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不健康な老後を10年も生きる日本人、泣かないために今からできること

2018年10月17日 06時00分更新

文● 奥田昌子(ダイヤモンド・オンライン

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シニアの食事会
写真はイメージです Photo:PIXTA

昨年、平均寿命が男女ともに80歳を超える最高齢を更新し、いまや世界的に見ても“長寿大国”となった日本。しかし、「長生き」は本当に幸せなことなのだろうか。厚生労働省の統計(2016年)によると、日本人は平均寿命と健康寿命の差が大きく、男性は約9年、女性は約12年も不健康な期間があるとされている。年々平均寿命が延びている日本人にとって、「いきいきと健康のまま長生きすること」はこれからの課題となってくるだろう。そこで、『「日本人の体質」研究でわかった 長寿の習慣』(青春出版社刊)の著者・奥田昌子氏が、日本人の体質や病気の傾向に特化した健康対策をアドバイスする。

“あの制度”が長寿大国・日本を築き上げた!

 そもそも、日本人の平均寿命はなぜここまで延びたのだろうか?平均寿命を決める要因はたくさんあるが、その中で、日本人の平均寿命が急速に延びて欧米先進国を次々と追い抜いたきっかけは、子供の死亡率の低下である。1947年には1000人あたり76.7人の子どもが生後1歳までに亡くなっていたが、その後、肺炎や胃腸炎、結核をはじめとする感染症の予防法と治療法が開発されたことで、1980年には7.5人、2016年には2.0人まで減っている。これにつれて、日本人の平均寿命は大きく延びたのである。

 しかし、欧米先進国でも感染症対策は広く行われていたため、日本の平均寿命が欧米先進国を追い抜いた理由はこれだけではないだろう。そこで、医療に関して日本独自の要因として考えられるのは、会社や自治体、学校などで実施される健康診断と、誰もが一定の自己負担で必要な医療を受けられる国民皆保険制度である。医療を受ける機会が不平等だと国民の平均寿命を延ばすのは大変だが、日本には、社会的地位や経済力、年齢、性別にかかわらず医療の恩恵を広く国民に開放するべきだという考え方が古くからあった。健康保険にしても、戦前にはすでに70%の国民に適用されていたという。こういう下地があったからこそ、感染症に対する医療の進歩をテコにして、平均寿命をぐっと押し上げることができたと考えられる。

 さらに、医療の他にもうひとつ、日本人の健康を長く支えてきたものがある。それが、農林水産省がいう「日本型食生活」だ。炭水化物、蛋白質、脂質のバランスが取れた「理想の和食」を達成できたのは1980年頃のことだが、それまでの時代も日本人の体質の弱みを補うような食事はできていた。日本人は、多くの病気の原因となる内臓脂肪がたまりやすい体質なのだが、長年にわたり内臓脂肪がつきにくい和食を追求してきたからこそ、一気に平均寿命を延ばすことができたのである。

 以上のことから、平均寿命は、医療の受けやすさや健康診断の受診率、食生活などいくつもの条件が重なって決まっていくことがわかるだろう。

世界の長寿法は、日本人にも効果があるのか

「長寿」については、日本の他に昨今世界で話題になっている国もいくつかある。では、そういった国で実践されている食生活を取り入れれば、日本人はさらに寿命を延ばすことができるのだろうか?

 たとえば、平均寿命が世界上位であるイタリアは、心臓病による死亡率が低いことが明らかになった。そこで、イタリア人が好む地中海食(主に、魚や野菜、穀物、豆などをオリーブオイルで調理したもの)に注目が集まったが、長寿と地中海食の関係については、当のイタリアの専門家がきっぱり否定している。地中海食のポイントは、摂取カロリーが少ないことであり、地中海食のメニュー自体が長寿によいというわけではないという。さらに、現代の地中海食は、かつてのものよりも脂肪が多く、日本人が「健康になれる」という目的で食べるのには適していないといえるだろう。

