのレビューに貼り付けていく。サクラレビューは数十円単位の仕事を主婦にやらせて、それを元締めが数百円で売って、会社が数万円の仕事にするという貧者のビジネスでもあるんです」

 それだけではない。少なくとも日本人にレビューを書かせれば、日本語はしっかりしているのだが、話題となった「鋼の錬金術師」では、副業サイトではなく、中国に発注して自動翻訳したため、おかしな日本語になったのではないかと三上氏は指摘する。

「もちろん配給会社はPR会社に直接、レビューを増やせとは言いません。しかしPR会社が、『うちのPRのおかげで、御社の映画のレビューサイトでの評価が4から5になりました』と報告書に書く目的で行っているとも考えられますね」

 映画のステマレビューには集客に加え、PR会社による虚偽の実績づくりの側面もあるのだ。

公開直後、短期集中で
最高評価はほとんどサクラ

 商品のレビュー以上に、映画のレビューは個人の趣味嗜好に依拠する。そのため、サクラか否かが見極めづらい。ユーザーがサクラに惑わされないためにはどうすればよいのか。

「映画サイトにおけるステマの特徴は『星5』が公開直後に短期間に集中して、かつ大量に並ぶこと。マイナス面を一切書いていないこと。そのレビュワーが単発でレビューしていることです。何度かレビューを書いていればそのアカウントは実在する可能性が高いですが、その作品だけレビューしているアカウントはサクラ用の可能性が極めて高いということになります」

 レビューサイトでは、評価の点数や星の平均点が示される。サクラレビューは平均点を上げるために「星5」などの最高評価をつけがちだ。

 さらに、サクラレビューは映画サイトにとどまらず、形を変えてネット上に跋扈している。

「映画口コミサイトとは別に、映画の感想を語るブログも信用できないものがあります。例えば『Amazonプライム・ビデオ』で配信している作品の感想を書いて、かつ『Amazonプライム・ビデオ』のリンクを張っていたらステマの可能性が高い。彼らはアフィリエイト目的で行っていて、手口は同じくランサーズなどに発注してそのまま載せているだけです」

 読者がブログのリンクから商品を買う、もしくはサービスに登録すれば、その数%がブログ主の懐に入る。特に「Amazonプライム・ビデオ」の割合は10%と高く、そのアフィリエイトで稼ぐ人も多いという。

 ほとんど野放しではびこるサクラレビュー。対策や規制する方法はないのだろうか。

「サクラやステマがはびこるのは口コミレビューの宿命ですから、これからもなくならないでしょう。取り締まる法律も現時点ではありません。強いて対策をするとすれば、映画サイト側はレビュワーランキングを作ることです。ユーザーが平均点ではなく、実績のあるレビュワーの評価で判断できるからです」

 我々ユーザーが何気なく見ている映画レビューには、利益をかすめとり、虚偽の実績を生み出す仕掛けが存在しており、今のところやりたい放題となっている。惑わされないためには、ユーザー個々がネットリテラシーを高めるしかなさそうだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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