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コメ輸出10万トン政府目標の無謀、達成度は4割未満か

2018年08月21日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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コメ輸出10万トン目標
Photo:PIXTA

 齋藤健農相が看板政策としてぶち上げたコメ輸出目標が掛け声倒れに終わる可能性が極めて高くなっている。

 齋藤農相は就任直後の2017年9月、コメ輸出を19年に4倍の10万トンにすると宣言。企業に輸出目標を示させ、60社合計13万トン超の輸出拡大計画を作った。

 だが、この計画は無謀だったと言わざるを得ない。今年1~6月の輸出量は前年同期比12%増だったが、この伸び率が続いても19年の輸出量は3.6万トンで、目標達成度は4割未満にとどまる。

企業は当初から懐疑的

 実は、政府の計画に参加した企業は当初からその実現性に懐疑的だった。米卸幹部は「輸出拡大の前提はコメに価格競争力があることだ。現状の高い米価で目標を実現できる社はほぼない」と明かす。

 各社の実績からも計画が画餅であることは明白だ。米卸大手の神明、木徳神糧、JA全農はそれぞれ3万トンのコメ輸出目標を“割り当て”られたが、16年実績はいずれも目標の1割に満たない。つまり目標達成には、長期低迷していた輸出事業を3年で10倍以上にする必要があるのだ。

 輸出拡大の頼みの綱とされるのが、検疫条件が緩和された中国市場だ。しかし、現実にはそれほど期待できない。中国への輸出に力を入れる神明ですら、対中輸出を増やせたとしても年間100トンから20年に2000トンと見込む程度だ。同社関係者は「輸出は一筋縄ではいかない。3万トンはあくまで中長期の目標だ」と話す。

 全農は政府計画に乗って輸出10倍の目標にコミットする一方、全農を含むJAグループの目標は7倍にとどめるなど二枚舌と言われても仕方ない状態になっている。

 このように大幅な目標未達に終わりそうなコメ輸出だが、日本の農業にとって重要なことは間違いない。国内のコメ需要(年間約740万トン)は毎年8万トンずつ減っており、輸出に活路を見いださなければ農業はじり貧になるからだ。

 輸出拡大の参考になるのが農機メーカー、クボタのコメの販売だ。従来、日本産米は外国の高級スーパーなどで売られることが多かったが、クボタは丼物の外食チェーンなどに手頃な価格のコメを輸出している。さらに輸出を増やすため傘下の農業法人で生産費削減に取り組む。高所得者層だけでなく、中の上(ハイミドル層)も狙わなければ裾野は広がらない。

 政府計画の参加企業の多くが丼勘定の目標を出す中で、クボタは現実的かつ具体的な目標数量を示す異色の存在である(下表参照)。

 コメ輸出をめぐっては、農水省が補助金で家畜の飼料用米を増やしたため主食用米が高値になり、価格競争力が付かないという根本的な問題がある。政府がアクセルとブレーキを同時に踏むのをやめなければ企業が輸出に本気になることはない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 千本木啓文)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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