このページの本文へ

徴用工判決に揺れる新日鐵住金が明かした過去最大買収の舞台裏

2018年11月14日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部,新井美江子(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
新日鐵住金の鹿島製鉄所
新日鐵住金の鹿島製鉄所の粗鋼生産量、年間633万トンと比べても、エッサールはまずまずの生産能力を有しているといえる Photo:Bloomberg/gettyimages

 韓国の最高裁判所が新日鐵住金に対し、第2次世界大戦中に強制労働させられたとする韓国人4人への損害賠償を命じた徴用工問題。この「まさか」の問題勃発ですっかりかすんでしまったが、時期を同じくして新日鐵住金は、ある重大案件の“決着”を明らかにした。

 10月25日、破産したインドの鉄鋼大手、エッサール スチールに対する欧州アルセロール ミッタルとの共同買収が確実になりそうだと発表したのだ。

 エッサールは昨夏売りに出されて争奪戦が繰り広げられていたのだが、同社の債権者委員会がミッタル・新日鐵住金連合を落札者として選定した。インド会社法裁判所の審査やインド内外の許認可を取得した上で、今年度中にも正式買収となる見込みだ。

 買収額は実に4200億ルピー(約6400億円)。同時に提案した買収後の設備投資等の運転資金800億ルピー(約1200億円)も合わせると、総投資額は5000億ルピー(約7600億円)に上る。

支出額は3500億円に

 新日鐵住金の支出額は、3500億円前後になるもようだ。海外投資としては過去最大となるが、「取りあえずほっとした」と新日鐵住金幹部は胸をなで下ろす。

 それもそのはずだ。エッサールは新日鐵住金にとってどうしても欲しい案件だった。何しろ、同社は成長市場のインドに高炉など、鉄鋼製品の元となる「銑鉄」を造る上工程から備え、年間1000万トンの生産能力を持つ同国4位の鉄鋼メーカーなのだ。

 社内では、売りに出された当初から買収のためにそろばんがはじかれたが、新日鐵住金単独では金額的にとても手が出ない──。

 折も折、共同買収を持ち掛けてきたのが世界最大の鉄鋼メーカー、ミッタルだった。

 ミッタルは「イタリアの鉄鋼大手、イルバの買収で資金が不足していた」(新日鐵住金関係者)。その上、エッサールの再建に新日鐵住金の技術も生かしたいと考えていたといわれる。理由はどうあれ、新日鐵住金にとっては、千載一遇のチャンスが巡ってきたわけだ。

 ところが、1次入札では債権者委員会がミッタル・新日鐵住金連合を含む応札した2社を「不適格」扱いにするなど、エッサールの争奪戦は混乱を極めた。ミッタルが不適格の原因を取り除くことで資格は回復したものの、再建計画の再提出時に買収価格を15%弱つり上げることになるなど、ほろ苦さを残す買収となった。

 それでも、「エッサールを逃せば、今後、簡単にインドに高炉を持つことはできない」(別の新日鐵住金幹部)のも確かだ。まずは生産効率を上げ、エッサールの強みである建築・建材向け製品の販売を強化。将来的には、ハイエンドの自動車鋼板の展開ももくろみ、大型投資の“回収”を急ぐ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