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B787エンジントラブルに泣いたANA、GE・IHIには追い風の明暗

2018年07月24日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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エンジントラブルが重なるB787
「ロールス・ロイスは『問題が起こったらその都度、整備すればいい』というスタンス。確かにそれはそうなんだけど……」。ANA幹部は割り切れない気持ちを吐露する Photo:Boeing

「ここまで短期間にエンジントラブルが重なるとは。全日本空輸(ANA)にとっても予想外の事態だ」

 ANA幹部はため息をつくが、それも当然だ。ANAは今、国内線を飛ぶボーイング787(B787)型機で大量の欠航を出している。その数、7月上旬~8月で合計997便。冬ダイヤの予約制限も検討しており、この「隠れ欠航」を含めれば影響は軽く1000便を超えることになりそうだ。

 原因は英ロールス・ロイス(RR)製のエンジントラブルにある。ANAは国土交通省などから出された技術指示に基づいて点検や部品交換を進めているものの、B787は言わずと知れたグローバル商品だ。点検が必要となったエンジン数は全世界で約600台に上り、部品の供給が逼迫して欠航を出さざるを得なくなった。

 そもそも、航空機のエンジンはエアラインが選定するものだ。B787に搭載できるエンジンは米ゼネラル・エレクトリック(GE)製とRR製の2種類。主流は選定済みの機体で63.4%のシェアを握るGE製なのだが、ANAはRR製の方を選んだ。

 本来、ANAは「RRよりGEになじみがある」(冒頭の幹部)。だが、B787開発の後ろ盾となったローンチカスタマーのANAは、「RRに高い値引き率と充実したサポート体制、燃費の良さを提示されてRR製を選んだ」(別のANA幹部)。これが皮肉にも、GE製を選定し、今回欠航とは無縁の日本航空と命運を分けた形だ。

IHIは棚からぼた餅

 翻って、世界中のエアラインを巻き込む大トラブルは、GEやGE製エンジンに部品を供給するIHIにとっては、思わぬ追い風となりそうだ。

 航空機のエンジンにトラブルは付きものだ。事実、B787では過去にGE製のエンジンにも不具合が生じている。ただし、RR製のエンジンでは冒頭の幹部が語るように、トラブルが立て続けに起こっている。今回と同様、エンジン部品の耐久性に関する問題が2016年にも発生しているのだ。

 実は、16年のトラブルもいまだに部品交換を続けている状態で、事態の収束には至っていない。そこに新たに今回のトラブルが加わったとあり、RR製を選んだエアラインは疲弊し始めている。

 航空機はエンジンによって機体のマニュアルなどが決まるだけに、エアラインがすでに使用しているB787のエンジンをRR製からGE製に取り換えるのは現実的ではない。

 しかし、「これからB787を導入するエアラインなどにはGE製がより選ばれやすくなるはずだ」(エンジン業界関係者)。B787には、エンジン未選定の機体だけでまだ135機ある。同機におけるGEのシェアが高まり、勢力を強めることになりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子、柳澤里佳)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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