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部下の「やる気スイッチ」が入り、自分の負担を8割減らせる接し方

2018年11月07日 06時00分更新

文● 見波利幸(ダイヤモンド・オンライン

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部下の“やる気スイッチ”はどこにある?
写真はイメージです Photo:PIXTA

次から次へと世間を騒がせているパワハラ・セクハラ問題。決してアマチュアスポーツ界だけのものではないと、すべてのビジネスパーソンが実感しているだろう。いまの時代、“自分が部下だった頃の上司像”のまま、部下とうまくコミュニケーションをとるのは難しい。しかし時代に合った新しいコミュニケーションを理解し、部下のやる気を引き出すことができれば、部下はいちいち言われなくても自分で成果を出してくるようになり、上司の負担は7~8割減らすことができる――『なぜか、やる気がそがれる 問題の職場』(青春出版社刊)の著者・見波利幸氏が“新時代の上司”に必要なコミュニケーションのスキルを公開する。

部下の“やる気スイッチ”はどこにある?

「部下のやる気をどう引き出すか」は、いつの時代も上司の悩みのタネである。あれをやれ、これをやれといちいち言わなくても部下が自主的に動いてくれたら、上司の仕事もずいぶん楽になるだろう。しかし相手が「何を考えているのかよくわからない、今どきのおとなしい若者」となると、従来型の上司たちは途方に暮れるばかりである。はたして今どき部下の“やる気スイッチ”はどこにあるのだろうか。

 実際の職場においては、一発でメンタルに異常をきたすような問題を抱えている人は少数派で、一番多いのは「ほんのちょっとの不満」を抱えている人である。「ほんのちょっとの不満」とは、「困ったときに相談できる人がいない」、「上司にアドバイスを求めても精神論ばかり言われる」、「誰も自分の気持ちをわかってくれない」など様々だ。一つひとつは小さくても、積み重なるとモチベーションは上がらない。

 人が主体的に動くようになるのは、「他者から評価されたい」「尊敬されたい」という「自尊欲求」が湧いてからである。自尊欲求とは、マズローの「欲求の5段階説」でいう4段階目にあたる。この段階にある人は目に見えてモチベーションが高い状態であり、自主的に仕事ができる。

 ちなみに、1段階目は「生理的欲求」、つまり食べる、飲む、寝るといった生命を維持するための欲求である。2段階目は「安全欲求」。危険な状態を避け身の安全を保とうとする欲求である。ハラスメントはこの「安全欲求」を脅かすものだ。3段階目は「社会的欲求(所属と愛の欲求)」。信頼関係や愛情に満ちた関係を持ちたい、そういう集団に所属したい、自分が必要だと思われたいという欲求だ。「ほんのちょっとの不満」でモチベーションが上がらない人は、この社会的欲求が満たされていない状態といえる。

 社会的欲求が満たされてはじめて、自尊欲求が出てくるのである。部下に対して「指示待ち人間で困ったものだ」と思っているとしたら、部下が「自尊欲求未満の状態」に留まっているからだ。身の危険があったり、自分が必要とされていると思えない状態では主体的なやる気など出てこないのが、私たち人間なのである。

 では、上司は具体的に何をすればよいかというと、部下と丁寧なコミュニケーションを重ねていくことである。困っていたりモチベーションが下がっているようなら声をかける。目標をクリアできていなければ、ただ発破をかけるだけでなく、いつまでに何をやればいいか、どうすればクリアできるようになるかを具体的に計画し進捗を共有する。良い成果を出したら、いいかげんに褒めるのではなく、努力したポイントを外さずに褒める――こういったコミュニケーションを通じて、部下は「上司は私の仕事ぶりをきちんと見ていてくれる」「あの資料を仕上げるまでに、何が大変だったか、結論にどんな価値があるかをちゃんとわかってくれている」「保身のために私を道具扱いしたり、不当な危害を加えることはない」と安心し、「この人についていけば成長できる」と思えるのだ(さらに「転職するよりも、この人の下にいるほうが成長が速そうだ」と思うようになる)。

 つまり、上司のマネジメント次第で、「言われないとできない人」を「言われなくてもできる人」へと導くことができるのだ。

「話しやすい上司」になる2つの方法

 部下と話すとき大事なのは、「誰のために話しているのか」だ。部下から「相談があります」と言われると、上司の頭は反射的に、「トラブルか?」「何かあったのか?」「あったのなら、事実関係は?」「何が原因?」「誰の責任?」「解決にかかるコストは?」など、質問で一杯になる。そのため有能な人ほど、悪気はなくても、つい最速で質問に答えさせようとし、部下の話が少しそれただけでも「その話はいいから、質問に答えて」「結論だけでいいよ」などと軌道修正してしまう――思い当たるところはないだろうか?

