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ビジネススーツにも「定額制」、AOKIが見つけた30・40代のニーズ

2018年07月18日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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ビジネスウェアの定額レンタルサービス「suitsbox」を開始したAOKIホールディングス
Photo:DOL

 スーツも“シェア”の時代が来たようだ。

 紳士服大手のAOKIホールディングス(HD)は、今年4月末に、ビジネスウェアの定額レンタルサービス「suitsbox」(スーツボックス)を開始した。suitsboxは月額2万4800円・1万5800円・7800円の3コースで、2万4800円のコースではスーツ3セット、シャツ5枚、ネクタイ3本が毎月送られてくる仕組みだ。専門スタイリストがコーディネートしており、好みに合わせた商品が、裾丈などサイズの調整がされた状態で届く。クールビズやパーティースーツへの対応も可能だ。

 suitsboxはオープンから2ヵ月で、すでに1000会員(無料会員を含む)に達したとみられる。suitsbox事業責任者の永沼大輔氏は「2020年に有料会員1万会員という目標でスタートしたが、来年からはPRも行い、1年前倒しを目指す」と意気込む。

 AOKIが2017年に新規事業としてサブスクリプション(定額利用)サービスである「suitsbox」のプロジェクトを開始したのは、「20・30代の客が店に来ない」という危機感が背景にあった。ただプロジェクト開始時点では、既存の店舗との競合を危惧する声も強かった。

 しかし調査の結果、意外な事実が判明する。「店舗に来るのは40・50代で、戸建てに住み、車でやってくる男性客。そういう人は収納にもゆとりがあり、所有欲も高い。一方、『suitsbox』の顧客は、30・40代中心で、都心に住み、収納スペースが狭い、店舗とはまったく別の客層だった」(永沼氏)。

 実は、競合はまったく別のところにあった。「いわゆる“吊るし”のスーツではなく、“格安オーダーメード”の店で購入していた人が『suitsbox』に鞍替えしていた」(永沼氏)。安く着回すというニーズではなく、「他人とかぶらない」「購入するにはややためらいがある(レンタルなら許容できる)個性的な色柄」を求めている客が多かったのだ。

 折しも、アパレル通販サイト大手のスタートトゥデイがプライベートブランド「ZOZO」でビジネススーツに参入して話題になっており、「自分に合わせたパーソナライズされた商品が欲しい」というニーズは高まっている。

 約15万人の会員を持つ女性向け定額レンタルサービス・エアークローゼットの前川祐介副社長は、「ECによって店舗に行く時間は減らせたが、ECサイトでは服が多すぎて、選ぶのに時間がかかる。この時間の短縮に人は価値を感じるようになった」と、昨今のパーソナライズのニーズの高まりを指摘する。

 AOKIが始めたサブスクリプションサービスには、競合他社も注目している。

 紳士服大手の青山商事は、2年前からモーニングやタキシードのレンタル事業を始めており、今年3月期で約2億円の売り上げ実績を上げている。今秋にはメンズのパーティースーツやお受験用のレディーススーツもアイテムとして投入予定だ。「AOKIの様子を見てサブスクリプションサービスの参入もあるのでは」と関係者は話す。

 7月にはレナウンもスーツのレンタル事業への参入を発表。スーツ2着を月4800円(交換は6ヵ月に1回)で借りられるサービスだ。

 このようなシェアリングサービスを物流面で支えているのが寺田倉庫だ。同社はエアークローゼットと「suitsbox」の物流コンサルを手がけており、そのノウハウを他アイテムにも生かす算段だ。同様のシェアリング機能を持つクラウド物流プラットフォーム「minikura+」を8月にリリース予定で、「すでに大手企業と話を進めている」(姫野良太プロダクトマネージャー)。

 シュリンクするアパレル業界の中でも紳士服業界は状況がさらに厳しく、異業種参入で活路を見出す状況が続いている。そんな中、スーツのサブスクリプションビジネスが、価格競争によるシェア争いに陥るのか、それとも若い世代の新たなニーズを喚起して市場を広げるのか。今後の紳士服市場の生き残りを占う試金石となりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 相馬留美


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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