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Web UIによるDB管理者/開発者向けセルフサービス化、次世代ワークロードの保護など進化の方向性示す

ベリタス「NetBackup」、社内ユーザーへの権限委譲や活用促す新版

2018年09月28日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 ベリタステクノロジーズは2018年9月27日、エンタープライズ向け統合バックアップ製品「Veritas NetBackup」の最新版(v8.1.2)を提供開始した。シンプルなWebインタフェースの追加、データベース(DB)管理者や開発者などへの管理権限委譲の実現、ビッグデータ基盤やオープンソース(OSS)DBなど新世代ワークロードへの対応拡充などにより、NetBackupが次なる段階へと進化する“第一歩”だとアピールしている。

 同日の発表会では最新版の新機能/機能拡充に加えて、NetBackupが統合データ保護製品として目指すこれからの方向性について説明がなされた。

NetBackupの新たなビジョン。バックアップ管理者だけでなく、仮想化担当者やDB担当者、開発者などの各種担当者にも管理権限を委譲、バックアップデータ活用もうながす

ベリタステクノロジーズ 常務執行役員 テクノロジーセールス&サービス本部の高井隆太氏

同 テクノロジーセールス&サービス本部 データ保護ソリュション シニアプリンパルスペシャリストSEの勝野雅巳氏

NetBackupの次なる方向性を示す新機能群を盛り込んだ“進化の第一歩”

 NetBackupは、エンタープライズデータセンターのあらゆるワークロードに対して網羅的/統合的なデータ保護機能を提供する、ベリタスの旗艦製品だ。前身となる製品から数えると30年以上の歴史があり、現在でも高い市場シェアを誇る製品である。

 そのNetBackupが今回、新版リリースを機に新たな方向性を明示している。同社 シニアプリンシパルスペシャリストSEの勝野雅巳氏は、この新版は「NetBackupの“進化の第一歩”」にあたるバージョンだと述べ、「シンプル」「次世代ワークロードへの対応強化」「ユーザーエクスペリエンスの大幅進化」「保護されたデータの活用」という4つのポイントを挙げて説明した。

 1つめは、専任バックアップ管理者だけでなく、個々のワークロード管理者や社内エンドユーザーにもセルフサービス型でバックアップ設定/リストア操作を開放するためのシンプル化である。具体的には、詳細なデータ保護設定ができるこれまでのバックアップ管理者向けインタフェース(Java UI)に加えて、新たにエンドユーザー向けのシンプルなWeb UIを追加した。

従来からの管理者向けJava UIに加えて、DB管理者や開発者など社内ユーザー向けのシンプルなWeb UIが追加された

 従来のJava UIはエキスパート向けできめ細かな設定ができ、バックアップ管理者には便利なものである反面、一般ユーザーがこれを使ってバックアップ/リストアの設定をするのは難しかった。そこで、ベリタスは今回、一般ユーザーでも簡単に使えるシンプルなWeb UIを追加した。このWeb UIはベリタスが実際にユーザーと議論を重ねながらデザインしたものだと、勝野氏は説明する。

 このWeb UIはバックアップ管理者があらかじめ、エンドユーザーの役割に基づいて操作内容、保護プラン(バックアップ間隔や世代管理の設定)などの機能制限をかけられるようになっている。各エンドユーザーのWeb UIには、自身の管理下にある仮想マシン/ワークロードと、管理者に許可されている操作や保護プランのみが表示される。この仕組みにより、管理者がガバナンスを効かせながら、エンドユーザーにバックアップ設定やリストア操作をセルフサービス型で利用させることができる。

 なお、このWeb UIはバックアップ管理者向けのダッシュボードも備えており、遠隔地からもバックアップジョブの実行状況やストレージ使用量、イベントログなどを監視することができる。

Web UIを使った仮想マシンのバックアップ設定例。ユーザーが管理する仮想マシンの一覧から対象を選択し、あらかじめ管理者が許可した保護プランから選ぶだけで設定が完了する

管理者向けWeb UIではNetBackup環境の稼働状況を示すダッシュボードを提供。iPadなどでリモートからも監視できるメリットがある

 2つめは、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)製品やOSS DB、ビッグデータ基盤など、近年のエンタープライズで採用が進む次世代ワークロードへの対応強化である。これまでのバージョンですでに「Nuatnix AHV」「MySQL/MariaDB」「PostgreSQL」「Hadoop」などのデータ保護に対応しており、今回は新たにマイクロソフト「Azure Stack」と「Apache HBase」にも対応を拡充した。

 次世代ワークロードへの対応においては、バックアップ処理効率化のため新たなフレームワーク「Parallel Streaming」を採用している。これはHadoopなどの分散データストアワークロードにおいて、複数のデータノードから直接、並列的にデータを取得することで、バックアップ処理を高速化する仕組みだ。

