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ふるさと納税「反抗自治体」を公表、総務省vs自治体の神経戦

2018年07月31日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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ふるさと納税の“生みの親”、菅義偉官房長官
ふるさと納税の“生みの親”、菅義偉官房長官(右)の今後の動向にも注目が集まる Photo:JIJI

 国の方針に従おうとせず、見直す意向もないのはこの自治体です──。

 総務省は7月、いまだ返礼品競争が横行しているふるさと納税をめぐって、(1)返礼割合が3割超、(2)地場産品ではない返礼品を送付している、(3)今年8月までに見直す意向がない──などとして、大阪府泉佐野市や佐賀県みやき町など12の自治体名を公表した。

 昨年4月以降、総務省が自治体への通知や記者会見を通じて、高額な返礼品などの自粛を幾度となく要請しているにもかかわらず、反抗する自治体に対してとうとうしびれを切らした格好だ。

 名指しされた12の自治体は、さぞ戦々恐々としているかと思いきや、各担当者から懸念として聞こえてくるのは、意外にも自民党の総裁選の動向と東京都目黒区の取り組みについてだった。

 一体どういうことか。一つ目の自民党の総裁選について自治体が最も気をもんでいるのは、総裁選を経て政権が代わることによって、菅義偉官房長官が閣外に放り出されることだ。

 菅氏はふるさと納税の“生みの親”であり、制度拡充に際して反対論を唱えた総務省の局長を退任に追い込むほど、思い入れが強い。過熱する返礼品競争を時に黙認するような姿勢を取り、自治体の強力な後ろ盾になっているわけだ。

 総務省は、ふるさと納税に関わる普通交付税措置や特別交付税を使って、名指しした自治体を実質的に締め上げることは制度上可能だが、菅氏が閣僚として目を光らせている間は、手を出しにくいことを自治体はよく理解している。

寄付金に都心回帰の恐れ

 二つ目の目黒区の取り組みとは、8月からふるさと納税の返礼品として、人気音楽グループ「EXILE」のTシャツやパーカなど関連グッズを用意すると発表したことだ。

 目黒区内に事務所やスタジオを構えており、紛れもない地場産品だと位置付けているわけだが、これは返礼品競争が過熱する中で、一番危惧していた事態ともいえる。

 財政力の高い都市部の自治体が、企業の本社や事業所があることを理由に豊富な資金で魅力的な返礼品をかき集めれば、地方の自治体には当然ながら勝ち目はない。

 目黒区以外にも、これまでふるさと納税による税収減にじっと耐えてきた都市部の自治体が、次々に本格参入することになれば、地方にもっとお金(税源)を還流させるという趣旨で始まった制度が、逆回転しかねないわけだ。菅氏に引導を渡された局長が、反対論を唱える中で最も危惧していたのも、まさに都市部の自治体の反撃による寄付金の「都心回帰」だった。今後もし都心回帰の流れが加速したとき、名指しされた自治体が税収減で悲鳴を上げたところで、耳を傾けてくれる人たちは果たしているのだろうか。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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