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Boxを業務データの統合リポジトリに

業務アプリを手軽に作れる「Box Platform」が日本でも利用可能に

2019年03月15日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●大谷イビサ

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Boxアカウントがなくてもアクセスできる

 続いて、Box Platform担当部長の浅見顕祐氏による、Box Platformの詳細な説明が行なわれた。Box Platformのメリットとしては、Boxアカウントを持たないユーザーでもアプリ経由でBoxにアクセスできるようになるという点。

Box Platform担当部長の浅見顕祐氏

「今までも業務アプリやウェブアプリと連携することはできたのですが、Boxアカウントを持っている方が使うことを想定していました。業務アプリにログインして、そこからBoxを利用するときはもう1回Boxにログインしなければなりませんでした。でも、Box PlatformならBoxアカウント持たないユーザーでも利用できますので、アプリとBoxが寄りシームレスに連携できます」(浅見氏)

 Box Platformでは、3つの技術的な仕組みを提供するという。まずはサービスアカウントやアプリケーションユーザーという仕組み。これは人にひも付かないユーザーのことを指す。アプリにひも付くのが、今までとは大きく異なるポイント。2つめはSDKとAPI。BoxのAPIは一般的なRESTful APIで作られているうえ、SDKも用意しているので、技術者なら使い慣れた限度で簡単に作成できるようになっていること。3つめは、「Box UI Element」。Boxの標準画面で使われているパーツを、自分のアプリケーションに組み込める機能。たとえば、ダウンロードしなくても、ファイルをプレビューできるという機能を簡単に利用できるようになる。

Box Platformでは、APIやUI部品を提供し、カスタムアプリでもCCM機能を利用できるようにする

 例として、ローンの申請アプリをスクラッチで開発する場合、ローン申請アプリと受付業務アプリ、審査業務アプリを個別に開発する必要がある。そのため、各アプリで免許証などのファイルを重複管理しなければならなくなる。コンテンツをプレビューしたり属性や版を管理したり、検索機能などをそれぞれのアプリで作り込む必要もある。

 Box Platformなら、まずはコンテンツの一元管理ができるので、重複管理が不要になる。そのうえ、プレビューや版・属性情報の管理、検索機能、セキュリティ、監査ログといった要件もBoxの機能を利用できる。業務アプリ側では業務に合わせた固有のロジックと画面だけを作成すればよく、クイックな開発が実現できる。

「成熟度の4段階目まで行くと、統合基幹業務システム(ERP)とビジネスプロセス管理基盤(BPM)とBoxを連携させます。その企業の非構造化情報を管理する単一のリポジトリとしてBoxを使う世界です。ここまでいくと業務は究極に効率化されます。アメリカではすでにここまで来ているお客さまもいます。私どもは、日本のお客さまにこういった世界を提案していきたいと思っています」(浅見氏)

BoxをERPとして活用するのが、CCMの最終段階となる

 気になる課金体型は、通常のBoxとは異なる。月間APIコール数が17万5000回と月間データ転送量125GB、ストレージ容量125GB、月間アクティブユーザー数100人をパックにしたライセンス最小構成で、それを積み上げて契約する。最終的にどこかの機能が足りない場合は、追加ライセンスで必要な性能は満たせるという。

4つの機能をセットにしたバンドルライセンスで、パートナー販売のみとなるので価格は非公表

Boxのプレビュー画面見ながらオンライン相談

 最後にBox Platformの導入事例が紹介。エムスリーデジタルコミュニケーションズ 事業開発室アライアンス推進 倉内彰氏から「Box Platformを活用したオンラインディーリングサービス Medetail(仮)のご紹介」というセッションが行なわれた。同社は、エムスリードットコムという27万人以上の医師が登録している医療従事者専用サイトを運営しているエムスリーグループの企業だ。

エムスリーデジタルコミュニケーションズ株式会社事業開発室アライアンス推進 倉内彰氏

 現在、製薬会社が医者に対して情報を提供するにあたり、MR(医薬情報担当者)が病院に行ったり、ホームページに情報を公開したりする。このMRの数は、2013年の6万5000人をピークに減少傾向にあり、現在は6万人を切っている。とは言え病院の数は変わらないので、一人当たりの負担は大きくなった。また、8割くらいの病院が訪問規制を行っており、以前のように通い詰めることもできなくなっている。さらに、販売情報提供活動のガイドラインが2019年4月1日から施行され、資材以外の会話は具体的な内容を記録するように、といった通達も出ている。

 そこで、オンラインでの面談が選択肢になってくる。もちろん、以前からある方法ではあるのだが、いくつか問題があったという。まずは、共有フォルダーからPCにファイルをダウンロードしてから、そのファイルをアップロードしたり画面共有して医師とつながること。すぐに、そのファイルが編集できることだ。

 医薬業界では、資材に対して厳格なルールがある。たとえば、データを改ざんとかすると命に関わるので、当然改ざん禁止は通達されている。しかし、そもそも改ざんをできないような環境にしなければならない。また、ミーティングツールは世の中にたくさんあるが、医師に対して製薬会社ごとに違うソフトをインストールしてもらうというのも無理がある。

 ローカルにファイルをダウンロードしていると、資料が更新された時にも古いファイルを医師と共有してしまうリスクがある。バージョン管理が難しいうえ、利用実態が把握できないのもデメリットとなる。そこで、新サービス「Medetail(仮)」では、Box Platformを採用することとなった。

「Boxのプレビュー画面を見ながら、医師とオンラインでコミュニケーションします。資料をローカルに保存せずに、クラウド上から表示できます。医師側に、Boxのアカウントがなくても見られるので、手間がかかりません。ファイルのアクセスログも残せます」(倉氏)

Box Platformを利用して医師へオンラインプレゼンが可能になる「Medetail」

 今後の展望としては、エムスリーグループで研究しているAIを活用し、通話内容を解析してMRの評価に繋げたり、医師への満足度調査に使うといったことを計画しているそう。Box Platformも、同社のWeb講演会サービスで活用したり、医師向けにDICOM(医用画像情報)画像の取扱サービスなどを展開していく予定だという。

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