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ボーイング墜落事故があぶり出した日本メーカーの「力量不足」

文● ダイヤモンド編集部,新井美江子(ダイヤモンド・オンライン

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写真:AFP=時事

米ボーイングの最新小型旅客機「737 MAX 8」の墜落事故は、その悲惨さに反して日本の航空業界へのインパクトは当初、限定的だと見られていた。だが4月5日、ボーイングが今月中旬からの737 MAX2割減産を発表。早期の運航再開に暗雲が立ち込めてきた。737 MAXの事故は、期せずして同業界の抱える “根本課題”をあぶり出すきっかけにもなっており、日本サイドも対岸の火事と決め込むわけにはいかなくなっている。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

 「同型の最新機がわずか5カ月の間に2度も墜落するなんて、前代未聞だ」

 航空業界関係者は驚きを隠さない。米ボーイングの最新小型旅客機「737 MAX 8」の墜落事故(昨年10月のインドネシアのライオン航空610便と、3月のエチオピア航空302便)が立て続けに発生しているからだ。

 737 MAXといえば、ボーイングの主力小型機「737」の最新機として開発された人気シリーズである。総受注数は2月末で5012機を誇り、受注残ではボーイング全体の約8割を占める。

 ボーイングにとって不幸中の幸いだったのは、シリーズ中、最も早くデリバリーされた737 MAX 8でさえ、初納入が2017年5月と間もなかったことだ。今回の事故で運行停止に追い込まれているのは、すでに引き渡しを終えた376機にとどまっている。

 とはいえ、乗員乗客346人を死に追いやった大惨事であり、事態は深刻だ。ボーイングでは「グレッグ ハイスロップ・ボーイングチーフ・テクノロジー・オフィサー(CTO)以下、まさに総出で原因究明と問題解決に当たっている」(別の航空業界関係者)。

 3月13日に予定していた、20年に初納入を控える大型旅客機「777X」のロールアウト(披露)式典も中止となった。式典に参加するはずだった日本のボーイング関係者は、急にぽっかり空いてしまった時間をどうにか有効利用しようと、出張先の変更に追われるなど、てんやわんやだったという。

日本が平静でいられる理由

 もっとも、このこと自体が日本の“平和”を象徴してもいた。737 MAXの事故がボーイングに部品等を納入する国内メーカーの経営にすぐさま多大な損害を与える状況だったら、式典のキャンセル対応に心を割く余裕などなかったはずだからだ。

 少なくとも当初、日本サイドでは737 MAXの事故の影響を軽微と見る向きが多かった。というのも、そもそも737 MAXの国内メーカーによる機体製造の請負比率が、わずか数%と低い。

 中型機「787」で、機体製造で“最難関”と言われる主翼の製造まで請け負う三菱重工業ですら、納入しているのは主翼に取り付ける揚力増大装置のみだ。同様に787では1次構造材向けに炭素繊維を1機当たり30万トン納入している東レも、737 MAXでは2次構造材向けにわずか同1~2トンの納入にとどまっている。

 ボーイングの損失についても楽観的に見られていた。737 MAXの事故原因は機体の向きを制御して失速を防止するシステムにあるとされる。システムの改修費や、事故によって機体の引き渡しが遅れた場合のペナルティーはもちろん、ボーイング離れを阻止するための受注価格の引き下げ交渉費など、ボーイングのコスト増は必至といわれる。

 それでも、総じてボーイング関係者による見立ては「運航再開まで数カ月、損失は数百億円程度」だった。今回の事故ではボーイングのみならず、機体を認証した米国連邦航空局(FAA)の責任を問う動きも出てきており、「米国は自らの威信を懸けて全力で運航再開に臨むはずだ」と読む関係者が多かったのだ。

 事実、ボーイングの信頼回復は待ったなしだ。米中貿易戦争の真っただ中で、中国はFAAに先駆け737 MAXの運行停止に踏み切り、国際社会にボーイングの安全不安を印象付けてみせた。ライバル機であるエアバスの「A320neo」ファミリーは、737 MAXシリーズ以上に受注を積み上げている。

737 MAX2割減産の“誤算”

 ところが4月5日、ボーイングは、これまで生産停止にするどころか月産レートすら減らしていなかった737 MAXの生産を、4月中旬から2割引き下げ、月間52機から42機に減らすことを発表した。

 システムの改修とFAAによる再認証、パイロットのトレーニングコースの構築等に経営資源を集中するとの判断だというが、運航再開までの在庫調整の意図も当然あったはずである。

 すでに、ガルーダ・インドネシア航空が737 MAXの発注キャンセルの意向を表明しているように、中長期的に同様の動きがエアライン業界に広がるリスクもある。

“エアバス流れ”の覚悟も必要だろう。「A320neoは売れ行きが好調なだけに、乗り換えようにも、今から発注すると納入までかなり時間が掛かってしまいそうだ」(航空機営業関係者)という難点はあるものの、予備発注分などについては鞍替えされる恐れが否めない。

 安全不安の上、ここにきて、737 MAXの早期の運航再開に暗雲まで立ち込めてきており、全世界のサプライヤーに悪影響が及ぶ懸念が出てきた。

 そして──。日本の航空業界には、“別次元”の課題があらためて突きつけられている。

「中小型の航空機のニーズが高まっているときに、ボーイングの主力の小型機である737 MAXに日本の航空部品メーカーがあまり食い込めていない実態が期せずして露呈した」(経済産業省関係者)からだ。

 ボーイングは現在、次の一手として「NMA」と呼ばれる中型機の開発を検討しているが、「採算が合うだけの確定的な市場が見込めないとして、決断に至っていない」(航空機製造関係者)。

 そこでにわかに期待の声が上がっているのが、737の抜本的リニューアルモデルの開発だ。737前世代機の“マイナーチェンジ”にとどまった737 MAXの製造決定前にも検討された、幻の開発の再考である。

 開発には時間が掛かるため737 MAXをすぐさま代替する機体にはなりそうもないが、墜落機という悪しきイメージを一刻も早く払しょくするためなら、それもアリなのではないか、というのである。

 日本勢には、チャンス到来と同時に軽量化や自動化ノウハウをアピールできるよう、ボーイングの動向を的確にキャッチする情報収集力が求められている。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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