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中国人留学生が激変、「金より知識・スキル」を求める学生たち

2018年07月20日 06時00分更新

文● 東方新報(ダイヤモンド・オンライン

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中国人留学生が大きく変わった
日本中国留学生交流会が主催した2017年学部合格生歓迎会。前から2列目、左から7番目が陳亮会長 ©東方新報

日本学生支援機構の統計データによると、2017年5月までで、日本には約24万人の外国人留学生が住んでおり、そのうち中国人留学生が約10万人に上り、41.2%を占めている。以前の留学生たちとどこが違うのか。中国語と日本語、2ヵ国語の新聞を発行している『東方新報』の記事から、その実態を紹介しよう。(取材・文/『東方新報』取材班)

以前はお金を稼ぐため
今は知識や技術を身につけるため

 ここ数年、中国から日本に留学する学生が急増している。以前の留学生と比べて、どんな変化があるのだろうか。

 一般社団法人日本中国留学生交流会の陳亮会長は、「昔と比べて個性的になった。これまでの中国人留学生は、日本に着くとまずはアルバイトを探したものだが、今の学生は仕事ではなく、“チャンス”を探しているようだ。単なる日本語留学では満足していない。最近知り合った『90後』(1990~2000年生まれ)の中国人留学生について最も印象に残った点だ」と言う。

 自身も山形大学に留学、卒業した陳会長はこう説明する。

「これまで日本に来ていた留学生は、具体的に日本で何かやりたいことがあるわけではなかった。外国に行くのは、ある意味生きていくための道だった。日本に来ればすぐに仕事が見つかり、金を稼ぐことができたからだ。しかし、今の若い学生たちは違う。日本でより高度な知識や技術を身につけるために来る学生が多い」(陳会長)。

「例えば、交流会の副会長の1人は、日本に来る目標がとても明確で、大学の法学部を受験し、行政書士になるという夢があった。日本に投資する中国企業がどんどん増えてきていることから、行政書士の需要が増えると読んでいたのだ。その後、彼は明治学院大学の法学部に合格した。日本では、資格さえ取得できれば行政書士事務所を開設することができる。国籍による制限もなかった。このように、今の中国人留学生は目標がはっきりしているため、大学の4年間は学業にきちんと打ち込んでいる」と指摘する。

「90後」の留学生の特徴は
個性がはっきりしていること

 東京大学大学院を修了し、情報理工学博士単位を取得した魏大比さんは、日本で中国人留学生向けの予備校「名校志向塾」を設立した。塾の講師兼教育機関の経営者である魏さんから見た「90後」の中国人留学生の最大の特徴は、「個性がはっきりしていること」だという。

 魏さんは、「ここ数年、多くの若い学生は、日本文化を学びたいと思っている。芸術や美術、舞台演出、アニメなど分野は広くて個性豊か、われわれ世代が追求していたものとはまるで違う。『90後』の学生の多くは、いい大学に行くことが必ずしも将来のためになるわけではないと考えており、人生の追求や理想の実現などが彼らの最終目標となっている」と語る。

名校志向塾の魏大比さん
名校志向塾の魏大比さん ©東方新報

日本への留学生の4割を占め
中国人も海外留学が大衆化

 現在、中国でも海外留学はすでに大衆化している。それは海外留学人数からも明らかで、日本学生支援機構の統計データによると、2017年5月までで、日本には約24万人の外国人留学生が住んでおり、そのうち中国人留学生が41.2%を占め、約10万人に上った。しかも、年齢層が年々低下している。

 改革開放以降、中国の経済や社会は大きな変化を迎えた。巨大な変化の波は、留学生にも大きな影響を及ぼした。そのため、「90後」や「00後」(2000年以降に生まれた若者)の留学目的は、以前の留学生たちと大きく異なる。

