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「リベンジポルノ」に怯える若者が急増する理由

2018年07月18日 06時00分更新

文● ジョージ山田[清談社](ダイヤモンド・オンライン

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「リベンジポルノ」という言葉がしきりに取り沙汰されるようになったのは2013年ごろ。「三鷹ストーカー殺人事件」が大きな注目を浴び、翌年には「リベンジポルノ被害防止法」が成立した。それでも今なおネットの波に漂う無数のポルノ画像のなかには、本人の意思と無関係に晒されているものも少なくない。リベンジポルノの最新事情を追った。(清談社 ジョージ山田)

スマホの普及によって
リベンジポルノが一気に広がった

スマホ普及でリベンジポルノが一気に増えました
リベンジポルノの加害者は、被害者が不幸になることが自分の幸せだと感じるような歪んだタイプが多い。別れた後、場合によっては数年も経ってから牙をむくケースもあるというから恐ろしい(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「3年ほど前に付き合った彼氏と、性交中に動画を撮ってしまったこと、すごく後悔しています…。当時は大好きな彼だったので『撮ろうよ』と言われて、拒めなかった。でも、別れてしまった今となっては、動画を自分の知らないところで晒されているんじゃないかと、思い出しては不安になります」

 Mさん(OL/26歳)は、卑猥な画像がネットにアップされているのを目にするたび、自分も投稿されていたらどうしよう…と不安を感じると話す。

 リベンジポルノは、別れを切り出されたことへの腹いせや復讐、復縁を迫るための脅迫材料として使われることが多い。一度、ネットにアップされれば削除が困難なこともあり、社会問題化している。

 リベンジポルノなんて自分とは関係ない、と感じている人も多いかもしれないが、「恋人の性的画像を撮影したがる者は、いまや特別な存在ではない」と、メディア学者でポルノ問題に詳しい渡辺真由子氏は言う。

「共有する時間を盛り上げたいという思いから、多くの若者がその場のノリで、ごく気軽に、恋人との親密な写真を撮影しています。もちろんガラケーの時代からリベンジポルノはありますが、スマホの登場が、よりそれを容易にしました。誰でも高画質な写真や動画を撮影でき、しかも簡単にネットに投稿できる時代になったことで、リベンジポルノに遭遇する確率は格段に上がったと言っていいでしょう」

 三鷹ストーカー殺人事件のように、恋人や好きだった人物の画像をリベンジポルノとして悪用する加害者心理は、愛情がゆがんだものだけに一層タチが悪い。そこに生じた加害者心理とはどのようなものなのか。

「リベンジポルノの加害者は、被害者が不幸になることで自分は幸福になれる、と考えていて、他者との比較に基づいてしか自分を評価できないタイプが多いです。例えば三鷹ストーカー殺人事件の加害者は、幼少期に両親が離婚し、母親からネグレクト(育児放棄)を受け、母の交際相手からは暴力を振るわれていた。このため自己感が十分に形成されず、愛情に飢え、他者に共感する能力も育たなかったと考えられます」

別れて数年も経ってから…
リベンジポルノ加害者の“豹変”

 裁判の判決でも、「被告の成育歴が、犯行に一定程度影響を与えていた」と認定された。リベンジポルノの加害者は、暴力で相手を支配する人間関係を当たり前と思っているということだろう。

 しかも、その暴力が厄介なのは、2人の関係が危機的状況になるまでは表面化せず、ある日突然(下手をすると別れてから数年後)、被害者を襲う点だろう。人気アナウンサーになってから数年後、コンドームを持ってほほ笑んでいる画像を流出させられた女子アナもいる。

渡辺氏の著書『リベンジポルノ~性を拡散される若者たち~』

 恋人から加害者への豹変――その暴力の脅威は、誰にでも降りかかる可能性がある。被害者にならないために、注意すべき点はあるだろうか。

「例えば、恋人から裸の画像や性行為中の撮影を求められたときには、関係性が壊れることを恐れず、きちんと『失礼だ』と怒っていい。どれだけ信頼している相手だとしても、性的な画像をひとたび渡せば悪用される可能性があります。そんなリスクの高い行為を要求するのは、『愛情』ではありません」

 体は、自分に所属する財産だ。財産の一部を渡せと迫ってくるに等しい行為は、それが恋人だったとしても許容すべきではないのだ。しかし、現代の若者にはそのリスクを甘くみている人も少なくないという。

「SNSには10代カップルのキス写真や、親密な2人の様子を映した動画が溢れています。性的関係を匂わせることが大人の証明のように錯覚し、自慢したいという心理もあるのかもしれません。しかし、数年後に後悔することになるのは自分なのです」

 リベンジポルノに遭遇しなくとも、自ら背伸びをして動画や写真をネット上に晒してしまう若者も少なくないのだ。SNS世代の若者たちは、画像を悪用するネット住民の無数の目に、気づいていないことも多い。自分だけではなく、子どものネットリテラシーにも注意を払っておく必要がある。

「家庭でも、日頃からネットリテラシーについて、お子さんに教える機会を持つことが大切です。みんながやっているからといって安全ではないことを何度も伝えておきましょう」

AIを駆使したフェイク動画も
リベンジポルノの最新事情

 また、リベンジポルノには、さまざまな形態が存在すると渡辺氏は言う。

 例えば現代の技術を持ってすれば、写真を撮られていなかったとしても、ポルノ動画は簡単に作られてしまうというから恐ろしい。

 今年2月、米国の動画配信サイトに『ハリー・ポッター』シリーズでおなじみの女優、エマ・ワトソンのポルノ動画が投稿され騒然となった。しかし後にこの動画は、AIを駆使したフェイクポルノだったことが判明した。AIに顔写真とポルノ動画を学習させれば、誰でも簡単に合成のポルノ動画が作れるという。

 相次ぐリベンジポルノに対し、フェイスブックは5月下旬から「リベンジポルノ」対策の強化を発表。対象となるのは、フェイスブック、インスタグラム、メッセンジャーなど主要SNSサービスだ。

 しかし、その対策内容が、悪用されそうな写真や動画をフェイスブック指定のサーバーにあらかじめ自ら送るという“荒業”とあって、物議を醸している。

 つまり、「この画像、リベンジポルノに利用されるかも…」と懸念しているデータを自分から提出することで、人工知能が画像照合テクノロジーによって、その画像がネットにアップされるのをブロックするというのだ。ユーザーが送ったヌード写真を長期間とっておくことはなく、特定のデータを取り出した後は削除するとフェイスブックは強調するが、情報漏えいなどのリスクがないとは言えない。

 明確な対策がないなかで、米国ではリベンジポルノの裁判合戦が過熱しているという。最近も、元交際相手の女性のヌード写真やビデオをばらまいた男性に対し、約6億9000万円の損害賠償を支払うよう命じる判決が出ている。

 ポルノ写真は、撮らせても、それを公開しても、大きな代償を伴う行為だということを自覚しなければならない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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