 これは非常にもったいないことなのである。実は、一見本題からズレた話に、部下が本当に話したいことやトラブルの真因が隠されている場合が多いのだ。とはいえ、経験豊かな上司になればなるほど「問題はあのあたりにあるだろう」等と見当がつくので、部下の余談を面倒だと感じがちなのだ。ビジネスマナー上でも「結論から話す」が正解とされており、上司としては当然という思いだろう。

 しかし、一見何の意味もなさそうでじれったい部下の余談を聞くことで、得られるものは思いのほか大きい。「こんな話も丁寧に聞いてくれるのか」と安心した部下は、本題に関して言いにくいことがあったとしても、包み隠さず打ち明けてくれるようになるだろう。これは、仕事と関係のない雑談をする時にも影響してくる。部下は、「自分の話したいことを聞いてくれる上司」と「聞きたいことだけを詮索してくる上司」を厳密に見分けている。前者となら雑談でプライベートの話題もストレスなく話すことができるが、後者からプライベートのことを聞かれても「必要なことだけを言わなければ」と委縮してしまうのだ。

「若手と何を話したらいいか、わからない」「雑談しようとしても部下が話に乗ってこない」と悩む上司は多いが、原因は上司自身が作ってしまっているのかもしれない。

 もし、部下との雑談が広がらないのなら、オープンクエスチョンを意識してみてほしい。オープンクエスチョンとは、回答の範囲を限定しない質問のことだ。対して、イエスかノーで回答できる質問をクローズドクエスチョンという。

「うまくいってる?」→「普通です」
「問題ない?」→「特段ありません」

 このように、会話がひと言で終わってしまうのは、クローズドクエスチョンだからである。

 一方、「仕事の進み具合について、少し教えてもらえるかな?」というオープンクエスチョンなら、イエスかノーで終わらず話を広げることができるだろう。「話しかければ答えるが自分からは喋らない」「何を考えているかわからない」という人は、ぜひオープンクエスチョンを試してみてはいかがだろうか。「余談に見える話も聞く」「質問はオープンクエスチョンにする」――この2つで部下も上司に話をしやすくなり、良好な関係を築くことができるだろう。

部下を叱る前に、上司が心がけるべき5段階とは

 上司と部下も同じ人間同士、最後は「誠実に接しているか」がモノを言う。誠実に部下と向き合っていれば、部下の努力しているところを発見でき、部下を叱る言葉も心に響くはずだ。肝心なのは、叱り方・褒め方のテクニックではなく、態度であり心のありようである。

 これまでの職場環境では、「部下に対して誠実であれ」という発想そのものが抜け落ちていたように思う。立場が下の者が上の者に対し忠誠を誓うことばかりを求められ、上司もまた、さらに上の上司に対して忠実であろうとするあまり、部下たちへの誠実さを忘れてしまったのではないだろうか。

 もっとも、部下に誠実であろうとするほど、叱ることについては慎重にならざるを得ない。叱るというのは本来とても難しいことである。従来型の上司は、ちょっとしたミスでも「なんでこんなことができないんだ!」と、感情的に叱ってしまうことも多いが、これは部下にとってダメージが大きい上に、効果も小さいのである。

 そもそも、「叱責」に至るまでには次の5段階がある。

(1)1回目のミスが起こったら、まず「事実を提示」し、部下と共有する。
(2)そして「こうしてほしい」と「注意」をする。
(3)2回目のミスが起こったら、ここでも叱らず「諭す」。
(4)次のミスが起こらないよう、部下と「約束」をする。
(5)さらにミスが起こってしまったら、(4)の約束が守られず悲しいという「自分の気持ち」を伝える。

 この5段階で重要なのは、上司が誠実に向き合ってくれていると「部下自身が気づくこと」である。叱責を繰り返してしまうと、部下は怒られないようすることばかりを気にして行動するようになり、自主性がなくなってしまうのだ。しかし、よほど例外的なケースでもないかぎり、上記の5段階のどこかで上司の信頼や期待、思いやりに気がつき「信頼してくれた上司を裏切ってしまった」「どうにかして挽回したい」「次こそ期待に応えたい」「この人を裏切ることは今度何があってもしたくない」と思うようになるだろう。こういう気持ちになってはじめて人の行動は変わるのではないだろうか。言い方を変えれば、もはや6段階目である「叱責」などしなくても部下は変わるということなのだ。

 当然ながら、上司は会社の業績も意識しなければならない。そのために、会社や顧客の都合を優先し、ときに部下を犠牲にしてきたのがこれまでの上司像だ。しかし、いくら業績を上げていても、顧客にはいい顔を見せながら部下にはキツくあたって平然としているような人は本当に「できる上司」だといえるのだろうか。部下に対して誠実になれない上司は、いくら表面だけ取り繕っても、いつか上司として然るべき行動がとれないことが白日の下にさらされてしまうだろう。

 業績を追求するだけの上司に部下はついてこないし、部下を甘やかすばかりの上司では業績を上げ続けることはできない。抽象的に聞こえるかもしれないが、会社にとっての幸福も、顧客にとっての幸福も、そして部下の幸福もすべて同じ誠実さを持って高めていくことが、“新時代の上司”に求められる条件なのである。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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