 昨年3月10日、2017年度の東京大学の合格発表が行われ、趙鼎涵さんはずば抜けた成績で合格した。そのとき趙さんは、うれしくて涙が出たという。

 2015年末、当時、高校3年生だった趙さんは日本への留学を決め、日本の大学の資料を集めた。興味があった国際関係の学部を中心に探し、迷わず国際関係と政治学の分野で世界トップレベルの東京大学を受験することに決めた。そして2016年4月に来日した。

 日本語学校での準備を経て、趙さんは6月の日本留学試験(EJU)で738点という高得点を獲得。そして7月以降は、全力で東京大学の入試に向けての準備を進めた。いわゆる筆記試験だけではなく、小論文や面接の練習を繰り返し、入試結果が出るまでの4ヵ月あまりは必死に頑張った。

 その間、大きな迷いと不安にのみ込まれそうになった。趙さんは、「4ヵ月あまりの間は苦しかったが、中国にいる両親にはとても感謝している。毎日、インターネット電話やテレビ電話を通じて励まし、寄り添ってくれた。先生たちにも感謝している。試験勉強だけでなく、心理面や精神面でもサポートしてくれたからだ。もし1人だったら、ここまでこれなかったと思う」と振り返る。

生き残る道を探す留学から
豊富な経験を積む留学へ

 趙添さんは2013年に来日し、日本電子専門学校に留学した、典型的な「理系男子」だ。

「僕の学校は、日本での就職率が95%以上。だから、就職はそんなに心配していないが、日本の会社になじむため、アルバイトを通して日本社会と接点を持つことが重要だと思っている」と、趙添さんは堂々とした口調で語った。

中国人留学生の趙添さん
趙添さん ©東方新報

 趙添さんは、留学生として自立するためには、ある程度の経験が必要だし、金銭面でも実家に頼ってばかりではいけないと考えている。そのため、アルバイトをして生活費のすべてをまかない、学費の一部も自分で払って実家の負担を極力減らしている。アルバイトは、日本の会社に入っても困らないよう、日本社会へ適応する練習にもなり「一石二鳥だ」と語る。

 そんな趙添さんは、将来の目標について「外国人の少ない今の学校でしっかり勉強して、自分の能力を引き上げていきたい。今年は就職活動のために基礎をしっかり学んで、日本の大手IT企業に就職したい」と期待に胸を膨らませている。

 汪正亮さんは、日本に来て3年がたつ。東京の日本語学校の留学生として来た汪さんは、それから1年もたたずに自分の会社を設立、「正亮貿易JAPAN」の代表取締役となった。

 なぜ卒業を待たず、会社を立ち上げたのかという問いに汪さんは、「実は、日本に来る前に中国の大学は卒業している。もともとは大学院に行こうと考えていたが、自分で会社を立ち上げるチャンスもあると知って、チャレンジしたいと思った。日本市場は大きい。特にここ数年は、代理で商品を買い付けたり、観光の分野でもチャンスが増えたりしている。だから学校を辞めて、思い切って起業したんだ」と答える。

中国人留学生の汪正亮さん
汪正亮さん。経営する会社の前で ©東方新報

 池袋に本社を構えた汪さんの貿易会社は、この2年ちょっとで徐々に大きくなっている。現在は、代理買い付け業のほかに、プチ整形や富裕層を主要顧客とする旅行代理店などの分野にも進出している。

 汪さんは、「中国人の日本市場に対するニーズは大きい。日本製品にばかり関心があるのではなく、もっと深く日本を理解したいという旅行者が増えてきている。しかも彼らはみな社会地位のある人たちだ。旅行一つ取っても、必ず顧客それぞれのニーズに適した、最も満足してもらえるサービスを提供しなければならない」と語る。

 そんな汪さんは、「中国にいる人にもっと僕を知ってもらい、中国人にとっての “窓口”の役割を果たす、日本の『大使』のような人になりたい」と話す。

 80年代生まれで塾講師の魏さんは、日本に留学に来る中国の若者に熱い期待を抱いている。「たとえ勉強ができなくても、日本に来たからには心機一転して頑張ってほしい」と締めくくった。

※『東方新報』は、1995年に日本で創刊された中国語・日本語の2ヵ国語新聞です。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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