このページの本文へ

地方のホテル「3大訳あり物件」を完売させた訪日客需要の威力

2018年07月23日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
訪日外国人が訳ありリゾート再生の起爆剤に
買い手が付かなかった熱海の有名廃虚が中国マネーを受け入れ、初の五つ星ホテルの誕生に向けて準備が進む。訪日外国人が訳ありリゾート再生の起爆剤に Photo:iStock/gettyimages、Ryosuke Shimizu

今月公表された2018年の路線価。東京.銀座が2年連続でバブル期を超えるなど都市部で上昇が続く中、明暗が分かれたのが地方だ。29県が前年比で下落する一方、訪日外国人の人気エリアを中心に、局所的に地価が上がる二極化が進む。長年塩漬けになっていた“訳あり物件”にも買い手が現れている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳、宮原啓彰)

「とうとうホテル業界の“三大訳あり物件”まで完売した」──。

 今月、2018年(1月1日時点)の路線価が公表された。全国平均は前年比0.7%増と3年連続で上昇。平均路線価が上昇した都道府県は、前年の13から18に増えるなど上昇トレンドにある。

 そのけん引役はもちろん、大規模再開発が続く首都圏や関西、愛知といった大都市圏。一方で、地方では北陸3県や四国4県が総じて下落するなど、相変わらず苦戦を強いられている所も多い。

 「訪日外国人客を呼び込める場所か否かが、地方の優勝劣敗を大きく左右している」

 冒頭のせりふと併せ、ある不動産関係者はそう指摘する。地方でもインバウンド需要を当て込める場所では、地価が上昇傾向にあるからだ。さらに言えば、「同じ県内であっても場所によって大きな格差が生じている」(近畿地方の自治体担当者)という。

外国人富裕層狙いで
熱海の有名廃虚が五つ星ホテルに?

 その象徴となっているのが、宿泊・観光業界で“訳あり”として有名だったホテルが、相次いで外国資本によって買われたことだ。

 筆頭は、「お宮の松」前という熱海観光の一等地にありながら、巨大廃虚として有名だったつるやホテル跡地(静岡県熱海市)だ。

 大型商業ビルとして開発されていたが、開発会社の破綻によりビル完成間近で計画は白紙に。約6200平方メートルの敷地に地上10階建ての大型ビルが、バリケードで囲まれたまま10年間放置されてきた。

 ところが、今年3月末、中国系投資会社の出資によりホテルに造り替えることが判明し、地元行政を含めた関係者の度肝を抜いた。

 総工費100億円ともいわれるこのホテルは、全室スイートルームで、熱海初の五つ星リゾートを目指すという。最高級路線に狙いを定めた理由は、熱海が東京から1時間強で行けるお手軽な観光地として中国人をはじめとする訪日客の人気を集め、かつてのにぎわいを取り戻しつつあるからだ。

 実際、路線価を見ても静岡県の平均は前年比0.7%減と苦しむ中、熱海市は市内の最高路線価の地点、熱海駅前平和通りで同7.8%の上昇となった。「ホテルの建設で中心部の地価はさらに上がるはず」と、地元不動産関係者は早くも皮算用を始める。

 一方、訳あり物件の“西の横綱”として業界関係者から注目されていたのが、滋賀県大津市の琵琶湖湖畔にあるロイヤルオークホテルスパ&ガーデンズだ。

 美しい庭園やチャペル、七つのレストランを持つ有名ホテルだったが、外国人客の集客ノウハウは乏しかったもよう。同族経営に限界を感じたオーナーが今年1月、シンガポール系ファンドに売却した。売却額は非公開だが、業界関係者によると「数十億円は下らないだろう」という。

 滋賀県の平均路線価は前年比0.2%増、県内最高路線価は大津駅前通りで同1.9%増となる中、ロイヤルオークホテルスパ&ガーデンズの最寄り駅となる瀬田駅前は、同7.6%増とひときわ上昇した。

 大津市の担当者は「大津駅周辺よりも、ホテルや商業施設が多い(同じ東海道本線の)瀬田駅や膳所駅周辺の路線価上昇が目立つ」と言う。瀬田駅は、訪日外国人客最大の観光地、京都まで電車で20分ほどの好立地。しかも、ホテル不足にあえぐ京都市内よりも安価で広い客室に宿泊でき、さらに琵琶湖リゾートも楽しめるというさまざまな利点が、海外ファンドのお眼鏡にかなったとみられている。

 残る訳あり物件は、昨年末に再生を果たした新潟県妙高市のロッテアライリゾートだ。

 ここはもともと、ソニー創業一族の資産管理会社と自治体の第三セクターが、約500億円をつぎ込み開発した大型スキーリゾートで、1993年に開業。しかし、バブル崩壊後の不況とスキーブームの終焉で赤字が続き、06年に11億円以上の負債を抱えて破綻した。

 そして、10年近く放置された後に公売により18億円で落札したのが、インバウンド客を当て込む韓国ロッテホテルだった。大型改装を行い、パウダースノーの広大なゲレンデに天然温泉大浴場、ヨーロピアンスタイルのおしゃれな客室棟が特徴で、訪日外国人客向けのメディアにも早速取り上げられるほど話題になっている。

 新潟県の平均路線価は前年比1.2%下落しているが、ロッテアライリゾートへの最寄り新幹線駅、上越妙高駅前は、ロッテ同様、インバウンド需要を狙ったホテル建設が相次ぎ、同5.2%増と「上越市内で数少ない上昇地点の一つ」(同市担当者)となった。

 人口減少に伴う過疎化が加速する中、訪日外国人客の人気が地価を左右する時代が続きそうだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