 また、ヨーロッパで心臓病による死亡率が最も低いとされるフランスは、赤ワインをたくさん飲んでいるからだといわれている。赤ワインに多いポリフェノールが、動脈硬化を起きにくくすると説明されているからだ。しかし、日本人はもともと心臓病による死亡率がフランスより低いため、心臓病の予防のためであれば赤ワインを飲む必要はない。それよりも、赤ワインをたくさん飲むことによるアルコールの害の方を気にしたほうがよいだろう。実際、フランスも心臓病の死亡率は低いが、飲酒量が多いため肝臓がんによる死亡率が欧米でも高いとされている。

 このように、世界で健康によいとされている食生活が日本人にも効果があるとは限らない。なぜなら、健康によい食生活、習慣は、人種の体質によって変わってくるからだ。最近の研究によると、海藻を腸内で分解できるのは、世界でもおそらく日本人だけの特徴であることが明らかになった。日本人の腸に住んでいる特殊な腸内細菌が海藻の食物繊維を分解してくれるのだという。また、その時に出る物質に内臓脂肪をたまりにくくする作用があることも示されているが、大多数の欧米人は海藻を分解することができないので、日本人のような効果は期待できない。

 それぞれの国の人種にとって望ましい食生活は、遺伝、生活習慣、気候風土などが形作る体質によって異なる。もちろん、世界の食生活からも学ぶべき点は多々あるが、まずは日本人の体質に合わせた長寿習慣を追求すべきなのである。

寿命を延ばすカギは「好奇心」!?

 寿命を延ばせるかどうかは、食生活だけでなく、普段の生活習慣からも決まってくる。そのカギとなるのが「好奇心の強さ」だ。イギリスの研究チームによる遺伝子調査で明らかになったのが、「勉強」と「新しい経験」が長寿と関連しているということだ。具体的には、「学校を卒業した後で、一年学習するごとに寿命が約一年延び、進んで新しい経験をする人はさらに長寿が期待できる」と記載されているのだが、この背景にはある遺伝子が関係している。

 その遺伝子は、好奇心の強さや意欲、冒険心とかかわるドーパミンという物質の働きと関連することが知られており、一説によると、アメリカ人にはドーパミンの働きが強くなる遺伝子を持つ人が半数以上いるのに対し、日本人は20%しかいないといわれている。日本人が冒険を避け、地道に努力する傾向があるのはそのためだという主張もあるのだ。

 そうはいっても、成人してから新しいことにチャレンジをしたり勉強を続けることはそう簡単ではないだろう。それについて奥田氏は、本を読んだり買い物して人に会うだけでも効果があるという。

 読書については、アメリカの大学の研究者らが、学生を対象に「本を読むことで脳にどんな反応が起きるのか」調べたところ、読書をしている期間だけでなく、読み終わって数日たっても、脳の言語、記憶、聴覚をつかさどる部分が活発に活動していることが明らかになった。たしかに、本を夢中で読んでいると、次第に登場人物になりかわって、自分が行動しているように感じることがないだろうか。この感覚は、脳がフィクションと現実を混同することで起きるのだが、先ほどの研究によると、読書を終えて5日たってもこの脳の反応は続いていたという。このように、読書は、文字を目で追っているだけなのに、実際に体験しているときと同じような脳の反応を引き起こすことができるのだ。

 脳の働きを活発にする読書のポイントは、登場する場面を脳でありありと思い浮かべることなので、漫画や挿絵がたくさん入った本は適していないといえるだろう。また、速くたくさん読む必要もなく、自分のペースで、周囲の物事が耳に入らないくらい本の内容に集中して読むことが大切である。何か特別なことをしなくても、読書をすることで「新しい経験」ができるのであれば、長寿の習慣として手軽に取り入れることができるはずだ。

 年齢を重ねると誰の体でも老化は進むが、成長するにつれて見た目の若さがばらつき始め、高齢になると同じ年齢でも親子ほどの差があらわれることも珍しくない。この個人差を作るのは何か、病的な老化をできる限り遅らせて健やかな老後を送るには、どんな食生活や生活習慣が望ましいのか。次回は、100歳を超えても元気な日本の長寿者にみられる「4つの共通点」について具体的に述べていきたい。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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