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節税保険に国税庁が示した規制案が「腰砕け」になった事情

2019年04月11日 06時00分更新

文● ダイヤモンド編集部,中村正毅(ダイヤモンド・オンライン

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節税保険を巡って、国税庁は「日帰り手術」程度のメスしか結局入れられなかった Photo by Masaki Nakamura

「正直なところ、拍子抜けしましたね」。4月10日夜、生命保険会社42社が集まった拡大税制研究会が終わると、参加した幹部たちは口々にそう話しながら会場を後にしていった。この日の会合には、国税庁の幹部が出席。注目を集めていた節税保険(法人定期、経営者保険)を巡る新たな税務処理案を生保各社に示したものの、その内容は腰が砕けたかのような手緩いものだった。

 今から2カ月前、同じ会合の席で国税庁は、新種の節税保険が登場しては通達で厳しく規制してきた経緯を踏まえて、「業界とのいたちごっこを解消したい」「個別通達を廃止し、単一的な(資産計上)ルールを創設する」と言明。また新たなルールは、既契約にも影響が及ぶことをちらつかせ脅しをかけるなど、今にも鉄槌を下ろそうかという勢いだった。

 その様子を見て、生保や販売代理店は震え上がり大騒ぎになったわけだが、10日の会合では意見募集(パブコメ)にかける前の段階で早々と、「既契約への遡及はしない」という方針を国税庁は示している。

 さらに、新たな損金算入ルールにおいても、提示した案ではピーク時の返戻率が50%超から70%以下なら6割、返戻率70%超から85%以下なら4割を認めるとしており、「意外にも損金算入の割合が大きくてホッとした」との声があちこちで漏れたほどだった。

国税庁OBへの忖度で弱腰姿勢?

「OBたちを見殺しにできないということじゃないですかね」。国税庁の腰砕けの規制案について、大手生保の幹部はそう解説する。

 そもそも節税保険は中小企業の経営者をターゲットにしており、保険会社の代理店として経営者に販売している主役は税理士たちだ。国税庁OBの多くが税理士として活躍する現状で、食い扶持を奪い、果ては受け取った販売手数料を戻入(れいにゅう)させるような税務処理の見直しには、なかなか踏み込みにくいというわけだ。

 加えて、足元では統一地方選があり、今夏には参院選、10月には消費増税を控える中で、中小企業や税理士団体を敵に回すような施策には、政治家が黙っていないはずという見方もあった。

 そうした要因が国税庁の判断にどこまで影響したかはまだ不明だが、規制当局としていかにも弱腰の姿勢をとり、生保業界と裏で握り合っているかのような印象を与えたことだけは確かだ。

 11日以降、新たな税務処理ルールは意見募集にかけられ、早ければ6月に適用となる見通しだ。生保各社も順次、節税保険の販売を再開する傍ら、またぞろ新ルールの抜け穴を探すいたちごっこが始まることになる。

(ダイヤモンド編集部 中村正毅)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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