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Photo by Fusako Asashima |
ついに、米国が中国・華為技術(ファーウェイ)を潰しにきた。米中首脳会談当日に行使されたファーウェイ幹部の逮捕劇は、日本企業にも甚大なインパクトを与えることになりそうだ。
日本政府は名指しこそ避けたものの、「サイバーセキュリティーを確保するため、情報システムに悪意のある機能が組み込まれた機器を調達しない」と明言。事実上、中央官庁システムなどの政府調達からファーウェイと中国・ZTEを排除する方針を固めている。
米国は、日本を含む同盟国に対して、政府調達でこの2社の製品を使用しないよう要請している上、両社と取引する外国企業には制裁を加える姿勢も鮮明にしている。
戸惑っているのは、他ならぬ日本企業である。ある取引先社員は、「本当に撤収するべきなのかどうか、対応を検討中」と言葉を濁す。
日本の消費者には、ファーウェイは中国の地場スマートフォンメーカーとの印象が強いかもしれないが、実態は世界トップクラスのICT企業だ。通信事業者向けネットワーク事業、法人向けICTソリューション事業、スマホなどコンシューマー向け端末事業の三本柱で売上高は10兆円を突破。その半分を中国以外の海外で稼ぐ。
意外なほど、日本や日本企業との結びつきは深い。
ファーウェイは、2005年に日本法人を設立し日本に上陸した。わずか6年後の11年には、ファーウェイ日本法人が中国企業として初めて日本経済団体連合会(経団連)へ加盟。日本を代表する企業の仲間入りを果たした。今回の事態で、仮にも経団連加盟企業を日本市場から締め出そうというのだから、尋常な話ではない。
日本企業との結びつきには3パターン
ファーウェイと日本企業との結びつきは、主として3パターンある。
第1のパターンは、日本の通信事業者(キャリア)向けサプライヤーとしての顔。キャリアで最も関係が深いのはソフトバンクだ。ソフトバンクの携帯基地局の中核装置の大部分に、ファーウェイ製の無線機が採用されている。
それだけではない。コスト競争力のあるファーウェイ製品の評価は高く、次世代通信規格(5G)ネットワークでも、無線機市場のシェアを拡大させるとみられていた。実際に、ソフトバンクやNTTドコモと5G中核技術の実証実験を共同で行っていた。
第2のパターンは、日本製電子部品の納入先(調達者)としての顔だ。
ジャパンディスプレイ(JDI)の液晶パネル、ソニーのCMOSイメージセンサー、村田製作所や京セラの多様な電子部品がファーウェイ製スマホに搭載されている。これらの電子部品に、法人向けのサーバやストレージなども足しした「ファーウェイの日本からの調達額」は、2017年で約4916億円に上っている(下図参照)。
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そして、最後の3番目は、R&D(研究開発)のパートナーとしての顔だ。ファーウェイは、日本のメーカーから単に部品を調達するだけではなく、その調達先企業とパートナーシップを結び共同開発することで、技術革新のスピードアップを図ろうとしている。
目下のところ、日本では横浜、品川、船橋に続く4拠点目となる研究所を関西エリアに設立しようとしている。「関西に電子部品や素材のメーカーが集積していることから連携を深める意図がある」(ファーウェイ)ようだ。
日本企業が一斉にファーウェイ排除に動くとなれば、ビジネスの損失は計り知れない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)
※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら
