ロボホン 筆者撮影
シャープが2月18日にモバイル型ロボット「ロボホン」新製品を発表。2月27日に発売する。7万9000円の廉価版も出した。廉価版は駆動部分の数が少なく二足歩行ができない着座型だ。新製品は子どものいる親に買ってほしいといい、カメラで家庭を見守る「お留守番」機能などを追加した。歩行状況などを伝えると健康アドバイスをしてくれたり、別売のリモコンを使って音声操作で家電を動かすなど家庭向け機能も増やすという。しかし売れるのか素朴に疑問だ。
ロボホンはざっくりロボットの形をしたスマートデバイスだ。
利点とするのは音声入力。機械然としたスマートフォンやスマートスピーカーには話しかけづらいが、人の形をしているため話しかけやすいことがロボホンの利点だと説明された。ただそれならただスマホを人形の後ろに隠せばいいだけで、話しかけやすさは本質ではないのではないか。
たとえば吉野家が券売機を置かないのはお客さんからすばやく注文をとるためだという。たしかにほかの牛丼チェーンの券売機は注文したいメニューが見つからずやきもきすることがある。そこでもしその牛丼チェーンで「音声入力できる券売機を開発しよう」という話になったとして、券売機を話しかけやすくデザインしたところで、せいぜいお客さんが「牛めし並」と注文する態度がちょっと変わるくらいの違いしか出てこないのではないか。
スマートデバイスの本質はコンテンツを楽しむことだ。コンテンツを楽しむための画面があればあとはなんでもいいというのがスマートフォンだ。スマートフォンになくてロボットにあるものは動作だ。動作を通じてコンテンツを楽しめることがロボットの形をしたスマートデバイスの利点ではないか。
しかしシャープが発表した機能の多くは音声か映像を楽しむもので、格安スマホでもできそうなことばかりだ。音声認識の精度が上がって会話がスムーズになったのはいいとして、人のような動きをするロボホンはそんなことをするために生まれてきたのか。街角で客引きや道案内をさせられているかわいそうな人型ロボットを見かけたときと似たようなことを感じた。
子どものいる家庭で使ってほしいなら、ロボホンを子どもの遊び相手にするだけでもいいのではないか。一緒におもちゃで遊んだり、お店屋さんごっこをしたり、手をにぎったり、キスをするくらいのことでもいい。親にほしいと思わせるならおもちゃを片づける動作などを入れられないか。プリファードネットワークスは昨年CEATECで「全自動お片づけロボット」のデモを見せていた。そこまで高度でなくても、つかんだおもちゃをおもちゃ箱に入れるくらいのことができれば、ロボホンと一緒に片づけをする形で、子どもに片づけの習慣をつけられそうだ。
CEATEC JAPAN 2018: 全自動お片付けロボットシステム
https://www.youtube.com/watch?v=VGj3daiFNdM
会話や動作を通じて人間同士をつなげるロボットを「コミュニケーションロボット」と呼ぶことがある。コミュニケーションの基本はふれあいだ。人が動かすにしても人工知能が動かすにしてもロボットならもっと動作を通じて人とふれあってほしい。新しいロボホンの動きで変わったところといえば立ったり座ったりの所作がちょっと人間らしくなり、話している人の方を向けるようになったことくらいだった。ロボホンが最先端のコミュニケーションロボットなのだとしたら、もっと人とふれあう動作を積極的に増やしてほしい。サーボモーターとセンサーを最大限に生かした遊び心ある動きをたくさん増やしてほしい。すでにそういう動作をたくさん備えているのだとしたら、そのことをもっと強調してほしかった。そして駆動部分を減らした廉価版もいいが、むしろ駆動部分を増やして驚くような動作ができる上位版を出してくれたほうがよかったのではないかと個人的には思った。