今年のジュネーブモーターショーは
欧州車と日本車の傾向がハッキリと分れた
今回は自動運転の話題からちょっとそれて、自動車業界を語る上で外せないジュネーブモーターショーについて紹介しよう。
今年3月に開催されたジュネーブモーターショーの特徴は、例年以上に大きく盛り上がっていること。ドイツ、フランス、イタリア、英国のほとんどのブランドが揃い、それぞれにワールドプレミア(世界初公開)のクルマを持ち込んだのだ。
日系ブランドも同様で、トヨタ、ホンダ、日産、マツダ、スバル、三菱自動車がワールドプレミアを用意した。実のところ、最近世界全体としてモーターショーが下火になりつつある。パリとフランクフルトも同様で、参加を見合わせるブランドが増えてきた。そうした中で、ジュネーブだけ参加ブランドが増えたという状況なのだ。
これはある意味「パリ、フランクフルト、ジュネーブと欧州には3つのモーターショーがあるけれど、ひとつだけ参加するとしたらジュネーブだ」ということだろう。ジュネーブのスイスは、自動車メーカーがないため、中立のイメージがあるからだ。
欧州車はとにかく電動化!
では、それらワールドプレミアの内容はどうであったかといえば、「電動化モデル」がトレンドだった。メルセデス・ベンツはミニバンのEVである「コンセプトEQV」、アウディは「Q4 eトロン」、フォルクスワーゲンは「デューンバギー」、BMWはプラグインハイブリッドの「330e」とドイツ勢は、すべて電動化モデルを用意した。
さらにフランス勢のプジョーは新世代の「208」を公開するだけでなく、EVバージョンの「e-208」とプラグインハイブリッドの「508PEUGEOT SPORT ENGINEERDコンセプト」もあわせて発表。シトロエンは、キュートなEVコンセプトの「AMI ONE コンセプト」。ルノーの本命は新型「クリオ」ながら、コンセプトのロボット・ヴィークル「EZ-ULTIMO」も用意して、ショーに華を添えていた。
さらにスーパープレミアムなブランドが数多く参加するのもジュネーブの特徴だ。今回は、アストンマーティンが「ラゴンダ オールテレーン・コンセプト」を発表。EV専門ブランドのラゴンダのSUVコンセプトとなる。
日本勢は電気自動車とスポーツ系に分れ
日系ブランドの出品は、欧州と比べると電動化の色合いは薄い。トヨタはレーシングスタディーの「GR Supra GT4 コンセプト」で、マツダはクロスオーバーの「CX-30」という量産車の派生モデル。スバルは次期「XV」を彷彿とさせるデザインスタディーの「ヴィジヴ アドレナリン コンセプト」。これら3モデルは、電動化とは関係のないモデルだ。
一方、ホンダは純粋なEVである「ホンダe」プロトタイプを発表。日産もEVクロスオーバーの「ニッサンIMQコンセプト」。三菱自動車の次世代SUVの「エンゲルベルクツアラー」はプラグインハイブリッドとなる。夢の電動化というよりも、量産を見据えたモデルが揃っているのが日系ブランドの特徴だ。
電動化コンセプトや人気量産モデルの新型といった話題のモデルが数多く登場したジュネーブモーターショー。全体としては欧州ブランドの電動化の本気度が伝わるようなイベントだった。
筆者紹介:鈴木ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。
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