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日テレの視聴率トップ独走を支える「えげつない」番組づくり

2018年08月24日 06時00分更新

文● 福田晃広【清談社】(ダイヤモンド・オンライン

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2014年から2017年まで、4年連続「視聴率3冠」に輝き、絶好調の日本テレビ。特にバラエティ番組は軒並み高視聴率だが、日本テレビはなぜ、それまで頂点にいたフジテレビを追い抜くことができたのか、その強さの秘密やこれからの課題について、著書に『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)がある戸部田誠氏に聞いた。(清談社 福田晃広)

ライバル・フジを徹底研究して
「フジがやっていないこと」をやった

民放キー局の中で最強の日本テレビ
『行列のできる法律相談所』は、島田紳介引退後も唯一続いている番組。企画の構成さえしっかりしていれば、大御所タレントに頼らずとも視聴率をキープできることを世に示した(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「テレビなんてもうオワコンだ」とささやかれる時代に、高視聴率番組を量産し続けている日本テレビ。他局との違いについて、戸部田氏は以下のように指摘する。

「日本テレビの方針として感じられるのは、視聴習慣を徹底的に意識し、番組づくりを行なっている点です。だから、番組開始直後は視聴率が悪くても、簡単にテコ入れすることなく辛抱する。数字が上がればなるべく番組上のフォーマットを大きく変えないのが日テレの強さでしょう。たとえば、1978年から放送が開始され、現在まで続いている『24時間テレビ』なども、構成力がしっかりしているため、毎年ある程度の視聴率をキープしていますよね」(戸部田氏、以下同)

 出演者の知名度やキャラクターなどに頼るわけではなく、あくまでも企画がメインだという考え方が、日本テレビの制作局には一貫しているという。その意識改革は、フジテレビが絶対王者だった1992~93年頃にまでさかのぼる。

「1993年4月、日本テレビは大幅な番組改編を行いました。その際、フジテレビと日本テレビの番組表を見比べ、それぞれ何が放送されていたのかはもちろん、1分1秒まで視聴率の動き、どんなタイプのCMが流れていたか、テロップの出し方、番組の終わり方まで徹底的に研究・分析しました。日本テレビが素晴らしいのは、そこで王者・フジテレビのまねをするのではなく、むしろフジがやっていないことをやろうとした。この方針は今でも引き継がれています」

 このプロジェクトから生まれたのが、今では当たり前となった「またぎ編成」(00分スタートではなく、数分前倒しで番組が開始すること)や、番組枠内での他番組PR。他局との差別化を図る改革案が行われた結果、1993年、全日帯(6時~24時)の年間視聴率でフジテレビと同率首位になり、そのまま日本テレビの黄金時代へとつながっていった。

「ながら見」の視聴者にウケる
ワイプとテロップの多用

 今の日本テレビが好調な理由は、バラエティ番組によるところが大きい。特に日曜夕方の『笑点』から始まり、19時の『THE 鉄腕DASH』、20時の『世界の果てまでイッテQ!』、21時の『行列のできる法律相談所』という編成は、圧倒的な視聴率を誇る。

 戸部田氏によれば、その中で、もっとも日テレ的な番組といえるのが『行列のできる法律相談所』だという。

「これは元日テレの岩崎達也さんも指摘されていますが、島田紳介が引退しても、唯一続いているのが『行列のできる法律相談所』。つまり、大御所タレントに頼らずとも、企画の構成がしっかりしていれば、以前と変わらずに視聴率を取れることを証明したといえるでしょう」

 また、「基本的に日本テレビの番組は苦手」と語る戸部田氏だが、その理由を以下のように説明する。

「以前、対談させていただいた作曲家のヒャダインさんが『日テレは大衆の好みに合わせて番組づくりをしている』とおっしゃっていたのですが、なるほどと思いましたね。確かに、多くの人にわかりやすくすることを念頭に置いているため、ワイプやテロップ、ナレーションなどがきめ細かい。しかし、僕らのように前のめりになってテレビを見ている人は、それを過剰に感じるときもあります。ただ、何か作業をしながら見る人にとっては、とても親切で見やすいのではないでしょうか」

 近年のバラエティ番組の特徴として、ワイプやテロップなどの演出が挙げられ、時には批判の対象にもなる。しかし、「特にテロップはなくなったら、見づらく感じるでしょう」と、戸部田氏は語る。

「たとえば、『エンタの神様』はお笑い芸人のネタにまで、テロップを使いました。当初は芸人も嫌がったそうですが、オチが分かりやすくなったことで、圧倒的に見られるようになったのも結果として明らか。なので、テロップは視聴率に大きく貢献しているといえるのです」

「高視聴率番組は改編しない」が
裏目に出る可能性も

「4年連続視聴率3冠」に輝き、最強に見える日本テレビだが、実は数字が徐々に落ちているのも事実だ。

 特に、これまで強かった朝の番組の人気にも陰りが見え始め、今年の9月で「PON!」が打ち切りとなることが発表されている。戸部田氏はこの状況を以下のように指摘する。

「ここ数年間は、年間視聴率に大きなアドバンテージが出る朝、昼の番組が強かったのですが、それが今や日本テレビのウィークポイントになっています。朝の番組は『視聴習慣』、つまり、いつもこれを見るという習慣が出来上がっている人が多いため、『PON!』の後継番組がいきなり高視聴率を取るのは難しいといわれています。なので、ここは不安材料でしょう」

 では、他局が日本テレビの脅威となるのか。戸部田氏は「ここ2~3年は、まだ日本テレビがトップを維持するとは思う」と前置きした上で、こう分析する。

「もちろん長年、視聴率がいい番組でもマンネリ化は避けられません。なので、いつかは改革する必要は出てくるとは思います。ただ、現状では番組の調子がいいだけに、新しいことにチャレンジする必然性がなく、作り手側の世代交代が進んでいないように見える。これが後に足を引っ張る可能性はあるかもしれません」

 今年4月、日本テレビの改編率は、全日帯(午前6時~深夜24時)3.1%、ゴールデン帯(午後7~10時)0.5%、プライム帯(午後7~11時)9.3%と、いずれも1桁。これは、極めて異例のことである。

「変えない」という、逆の意味で挑戦的な日本テレビの決断が吉と出るのか、凶と出るのか。いずれにしても、今後の課題は番組のマンネリ化と、制作陣の世代交代が鍵になるのかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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