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長崎県の地銀統合大詰めも、寡占の弊害解消策に疑問符

2018年08月21日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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ふくおかフィナンシャルグループ
債権譲渡の実効性を公取委としてどう確保させるのか、今後の判断に注目が集まる Photo by Takahisa Suzuki

 長崎県の地方銀行、十八銀行と親和銀行の統合計画で、独占禁止法上の審査を担う公正取引委員会との協議が、大詰めを迎えている。

 最大の焦点は、親和銀を傘下に収めるふくおかフィナンシャルグループ(FG)と十八銀が、債権譲渡をどこまで実効的に進められるかだ。

 統合をめぐっては、県内トップバンクの十八銀と2番手につける親和銀の合併が実現すると、中小企業向け貸し出しの地域シェアが7割超にも上ることから、寡占の弊害がかねて指摘されてきた。

 そのため、公取委は協議の中で問題解消措置として他行への貸出債権の譲渡を迫り、ふくおかFGと十八銀が5月以降、取引企業の全件調査に乗り出している。併せて、譲渡先の銀行の承諾も取り付けることが求められる中、受け手の銀行からは「棚ぼた」で取引先を獲得できることもあって、当初は歓迎する声が多かった。

 譲渡に向けた交渉は着実に進んでいるように見えたが、ここにきて受け手の銀行から多く聞こえてくるのは、不安の声だ。その最たる原因は「元サヤ」リスクにある。

 債権を譲渡されても、完済後の新規融資は元の十八銀や親和銀に戻ってしまうということになれば、骨折り損にしかならない。

 債権譲渡だけでなく、取引先企業の従業員の給与振込口座も自行に切り替えてもらうなど、メーンバンクとしての座をしっかり明け渡してもらうことで、元サヤリスクを極力抑えたいというのが受け手の銀行の本音だろう。

公取委の説明責任

 債権譲渡を迫った公取委としても、実効性を保つために元の状態にすぐに戻ってしまわないよう、仕組みづくりや働き掛けが当然ながら必要だ。

 にもかかわらず、公取委からは「自由競争を妨げるような足かせを課すことは、われわれにはできない」という声が聞こえてくる。

 取引先企業が元のサヤに収まってしまったところで、それは自由競争の結果であり、公取委としてあずかり知るところではないと言いたいわけだ。そうした中途半端な姿勢も、受け手の銀行が抱える不安をあおっている。

「審査に通すためにカタチだけの債権譲渡をし、一時的にシェアを低下させただけでしたということを公取委は許してしまうことになるが、そんなことをして一体何の意味があるのか」──。

 地域金融機関の再編を後押しする金融庁はこれまで、公取委と対決姿勢を強める中で、そう言って債権譲渡の手法を批判してきた。

 ふくおかFGと十八銀が、目の前で譲渡可能とする債権を日に日に積み上げて審査の進展を迫る中で、もし統合を承認することになれば、債権譲渡の実効性への疑問に対し、公取委は正面から答える必要が出てくることになる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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