Watson Jr.氏の指揮のもと
IBMがコンピュータービジネスに参入
ただ、このままではIBMの事業はいずれ頭打ちになるだろうと思われた、というのは後知恵ではあるのだが、それを着実に読んでいたのがWatson Sr.氏の長男であるWatson Jr.氏である。
Watson Jr.氏は大学卒業後に一旦IBMのセールスマンになるものの、すぐに陸軍航空隊に入り、第二次世界大戦をパイロットとして過ごすものの、戦争終了後に再びIBMに戻った。
そのWatson Jr.氏は1952年にまず社長になるのだが、彼は会社の方向性を急速にコンピューターに向けて舵を切る。まず1952年4月、同社は初の商用科学技術向けコンピューターとしてIBM 701を発表する。
中央の机の上に載っているのがオペレーターコンソール、その左脇のものがIBM 701本体。ちなみに当時の名称はAnalytical Control Unitだった
画像の出典は、IBM Archives
これに先立ちRemington Randは1950年にUNIVAC 1101(*2)という科学技術計算向けコンピューターの出荷を開始しており、これにコアメモリーの搭載と浮動小数点演算のサポートを追加したものがUNIVAC 1103Aとして1952年に発表されていた。IBM 701はこのUNIVAC 1103Aを競合製品として位置づけていた。
(*2) もともとこれを開発・製造していたのはEngineering Research Associatesという会社で、元はERA 1101という型番であったが、同社もまた1952年にRemington Randに買収され、これにあわせてERA 1101はUNIVAC 1101に改称された。
ちなみに1952年4月に発表はされたものの、実際の出荷は1953年に入ってからとなっている。また1号機はまずIBMの本社そばのビルの1階に設置されたが、これは1952年までSSECが設置されていた場所で、SSECが撤去された後にこのIBM 701が設置された形である。
このIBM 701、月間リース料は1万2000~1万8000ドルとIBMは説明しているが、別の資料では週に40時間までは月間1.5万ドル、これを超えた分は40時間まで月間2万ドルという数字がある。
いずれにせよ結構な価格だったわけだが、当初5台程度の注文を予定していたのが、実際は18台の注文が入った、とFAQでは述べられている。
もっともその18台の注文の中にはIBM自身も含まれているので、実際には17顧客からの注文があった、とすべきか。なんにせよ、これでIBMはコンピュータービジネスに参入した。
ちなみに同年、IBMは西海岸初の研究開発拠点としてSan Jose Laboratoryを開設する。ここがIBM 350 RAMACを開発しており、若き日のAlan Shugart氏が勤務していた、という話は連載369回で触れたとおりだ。
なお、Watson Sr.氏はこの後もCEOを務めるが、会社の方針は実質的にWatson Jr.氏が決めていたようだ。そのWatson Sr.氏は1956年5月8日にCEOを引退、同年6月19日に亡くなっている。CEO職はそのままWatson Jr.氏が引き継ぐことになった。(次回へ続く)

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