 またこのフレームワークでは、保護対象ノードにエージェントをインストールするのではなく、NetBackup側にワークロードに対応したプラグインをダウンロード/追加することで利用できる仕組みをとっている。プラグインはNetBackupのバージョンに依存しないため、顧客企業はNetBackup環境をアップグレードすることなく新たなワークロードへの対応が可能で、新タイプのワークロードへの対応がより迅速にできるとしている。勝野氏は、今後MongoDBプラグインもリリース予定だと明かした。

NetBackup「Parallel Streaming」の概念図。Hadoopなどの分散データストア環境からのバックアップを効率化する。エージェントレス/プラグイン方式を採用し、NetBackupのバージョンアップなしで新たなワークロードに対応する

 パブリッククラウド(AWS、Azure、GCP)のスナップショットも、NetBackupのコンソールで統合管理できるようになっている。従来はクラウド上のインスタンスにエージェントをインストールする必要があったが、新版ではインスタンスを自動検出して保護対象にできる。

 ユーザーエクスペリエンスの進化については、前述したエンドユーザー向けセルフサービス/Web UIもそのひとつだが、バックアップ管理者向けにも新サービス「Veritas Smart Meter」が追加されている。これは複数拠点のNetBackup環境から稼働状況のテレメトリデータを収集、可視化するWebダッシュボードで、Webサービスとしてベリタスが提供する。これを利用することで、グローバル展開する企業でも容易に全体状況を把握し、NetBackupの容量ベースライセンスやストレージに対する投資計画に役立てられるとしている。

 そのほか、「ServiceNow」などのITサービス管理製品とのAPI連携による、障害チケットの自動発行やオペレーターへの通知、インシデント管理も可能になっていると、勝野氏は説明した。ベリタスでは将来的に、API連携を通じた障害の自動回復、パッチ適用の自動化なども視野に入れて開発を進めているという。

「Veritas Smart Meter」はバックアップ管理者向けWebサービス。複数拠点にあるNetBackup環境の稼働状況を統合/可視化する

 最後は、バックアップデータを「保護」だけでなく多用途に活用できるようにするというものだ。今回の新版では、VMware仮想マシンのバックアップデータを仮想的にコピーし、安全に活用できる機能が追加されている。

 NetBackupアプライアンス環境では、エンドユーザー自身が管理するVMwareのバックアップイメージと前述したWeb UIを使って、仮想マシンのリストアだけでなく、複製した仮想マシンの起動、ゲストOS内に含まれるフォルダ/ファイルのアクセス/リストア/ダウンロードといった操作もセルフサービス型でできるようになっている。

 こうした機能を利用して、たとえば開発/テスト環境を簡易的に立ち上げたり、過去のある時点でのコンプライアンスチェックをしたりといったことが、それぞれの担当者自身の操作でできるようになると勝野氏は説明した。なお今後、「Oracle DB」や「SQL Server」のDBインスタンスも同様に、バックアップデータから仮想コピーのインスタンスを活用可能にする計画だという。

仮想マシンのバックアップイメージを保護しつつ、エンドユーザーがセルフサービスでコピー環境を活用できるようにする

今後はSaaSデータ保護にも拡大、機械学習による「自動化」もキーワード

 なお勝野氏は、今後のNetBackupでは「Office 365」や「Box」といったSaaSワークロードも視野に入れていると語った。将来的にはこうしたSaaSのデータ保護も、NetBackupで統合管理可能にしていく方針。

 さらに今後のNetBackupでは、自動最適化、自動構成、自動修復など「自動化」を通じたユーザーエクスペリエンスの向上も図っていく方針だという。その一例として勝野氏は、機械学習技術を適用してバックアップウィンドウ(バックアップ処理の実行タイミング)を自動的に分散させ、バックアップ処理の失敗率を低減させる(サービスレベルを一定以上に維持する)という機能を紹介した。

機械学習を適用してバックアップウィンドウを自動的に分散させることで、処理の集中を防ぎ、SLAを改善させる技術も開発中だと紹介した

 ベリタステクノロジーズ 常務執行役員の高井隆太氏は、顧客企業におけるマルチクラウドの採用や非構造化データの増大といった状況変化が起きているなかでも、「ベリタスでは『データが最重要である』という観点から、引き続きいかにこれを保護し、アクセス可能にし、コンプライアンスを維持していくかを追及している」と、同社の“360度データ管理”ビジョンを説明。今回のNetBackupを含め、あらゆる製品において引き続き最新のワークロードや環境変化に追随していく方針を示した。なお、近日中にハイパーコンバージド型のセカンダリストレージ製品も発表したいと述べている。

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