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製造業のノウハウは流通も変えられる、JDAとパナソニックが合弁会社設立

2019年04月01日 20時00分更新

文● ASCII

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 4月1日、米JDA Softwareとパナソニックは、都内で記者会見を開き、JDAの日本法人・JDA Japanとパナソニック両社の出資で、2019年10月をめどに合弁会社(ジョイント・ベンチャー)を設立すると発表した。

JDA SoftwarのGirish Rishi CEOとパナソニック コネクティッドソリューションズ社の樋口泰行社長

 出資比率はJDA Japanが51%、パナソニックが49%。米JDA Softwareがクラウド上に構築している、サプライチェーン基盤「Luminate」と、パナソニックが持つ各種ソリューションを組み合わせ、国内市場を開拓する。新会社は、工場・倉庫・流通業者の業務を効率化するための「コンサルティング」や「プリセールス」などを担当。JDAとパナソニックの製品を組み合わせたシステムを、導入しやすいパッケージにして提供する。個々の製品の販売や構築といった部分は、両社の営業部隊や外部の企業につなぎこんでいく。

 パナソニックでは1月に、コネクティッドソリューションズ社内に“現場プロセス本部”を開設したばかりだ。国内では人手不足が待ったない状況。AIやIoTを通じた自動化や予測技術を活用し、品質改善・即応体制の構築などができるソリューション(現場プロセスイノベーション)を提供、すでに20社以上の企業とプロジェクトが進行中だ。同カンパニーの樋口泰行社長は、品質管理や効率化など「パナソニックが製造業の内部で培ったものは流通でも応用できる」とコメント。「パナソニックが持つ100年先のものづくりのDNAともマッチする」とした。

 業界では「アマゾン効果」(Amazon Effect)といった言葉が用いられるが、ECが物価や流通の仕組みを大きく変化させた。そこでは規模の経済と効率化が進められている。

 会見で樋口氏は「アリババやテンセントなど、ホリゾンタルに事業を展開するビックプレーヤーは規模の経済性を持ち、逆立ちしても勝てない」としつつも、「日本の企業は、実際にモノが動く現場で、たゆまぬ“カイゼン”をしていく地上戦には強み」があり、ここに入り込む余地があると分析した。加えて、国内では企業ごとにカスタムメイドしたシステムを導入する傾向が強く、標準化・パッケージ化したシステムの導入は欧米に比べて10数年遅れているが、「今後必ず必要になっていく分野」と期待を示した。

 JDAは、マイクロソフトのAzure上に構築したサプライチェーンマネージメント(SCM)システムを提供しており、Warehouse、Factory、Supply、Demand、Strategic Space、Store Optimizerなど、分野や用途別に合わせた機能を提供している。

 流通や在庫管理の単純な可視化・効率化だけでなく、AIや機械学習的な手法を取り入れ、在庫が不足しそうな場合に事前に予測をして最適な対応策を選べるようにしたり、出荷の手が足りない場合は、適切な人員配置を示唆するといった、自己学習型のシステムを志向している。気候の変化や時事問題など、不測の事態にも対応できるシステムを目指している。

 SCM市場は、2019年の予測で153憶ドルの規模だが、年率10%程度の伸長を続け、2022年には204憶ドルの市場になる見込みだ。効率的なロジスティックスの確立や、市場の変化に即応できる体制の構築が急務となっている。

協業の一例。棚の見える化システムで、欠品を効率よく把握。

手元の端末などから、クラウドにアクセスし、迅速な対応ができるようにする。

 パナソニックは、カメラ(画像解析)やIoTデバイス(センシング技術)を活用した「棚の見える化システム(欠品の検知)」や「仕分け支援」、「動線分析」のソリューションを提供している。これらをユーザーのフロントエンドに導入し、収集した情報をJDAのLuminateで解析する。結果、可視化や効率化に加え、その先にある予測につなげていく。両社の強みを持ち寄り、相互に補完し合うのが今回の協業の狙いとなる。

 ジョイントベンチャーは、国内市場を対象としたものだが、両社は世界規模での提携も推進していく。その一環として、スコッツデールとロンドンにある、JDAのカスタマーエクスペリエンスセンター、東京にあるパナソニック コネクティッドソリューションズ社の本社(浜離宮)のカスタマーエクスペリエンスセンター双方に、協業ソリューションを展示していくという。

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