はじめまして。ウェルプレイドの代表取締役 谷田です。今回より、アスキーキッズでコラムを書かせていただくことになりました。ウェルプレイドは、eSportsのイベント企画・運営、映像制作・配信、eSports選手の支援・マネジメント、ゲームプレイヤーにフォーカスしたメディアを展開している会社です。
さて、この連載では
・eSportsとは? プロゲーマーってどんな仕事?
・日本でeSportsが流行ってきた理由と現状
・eSportsを専門とする会社を作った理由
を中心に、いま話題のキーワードとなりつつある「eSports」に関わるお話を、ゲストなどもお呼びしつつができればと思っています。
初回は、ゲームをプレイし続けてきたことで貴重な出会いとチャンスが生まれ、「eSportsに全力を注ぐ会社」を作ったきっかけと簡単な自己紹介をさせていただきます。
ドハマりしたゲームとSNSで人生が変わった
僕の人生において大きな変化のきっかけとなったのは「オフ会」の存在でした。
僕は現在36歳です。10年ほど前からmixiやTwitterといったSNSが世の中で流行しだしました。さまざまな影響をSNSから受けた人がたくさんいたと思いますが、僕もそのうちの一人です。
SNSではオンライン上でたくさんの人と交流するのが主ですが、SNSが一般化したことによって、SNSで知り合った人と実際に(現実世界で)会うことも徐々に浸透していきました。そこで広まったのが「オフ会」です。オフ会とは、SNSなどを通して共通の趣味をもつ人やコミュニティ(グループ)と知り合い、その人たちと実際に集まる会のこと。普段の生活を送っているだけでは知り合うことができない人ともリアルで交流できるイベントです。
当時、ゲーム業界にいなかった僕は、某ゲーム攻略雑誌が運営しているSNSが開催したオフ会に一般募集の枠があり、運よく参加することになりました。このオフ会のテーマとなったゲームは、2007年に発売し一世風靡することになったカプコンの「モンスターハンターポータブル 2nd」。いまでも続く人気シリーズです。
実際に行ってみると、俗に言うゲーム業界の方が中心となったオフ会でした。有名なゲームクリエーター、芸人、ゲームメーカーで働く方々などが参加していました。ただただ「モンスターハンターポータブル 2nd」にハマっていた僕は、とにかく緊張のしっぱなしでした。
緊張しているなか、周りを見渡してみると当時エンターブレインという会社で代表取締役の浜村通信さんが普通に僕の横でモンハンをやっているわけです(笑)。勇気を振り絞って出して話しかけると、気さくにお話してくださり、一緒にモンハンをプレイさせていただいたり、プロ野球の話などでも盛り上がったりし、気がつけばSNS上でもつながる「フレンド」になるほどの仲になりました。
この自分自身の体験が元になり、「ゲームが好き」という気持ちは大きな共通点であり、さまざまな垣根を超える可能性があると感じたのです。また、「SNSってすごい! インターネットで知り合う人たちに限界はないかもしれない!」とも。
ちょうどその頃、カプコンの「ストリートファイターIV」家庭用版に僕はハマっている時期でもありました。SNSを通して格闘ゲームおよび、ストリートファイター好きのコミュニティに参加して、モンスターハンターで得られたような感動体験を重ねていました。
そんな活動をしていたら、SNKの「餓狼伝説2」というまた別のゲームの全国大会優勝者に知り合ったのです。その方に、格闘ゲームのいろはを教えていただき、そこから「ストリートファイターIV」のおもしろさにどっぷりとハマはまり込んでいき……気がつけば家庭用版ランキングでザンギエフアジア4位というところまで一気に成長しました(簡単に言うと、「ストリートファイターⅣ」にハマりすぎて、ゲームの中のザンギエフというキャラクターを使う人の中でアジア4位になったということです)。
ここから僕のゲーム人生が大きく変わり、新たな一歩が始まります。
2011年に実施したイベントで突然有名人に
2011年3月に東日本大震災が発生しました。オフ会で知り合った格闘ゲーム好きなメンバー内で、震災に対してなにかできることはないかという話になり、大会の参加者の参加費用を全額寄付するイベントを実施しました。
当時、日本でも初の格闘プロゲーマーが生まれてきていました。そういったプロゲーマーたちが一同に集まる大会となり、結果的に6000~8000人が同時視聴してくださり、国内外問わず注目を集めたイベントになったのです。
