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5ヵ月で50万個以上販売!カプセルトイ「だんごむし」はなぜヒットしたのか

文● 真島加代[清談社](ダイヤモンド・オンライン

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子どもの頃、飽きもせずダンゴムシを転がして遊んでいた…そんな記憶がある男性も多いだろう。2018年の夏、そのダンゴムシがおもちゃに姿を変えて登場し、SNSで話題となり発売直後に即完売、5ヵ月で50万個以上を出荷する大ヒット商品となっている。日本中を席巻している「だんごむし」誕生までの道のりを開発担当者に聞いた。(清談社 真島加代)

コスト増とニーズの変化を見据えた
「カプセルレストイ」の登場

2018年12月に発売された「赤いだんごむし」
2018年12月に発売された第2弾「だんごむし2」のラインアップのひとつ「赤いだんごむし」。赤以外の色素を持たず、赤っぽい色をしたダンゴムシは実在するとか

 指で触ると丸くなる不思議な生き物、ダンゴムシ。とても身近な存在だが、クワガタやカブトムシのような「かっこいい生き物」とは言いがたい…。そんなダンゴムシを思い切っておもちゃにしたのが、バンダイで企画・開発チームのアシスタントマネージャーを務める誉田恒之氏だ。

『だんごむし』開発の背景には、カプセルトイ市場の変化が関係しています。その変化とは、カプセルトイの製造コストが上がっていることがひとつ。もうひとつは、スマホの普及によって主力商品だった『キーチェーン』が携帯のストラップとして使われなくなったこと等により、市場全体が過渡期を迎えているんです」

「だんごむし」の開発を担当した株式会社バンダイ ベンダー事業部 企画・開発チームのアシスタントマネージャー・誉田恒之氏。「一番のお気に入りは初代の『だんごむし』。やっぱり愛着がありますね」(誉田氏)

 コスト増とニーズの変化に対応するために、同社は2015年から「カプセル“レス”トイ」の製造に乗り出したという。

「通常は専用の自販機にお金を入れてハンドルを回すと、プラスチックカプセルに入った商品が払い出されます。しかし、カプセルレストイは、その名の通り“カプセルを使わない玩具”なので最低限の包装を施された状態で商品が出てきます。カプセル分のコストを削減しつつ、クオリティーを維持した商品を提供できるのが特徴です」

ザクヘッドの次はダンゴムシ
「丸くてみんなが好きなもの」

 そんなカプセルレストイ最大のヒットとなったのが、2017年に発売した「機動戦士ガンダム EXCEED MODEL ZAKU HEAD」(以下、ザクヘッド)。読者の中にもファンがいるかもしれないが、ザクとはアニメ『機動戦士ガンダム』に登場する架空の人型兵器・モビルスーツの一種だ。

アジアを中心に国内外で180万個を売り上げた「ザクヘッド」 ©創通・サンライズ

「『ザクヘッド』は、丸い状態で自販機から払い出され、付属のパーツを組み立てると精巧なザクの頭部になるという商品です。ガンダムの全身プラモデルも当社の人気商品ですが、プラモデルは精巧になればなるほど、組み立てに時間がかかり、購入をためらう人がいるのも事実です。一方、ザクヘッドの場合は5分もかからず組み立てられる手軽さと、500円で高いクオリティーのものが手に入るという魅力が、ヒットにつながりました」

 ザクヘッドはアジアでも人気を呼び、累計約180万個の売り上げを記録した。また、ヒットの要因として「SNSの存在も大きい」と誉田氏は話す。

「ユーザーが塗装や装飾を施した『自作のザクヘッド』をSNSに投稿する、という動きも多数見受けられました。自分だけのザクを作って、SNSで披露するという流れも人気の背景として考えられます」

 ザクヘッドの開発にいそしむ中で「ザクはガンダムファン向けの商品だが、今までカプセルトイを手に取ったことのない新しい層に響く商品を作りたい」と、誉田氏は考えるようになったという。

「ザクヘッドを見ながら『丸くてみんなが好きなもの…』と考えていたときに、ふと、土の上で丸まっているダンゴムシが頭に浮かんだんです。また、ダンゴムシは1番ではなくても子どもに人気があるし、自販機から出てきたときのインパクトもある。商品化すれば話題になるはずだ、と思ったのがはじまりです」

