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性犯罪者に甘い国・日本が見習うべき諸外国の厳格対策法

2018年11月12日 06時00分更新

文● 福田晃広(ダイヤモンド・オンライン

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強制わいせつ、レイプなど、女性や子どもを狙った性犯罪事件が後を絶たない。しかも欧米に比べて、日本は性犯罪者に対する処置が不十分だという。被害者学、犯罪学、刑事法学が専門で、元常磐大学学長の諸澤英道氏に詳しい話を聞いた。(清談社 福田晃広)

加害者ばかりに目を向け
被害者の人権を無視した歴史

再犯率が高いとされる性犯罪者の出所後の対策は、国によってさまざまです。
性犯罪前歴者の情報を国民に提示している欧米諸国に比べると、日本の対策は非常に甘い。性犯罪は再犯率が高く、このままでは問題が大きい Photo:PIXTA

 再犯率が高い性犯罪。その対策を着々と進めてきた多くの欧米諸国では、性犯罪前歴者の情報を国が管理し、国民に情報を開示している。一方、日本では犯罪者の人権の観点からの反発も強く、被害防止の取り組みが遅れているのが現状だ。

 犯罪を分析する学問である「犯罪学」の歴史をひもとくと、世界的にも、長い間、加害者側の人権にしか配慮してこなかったと、諸澤氏は指摘する。

「実は犯罪学では、『犯罪という現象を犯罪者側から見る』ことが前提。国も犯罪者をどう扱うかに関心が集中し、その結果、被害者がおざなりになっていました。1960年代に入って、ようやく被害者の人権にも目が向けられるようになり、1985年の国連犯罪防止会議において、『被害者人権宣言』が採択されました。それ以降、国連加盟国は被害者の権利や支援を規定する国内法整備が義務づけられたのです」(諸澤氏、以下同)

 当時日本も国連会議に数多くの代表団を送り、賛成した。ところが実際に犯罪被害者等基本法が成立したのは2004年。国連の採決から約20年もたっている。日本は諸外国と比べて、明らかに対応が遅いのは事実なのだ。

 法務省は2006年から、性犯罪者を更正させるため、認知心理学に基づいた「性犯罪処遇プログラム」を始めたが、思ったほどの成果が上がらなかったと、諸澤氏は言う。

「まったく効果がないとはいえませんが、性犯罪は常習性がある上、高年齢化するにつれて、行動を改めさせることは非常に困難なのです」

性犯罪者情報が
国民に共有されているアメリカ

 有効な性犯罪対策がほとんどなされていない日本だが、諸澤氏によれば、まず日本が最初に行なうべき性犯罪者対策として、「犯罪者登録法」をつくるべきだと語る。

「現状、日本の警察、検察、裁判所、刑務所は犯罪者情報をバラバラに持っていて、それらはつながっていません。このようなことは先進国では通常ありえません。私が考える『犯罪者登録法』とは、欧米がやっているように、少なくとも暴力的な性犯罪を行なった者はデータベース化し、一人ずつにコード番号を付けて、出所後も追跡できるようにする法律のことです。そこで人権を理由に反対意見が出てきますが、対象者のプライバシーを守りつつ運用するということをしっかり国会で議論すればいいのです」

 しかし、国によっては、犯罪者のプライバシーよりも、国民の「知る権利」を重視しているところもある。

 1994年、アメリカのニュージャージー州で施行された性犯罪者情報公開法は、被害者女児の名前が由来となり、「ミーガン法」という通称で知られている。その後、ほかの州でも「ミーガン法」が制定されていった。州によって内容は異なるものの、性犯罪者の帰往先(出所後に住む場所)近辺の地域住民や学校に情報提供したり、指名手配犯のように顔写真が載ったポスターが店や電柱に貼られていたりする州もあるという。

 近年は、犯罪者のデータベースをインターネット上で公開することを義務づける法律もできたといい、世界中誰でも閲覧できてしまう状況になった。

 そのため、例えばアメリカでは性犯罪歴のある人を教員として採用してしまった場合、生徒の親から「ちゃんとチェックすれば防げたのではないか」と学校側が訴えられるケースが増えていると、諸澤氏は言う。

 それほど、アメリカは性犯罪対策を厳重に行なっているといえるのだ。

GPS装着による
自己規制も有効な手段

 諸澤氏は、アメリカほど過激ではないにせよ、制度導入時には、犯罪防止を職務とする警察や検察など、守秘義務のある公務員に情報公開をして、段階的に防犯に協力している地域住民や学校などに範囲を広げていくべきだと語る。

 より強い対策として、性犯罪歴のある人間にGPS端末を装着させて監視するシステムがあり、アメリカの幾つかの州で行なわれている。日本でも新潟県議会が、今年5月に起きた新潟女児殺害事件を受けて、7月13日に性犯罪者へのGPS端末装着を国に求める意見書を議会に提出し、賛成多数で可決した。

 ここでも人権侵害を理由に反対する人も多いが、そもそも当人の同意を得た上で行なえば、人権問題には発展しないと、諸澤氏は言う。

「誤解が多いのですが、GPSを装着する目的は、国家による監視ではなく、性犯罪者自身の自己規制を図るもの。決して行動を見張っているわけではないのです。『夜10時以降は外出しない』と約束したら、ちゃんと守られているのかチェックする程度。これなら多くの人は異議を唱えないはずです」

 日本の性犯罪に対する認識が甘いのは、そもそも罪が軽いからだともいえる。例えば、強盗と強姦を比べると、2017年7月13日に施行された刑法改正前までは、強盗の罪の方が重かったのだ。

 また改正後でも、強姦は強盗と同様、5年以上の有期懲役刑であり、まだまだ性犯罪が軽視されているのは否めない。

 刑法の重罰化も含めて、国が早急に前述したような性犯罪対策を行なうことを望みたい。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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