僕自身は、ゲームセンターに来たこともないような「とりあえず記念出場して楽しもう!」という人たちと3人で即席チームを組んで出場。そうしたら、なんと1回戦目の相手はプロゲーマーたちが組んだ優勝最有力候補のチームだったのです。
僕とチームを組んだプレイヤーは、勝ち上がるよりも一緒に楽しめれば良いという側面が強かったんです。勝利を積み重ねていくトッププレイヤーチームとの戦いに、1回戦にもかかわらず大注目が集まり、次々と倒されていく我がチームメンバーたち。そんな苦しい状況に注目が集まるなか、3人目の出番として出場した僕がまさかの3タテ(相手チーム全員を1人で倒すこと)。もちろん、誰も予想していなかったことだと思います(笑)。
その結果、僕の知名度は一気に上がりました。どのくらいの影響があったのかというと、Twitterのフォロワーがこの大会前後で300人から3000人に増えました。また、通いなれたいつものゲーセンに行くと、見知らぬ人に「このあいだの大会最高でした!」と握手を求められたり、コントローラーが壊れたことをTwitterでつぶやくと、ファンの方から新しいコントローラーを送ってくださったりも。
さらにすごいことに、反響は国内だけにとどまらなかったのです。香港に仕事で出張でいった際には、香港のプロゲーマーから「対戦してほしい」と連絡が入り、ご自宅に招待いただいたりご飯を食べに行ったり交流することもできました。さらには、僕の作った格闘ゲームチームがクウェートで開催する大会に招待を受けたこともありました。しかも、国賓級の扱いでもてなしていただき、毎日ゲームをプレイして楽しむ体験を得られました。
それまでは、ゲームが上手くなった先にどんな世界があるのかなんて想像をしたこともありませんでしたが、純粋に「ゲームが上手いってすごいことなんだなー」と思い知りました。
共同代表との出会いは渋谷のゲームセンター
ゲームによって開けたのは自分自身の立場だけでなく、新たな人との繋がりもありました。
当時の僕には、定期的に通うホームグラウンド的なゲームセンター(先述した「握手を求められた場所」)が渋谷にありました。そこに行くと、いつもちょうど同じくらいの実力で対戦できるガイル(「ストリートファイター」のキャラクター)使いがいました。正確にはどれくらいか覚えていませんが、おそらく3ヵ月ほどそのガイル使いと黙々と対戦を続けていたかと思います。
ある日、そのガイル使いと3時間近くぶっ続けで対戦したあと、ふと話しかけてみたんです。すると、「ストリートファイターⅣ」が好きという共通点だけでなく、彼も同じゲーム業界で働いているということがわかりました。これが「ウェルプレイド」の共同代表である高尾との最初の出会いでした。
その後、年に3~4回は飲みに行き、お互いのやりたいことや将来の夢なんかも話す仲になっていきました。彼から聞いた僕の心にいつまでも残っている印象的だった彼の夢があります。
「オリンピックの種目に、ゲームセンターのゲームが選ばれる世界を作りたい」
とんでもなく共感した僕は、その夢に感化され、「他の人がその世界を実現するぐらいなら、自分たちが作り上げたい!」と強く決心。超スピードで会社を退職し、ガイル使いの高尾と一緒にウェルプレイドを立ち上げることになります。
SNSを通してオフ会に参加し、そのコミュニティで師の教えによってゲームが上手くなった僕が出会った共同代表の高尾は、僕の人生をゲームの次に大きく変えた人物です。
さて、かなり長くなってしまいましたが、そんなこんなでウェルプレイドができ、現在に至ります。ネットで知り合った人と会うのは不安だったり、そもそも僕自身の経験は一部の人に起こるラッキーな出来事だったりするんじゃないか、と思う方もいらっしゃるかもしれません。
次回からはゲーム業界、特にゲームでお金を稼いでいる人たちのお話や、eSportsってそもそもなんぞや?といったお話をしていきます。
ウェルプレイド 代表取締役
谷田 優也(Twitter:@akahossy)
ソーシャルゲームのプロデューサーを経て、渋谷のゲームセンターで『ストリートファイターIV』をやりこみ、“ザンギエフ使いのアカホシ”として名が知られているときに出会った髙尾恭平と共に、2015年11月にウェルプレイドを設立。「ゲームが上手い人、上手くなろうと頑張っている人が世間で高く評価される時代にしたい」という思いから、日本初のeSports専門会社としてeSportsに関する企画、プロデュース、運営、コンサルティング、配信等を行う。
http://wellplayed.jp/