ダンゴムシの形の再現に苦心
失敗を重ねてやっと商品化へ

 商品化できれば売れると感じながらも「最大の難関は、社内で企画を通すことだとわかっていました」と、誉田氏は話す。

「ザクヘッドにはガンダムシリーズという大看板があり、ある程度の数字が見込めます。しかし、ダンゴムシはもちろんノンキャラクターで、数字はまったく見えない。またクオリティーが高いものを世に出したかったので1個500円で12万個以上売らなければ、赤字になる可能性もあります。数字の面で難色を示されるのは想像できましたね」

 ちなみに、500円カプセルで12万個という数字はガンダムなどのS級キャラクターのカプセルトイ商品に匹敵する売れ行きだという。ノンキャラクターにとって、なかなかにハードな目標設定だ。

トライアンドエラーを繰り返して誕生した「だんごむし」第1弾。自販機から出せるサイズに直径を設定したところ、偶然にも実際のダンゴムシの1000%大の実寸になったという

「企画書だけでは却下になる可能性が高かったので、秘密裏に試作品を作り、実物を見せながらプレゼンすることにしました。さまざまな文献や図鑑で研究を重ね、中国の工場に設計図を送って試作品を作ってもらっては作り直す、という毎日。通常業務の合間に『だんごむし』の製作に取り組んでいましたね」

 試作品の中には「広げると平らになってしまうダンゴムシ」や「理想の倍以上の大きさになったダンゴムシ」など、さまざまな失敗を重ねたと誉田氏は当時を振り返る。

「特に苦労したのは、丸まったときの形状です。丸めると中心に隙間ができてしまうのが最大の懸案事項でした。微調整を重ね、最終的には殻と体節、脚の素材をすべて変えて、実際のダンゴムシと同様に殻の大きさもそれぞれバラバラにすることで“丸まったダンゴムシ”を再現することができました。ダンゴムシの形を再現するのは、本当に大変な作業でしたね」

 誉田氏がこだわったかいもあり、試作品を携えた社内プレゼンは見事に成功。2018年8月、着想から約2年の月日を経て、世界初のガシャポン「だんごむし」が発売されたのだ。

スーツ姿で「だんごむし」の
自販機を回す中高年も

 商品開発に懸ける熱い思いを聞くと、まるでダンゴムシ愛好家と思われがちだが、誉田氏は“虫嫌い”なのだとか。

「本物のダンゴムシを飼うつもりもないし、『だんごむし』製作中にダンゴムシの画像を見るのもイヤでした(笑)。ただ、虫嫌いだからこそ“おもちゃのダンゴムシ”を作ることができたのかもしれません。リアルに寄せすぎると“一部の愛好家向け”の商品になってしまうので、誰もが手に取りやすいビジュアルにもこだわりました」

 虫嫌いの開発担当者が作った「だんごむし」というフレーズは、商品紹介文にも記載されている。その文言を読んだユーザーは「虫嫌いの担当者、かわいそう(笑)」などのツッコミを入れ、ネット上で注目を集めたという。

「ノンキャラクター商品の『だんごむし』は、開発ストーリーがポイントになる、と考えました。そこで宣伝担当者が『虫が苦手な開発担当者』や『開発期間2年』などのキャッチーな言葉をちりばめつつ、SNSを中心にプロモーションをしていきましたね」

 ノンキャラクターならではの戦略で話題になった「だんごむし」だが、発売直後の反響は予想をはるかに超えていた、と誉田氏は話す。

「発売当日、上野のおもちゃ屋に行くと『だんごむし』の自販機の前に長蛇の列があったんです。子どもから大人まで並んでいましたが、とくに印象的だったのは中高年のビジネスマン。スーツを着た40~50代の男性が『だんごむし』を購入する姿を見て、普段カプセルトイに興味がないライト層を取り込めたことを実感しましたね」

グレードアップして第2弾登場!
今後は日本の在来種で商品展開も

 ライト層だけでなく、愛好家も満足の仕上がりで「ダンゴムシに注目してくれてありがとう」と、お礼を言われることもあるそう。

「第2弾では体節のパーツを大きくしたことで、奥のパーツが見えなくなりました。気づいている人は少ないかもしれないです(笑)」(誉田氏)

 そして、多くの人の心をつかんだ「だんごむし」は、2018年末に第2弾と称して新たな仲間が加わった。

「第2弾は色のレパートリーが違うだけではありません。広げたときの体節部分のパーツを大きくしたり、脚の仕組みを変えたりと細部がグレードアップしています。今後は、外来種のオカダンゴムシだけでなく、日本の在来種をテーマにして『だんごむし』を展開していきたいですね」

 石や植木の下など、日陰で生活をする彼らに光を当てた(?)カプセルレストイ「だんごむし」。街の自販機の中でだんご状態の彼らを見つけたら、ハンドルを回してみるのも一興かもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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