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退会したけりゃ金を積め!?スポーツジムで頻発する契約トラブル

文● 岡田光雄(ダイヤモンド・オンライン

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健康志向の高まりやダイエットブームによって、スポーツジムが活況を呈している。しかしその一方、トラブルも年々増加しており、退会を希望する利用者に対して「退会は認めない」「違約金を支払え」といった悪質な対応をするジムも増えているという。悪徳ジムの手口や対処法について、「弁護士法人・響」の澁谷望弁護士に聞いた。(清談社 岡田光雄)

市場規模急拡大の陰で
増加する契約トラブル

スポーツジムの契約を巡るトラブルが増えています。
スポーツジムの契約にクーリングオフはほとんど使えませんが、それでも法的に戦う方法はあります Photo:PIXTA

「レジャー白書2018」によれば、「スポーツ部門」の市場規模は4兆760億円と6年連続増加中で、フィットネスクラブ市場も4610億円と4年連続で過去最高を更新している。フィットネスクラブの業界誌「FITNESS BUSINESS」の推計では、日本国内のジム会員数は419万3706人にも及ぶという。

 市場規模の急拡大によって、ジムを巡るトラブルの相談件数も増加傾向にある。国民生活センターの報告によれば、2016年度は3227件だった相談件数が、2017年度は3553件にまで上昇。2018年は9月時点ですでに1650件(前年同期は1500件)に達している。

 澁谷氏によれば、代表的な被害事例は以下の通りだ。

(1)強引な勧誘で入会させられ、後日、解約を申し出たが、契約上数ヵ月は解約できないと言われたり、事務員に「辞めないで…」と泣きつかれたりした
(2)ジムを退会しようとしたが、当初の話と違い多額の違約金を請求された
(3)高齢者の会員が、十分な理解を得ていないのにプロテインなどのオプションを定期購入させられていた
(4)2ヵ月間のコースで契約後、納得できるサービスを期待できなかったので、サービスを一度も利用することなく、すぐに解約を申し出たが、2ヵ月分全額支払えと言われた
(5)電話で退会すると伝えたにもかかわらず、ジムの月会費が引き落とされていた。担当者によくよく話を聞いてみると、電話での退会はできない規定になっていた
(6)予約制のジムだったのに予約が全然とれないため、解約を申し出たが、会費は支払わされた
(7)ジムが改築中で1ヵ月間まるまる通えなかったのに、会費を1ヵ月分払えと言われた
(8)ビジター(ジムの見学・体験に誘った友達)が壊してしまった備品などの損害を肩代わりさせられた

強引な勧誘は無効
誰もが解約できる権利がある

「一般的に、ジムとの契約においては、クーリングオフ(一定期間内なら契約解除できるという法制度)が適用されない場合がほとんどです。というのも、クーリングオフは、たとえばキャッチセールスや訪問販売、電話勧誘、通販など、特定の販売方法を規律する特定商品取引法が適用される場合に利用できる制度です。一方、ジムとの契約は、こういった特定の販売方法で契約を結ぶことがあまりないため、結果的にクーリングオフ制度を利用できるケースはあまりありません」(澁谷氏、以下同)

 クーリングオフは使えず、途中解約を申し出れば認められないか、もしくは違約金を請求される。まさに八方ふさがりの状況だ。しかし澁谷氏によれば、クーリングオフ以外にも法的な戦い方があるという。それは、(1)契約自体を取り消す方法(2)契約の成立自体は認めつつも契約を解除する方法(3)契約解除に伴う違約金の支払いを免れる方法――である。

 まずは、(1)契約自体を取り消す方法を紹介しよう。

「ジムは通常“事業者”にあたるため、消費者に誤った情報を与え、または正確な情報を提供せずに誤認状態で契約させた場合や、消費者の自主的な判断を妨げる勧誘によって困惑させて契約させた場合は、消費者契約法4条に基づき、契約自体を取り消すことができます。たとえば、消費者がジムを見学・体験後に『今日は契約しません。少し考えさせてください』と言ったのに、担当者がなかなか帰らせてくれない場合や、ジム側が『3ヵ月以内に退会した場合は、違約金が発生する』という説明などをあえてしていなかった場合、誰でも必ず痩せると説明して契約させた場合等に適用されます」

