MCAの仕組みを非公開にしたことで
従来の拡張カードが利用できなくなる
MCA自身は完全な独自規格であるが、以下のような、1980年代としてはかなり先進的な構造を持っていた。
- データバスは16bit及び32bit幅。転送速度は10MHzなので20~40MB/秒ということになるが、実際にはDDR動作も当初から念頭に置いており、さらにアドレスバスを併用した64bit幅のモードも追加される予定で、これらを利用すると最大160MB/秒という、PCIを凌ぐ転送速度(*2)が実現可能
- バスの構造そのものは共有バス。割り込みはレベルトリガーになっており、複数の割り込みを1本の信号線で管理可能
- 16/32bit幅に関してはアドレス/制御信号とデータが完全に分離されており、データバスで効率的に転送できるようになっている(64bit動作時は、アドレスバスを転用してデータ転送を行なう)
- DMA Bus Masterに対応しており、さらにMaster同士のArbitration(複数Masterからの同時リクエストを調停する機構)が搭載され、12ミリ秒ごとにMasterを切り替え可能
- 必要となるリソースについてPOS(Programmable Option Select)と呼ばれる機構を利用して自動調整が可能
(*2) PCIも66MHzおよび64bitの規格が後追いで追加されているので、こちらと比較するとPCIの方が高速である。
後に出てくるPCIと比較して見劣りするのは信号速度そのものと、Delayed Transactionと呼ばれる多重転送処理(時間がかかる転送を後回しにして、すぐ転送できるものを優先することでバスの利用効率を引き上げる)の仕組みくらいのものである。
問題は、このMCAをI/Oバスそのものとして実装し、かつこの仕組みを非公開(ライセンス供与)にしたことだ。COMPAQは同じように独自のFlexアーキテクチャーを開発したが、このFlexアーキテクチャーはあくまでも内部の接続用であって、実際にはそのFlexアーキテクチャーの先にISAやEISAという従来と互換性のあるI/Oバスがぶら下がっていたため、XTバスやISAバス用の拡張カードがそのまま利用できた。
ところがIBMはMCAを内部バスではなく外部のI/Oバスとして採用し、かつ従来のISAを撤廃してしまった結果、従来の拡張カードが一切利用できなくなってしまった。ちなみにMCAのライセンス料はかなり高額であり、結果として一部のメーカーがこれに応じた程度である。
有名なところではChips&Technologiesがリリースした82C611/82C612というブリッジチップは、XTバス/ISAバスのカードをMCAに接続するための、いわばバス変換アダプターとして動作したため、既存のカードにこのチップを搭載すれば「一応」MCA対応カードが出来上がるというわけだ。ただこういうやり方では絶対にコストは下がらないわけで、価格競争力が劣るカードしかMCAにはラインナップされないことになった。
非公開にしたのはバスだけではない。PS/2ではテクニカル・リファレンスで回路図やBIOSのソースコードも明らかにされなくなった。その代わり、BIOSのエントリーポイントの仕様が公開され、この仕様に基づいてプログラムする限り正常に動作する形に切り替わり、実装が明らかにされなくなった。
その実装も、CBIOS(Compatible BIOS:IBM-PC/ATまでと互換性のあるBIOS)とABIOS(Advanced BIOS:PS/2以降の独自拡張が含まれる)に分かれるなど、いきなりクローズド・アーキテクチャーに走ることになった。

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