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安倍政権と距離を取り始めた「公明党の思惑」

2018年06月25日 06時00分更新

文● 清談社(ダイヤモンド・オンライン

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第2次安倍政権の発足以降、連立与党の一角として政権を支えてきた公明党に変化が起きている。不祥事が続発する状況を前に、安倍政権との距離を取り始めているのだ。来年に統一地方選と参院選を控えるなか、今後、公明党がどんな動きを見せるのか、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏に聞いた。(取材・文/清談社)

安倍首相で勝てるか?
公明党が心配する来夏の参院選

公明党との間にすきま風が吹いている安倍首相
公明党の協力がなければ、自民党から100人もの落選者が出るーー自民党幹部がそう漏らすほどに重要な公明党から、安倍首相は距離をあけられている 写真:つのだよしお/アフロ

 公明党と自民党との距離感の変化を思わせるのが、相次ぐ政権の不祥事に対する山口那津男代表の厳しいコメントだ。

 5月29日には、安倍首相との党首会談で、加計学園問題について「国会の求めることにはきちんと対応してもらいたい。説明責任も尽くしていただきたい」と語り、5月31日にも、財務省の公文書改ざんについて「役人レベルではない、大臣としての政治家としての責任が問われる」と麻生太郎財務大臣の責任に言及し、批判を強めている。

 鈴木氏によると、こうした山口代表の発言の背景には、公明党の事情があるという。

「安倍内閣の支持率は下げ止まり傾向を示していますが、不支持率が支持率を上回る傾向は変わらず、支持率自体も好調時の半分近く。モリカケ問題の先行きもいまだに見えず、この先、支持率の飛躍的な上昇があるかはわからない。今後、安倍首相が9月の総裁選で3選を果たすと、連立与党は来年の統一地方選と参院選を安倍首相の看板の元で戦うことになる。今、公明党が危惧しているのは、この2つの選挙を、低い支持率の安倍首相のままで乗り切れるのかという点です」(鈴木氏、以下同)

 統一地方選と参院選のうち、特に公明党が危機感を持っているのが夏の参院選だ。

「公明党は、夏の参院選に照準を当てています。特に前回の選挙から新たに候補者を擁立して当選させた愛知、兵庫、福岡の3選挙区には今回も擁立する。もちろん全員当選が求められます」

 公明党は、それまで参院選では、東京、埼玉、神奈川、大阪の4選挙区に絞り、それ以外は比例区に注力していた。だが、2016年の参院選では、従来の4選挙区に加え、定数の増えた愛知、兵庫、福岡でも候補者を擁立。選挙区から立候補した7人全員の当選に成功している。複数人が当選する選挙区では、公明党の候補者は、野党だけでなく、同じ与党の自民党の候補者とも争うことになる。

創価学会婦人部から総スカン
「ポスト安倍は石破か岸田で」

「複数区の戦いは、自民党と票を分け合うことはできず、真っ向からぶつかる。公明党関係者によると、その場合は『政権の支持率が高い方が票の拡大に力を入れやすく、選挙を戦いやすい』とのこと。支持率が低いと、無党派層からの反応も悪くなり、政権支持層の小さなパイを自民党と奪い合うことになるのです」

 公明党が前回の参院選で、新たに擁立した3選挙区で勝利したのも、当時の安倍政権の高い支持率が背景にあった。「支持率の高い政権でなければ困る」というのが公明党の本音なのだ。

 では、来年の参院選に向けて「安倍首相のままでいいのか」という声は、どこまで高まっていくのか。公明党の支持母体である創価学会幹部の反応について、鈴木氏が語る。

「ある学会幹部によると、財務省のセクハラ問題や安倍首相の信頼の置けない性格もあり、婦人部の怒りは相当高まっていて、現場は持たないところまで来ているということです。すでにゴールデンウイーク前には、学会内部の厳しい意見について、井上義久公明党幹事長と二階俊博自民党幹事長のラインを通して自民党にも伝えたと、この幹部は話していました」

 4月中旬、創価学会から山口代表に対して「このまま安倍首相でいいのか。今後、自民党はどうするつもりなのかを党レベルで詰めろ」という要望があり、山口氏の指示を受けた井上幹事長が二階幹事長と会談を行ったのだ。

「会談では衆議院の解散についても話題になりました。ですが、結果を予測すると自公で過半数は確保するが野党と拮抗するというもの。結局『いま解散というのは好ましくない』という意見で一致したようです」

 しかしこの対談後も、学会内部の「首相の交代が望ましい」との声は収まっていないという。それでは、公明党が期待する“ポスト安倍”候補とは誰なのか。

「前出の幹部によれば、ポスト安倍についても、公明党の議員を通じて二階幹事長には学会の考えを伝えたと話しています。公明党が推進した軽減税率の導入について批判をしていた石破(茂)さんとは、すでに石破さんサイドから詫びが入ったこともあり、来年の参院選の顔になるなら問題ないようです。もう1人の有力候補の岸田文雄政調会長も、政策的には公明党と波長は合う。公明党からすると、ポスト安倍は石破さんか岸田さんでしょう」

公明党の協力がなければ
自民党から100人の落選者が出る

 9月に行われる自民党総裁選は、自民党所属の国会議員と全国の党員たちによって行われ、国民にも学会員にも投票権はない。しかし、創価学会や公明党が「安倍続投にNO」の意思を示した場合、総裁選に絶大な影響を与える可能性があるという。

「自民党の議員にとって、選挙で支援を受ける創価学会・公明党は避けて通れない。自民党の幹部が『公明党の選挙協力がなければ100人は落選する』と漏らすほどなのです。公明党が意思を表明すれば、忖度して動く自民党の議員はかなり多いと見ていいと思います」

 その一方、現在の安倍政権が終わる場合、学会や公明党にとって悩ましい問題も1つあるという。

「官邸の中枢に位置してきた菅義偉官房長官の存在です。実は、学会幹部とも太いパイプを持つ菅氏は、自公の選挙協力をスムーズに進めてきた功労者なんです」

 衆院選では、公明党の支持者が選挙区で自民党に投票する代わりに、自民党の支持者が比例区で公明党に投票する相互協力を行っている。だが実際には、自民党の支持者が比例区で公明党に投票せず自民党に投票しようとするケースが多い。

「菅氏は、そういう場合、地域の自民党支部を熱心に調整し、比例区で公明党に投票するように根回しをしていました。公明党や創価学会のなかには、次の政権でも菅氏が引き続き要職に就くかどうかを気にかける人も多いでしょう」

 公明党だけでなく、安倍総理の足元の自民党内からも、様々な動きが起きている。

 竹下亘竹下派会長は、5月26日の講演で、安倍総理の3選について、「『はい、その通りです』とはなかなか返事をしかねる」と発言し、牽制した。また地方票獲得のための行脚を熱心に続ける石破茂石破派会長は5月30日、自派のパーティーで「総裁選を無投票にはしない」と断言している。

「前出の学会幹部は『学会は、現在の政局を穏便に終わらせることをホップ、来年の統一選をステップ、そして参院選をジャンプとして3段階で組織を動かしている。もし、安倍首相がこのシナリオの弊害になる時は、迷わず続投にNOです』と語っていました」

 今後、安倍首相の国会対応次第では、どこかのタイミングで公明党が「続投にNO」というメッセージを突きつける日が来るかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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