 次に、(2)契約の成立は認めつつも契約を解除する方法だ。

「そもそも民法の大原則として、人は誰と契約を結ぼうが、あるいは契約を解除しようが自由なのです。しかし悪徳ジムの契約には、一定期間中に一定の条件を満たさないと契約を解除できないと規定されていることがあります。これに対しては、消費者契約法10条に基づき、消費者の契約解除権を制限する規定が無効であるとして戦う方法があります。これは一般的な契約と比べて、消費者の権利を制限したり、義務を重たくしたりするような規定が設けられており、それが信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するようなものである場合は、無効にできるのです。消費者の契約解除権を制限する規定が無効となる結果、原則どおり消費者はその契約を自由に解除することができます」

解約でモメないために
入会時に確認すべき4つのポイント

 最後に、(3)契約解除に伴う違約金の支払いを免れる方法を紹介しよう。

「悪徳ジムが言う違約金とは、消費者契約法9条に該当する可能性があります。この規定は、悪徳ジムの契約上の違約金が、『同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの』(当該超える部分)については無効となります。この『平均的な損害の額』というのがミソです。というのも、ジムはいつでも解約できるのが一般的ですので、悪徳ジム側も当然、いつでも解約があることは織り込み済みですし、不特定多数の会員が施設を常時利用することを想定しています。また、会員1人が辞めたところで事業の運営に影響があるとはいえません。そうすると、そもそも会員が退会することによって発生する損害が想定できません。『平均的な損害の額』が0円ですので、それを超える部分、つまり違約金すべてが無効になる可能性があります」

 ここまでは、実際にジムとトラブルになった場合のケースで話を進めてきた。しかし、そもそもこうしたトラブルに巻き込まれないために、事前の対策も身につけておきたいところだ。

 澁谷氏いわく、ジム入会時に契約書で確認しておくべきポイントは次の4つだ。

(1)退会の手続き方法(電話だけでできるのか、書面は必要なのか。退会することができる条件や期限が定められていないか)
(2)会費などの支払い方法(退会する際は日割りで対応してくれるのか、退会時に高額な違約金を請求されないか)
(3)返金(一括払いで年会費を払った後、半年で辞めた場合は残りの半年間の会費は返してもらえるのかなど)
(4)入会金0円とか、数ヵ月の月額会費無料などのキャンペーンやイベントがあるときに契約を締結する際は、その代償として何があるのか

「痩せなければ返金」も要注意
消費者は不利な立場に置かれることも

 また、ここ最近は、パーソナルトレーナーを置くジムも増えている。こうしたジムの中には「痩せなかったら返金します」などと銘打っているところもあるが、ここでも注意が必要だ。

澁谷望弁護士/東京・大阪・神戸・福岡に拠点を持つ「弁護士法人・響」所属。日本橋オフィス(東京)所長。行政書士の資格も持つ。民事介入暴力対策委員会所属。 消費者問題、借金問題、交通事故、労働・離婚・相続問題など民事案件を主に扱う。雑誌、新聞などメディア取材も多数。https://hibiki-law.or.jp/

「過去には、利用者が『数ヵ月で体重が1kgしか変わらなかったので返金してほしい』と申し出たところ、ジム側が『1kg痩せたので効果はあった。返金はしない』といって争われた事案もありました。そのジムの契約書には、『痩せたかどうかはジムが判断する』と書かれていました。これだと返金するかどうかはジム側が恣意的に判断できることになりますので、消費者は著しく不利な立場に置かれることになります」

「ジムで入会時にサインする契約書には、『これにサインしたら会則に同意したものとみなします』と書かれていることも多いため、時間をかけてでも一度しっかり会則を見た方がいいでしょう。ジムとの契約のように、継続的な関係を結ぶ契約をする際は、後でトラブルにならないためにも、契約内容の吟味はすべきだと思います。今日ではジムもたくさんありますし、納得できるところで体を動かされるのがいいかと思いますよ」

 入会時は書面に目を通す以外にも、後に“言った言わない”の論争にならないために、不明な点はジムスタッフに直接尋ね、録音しておくのも手かもしれない。

 不要なトラブルを避けるための自衛手段は、ジム以外にも応用できそうだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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