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東芝PC事業は鴻海・シャープにとって「お買い得」だ

2018年06月11日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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2000億円を上限とする公募増資を行い、みずほ銀行と三菱UFJ銀行向けに発行している優先株を買い取る計画も発表するなど鼻息も荒いシャープ(写真は東芝のパソコン) Photo by Yoko Suzuki

 一見“小が大をのむ”形ではあるが──。シャープは東芝のパソコン(PC)事業を40億円で買収する。東芝クライアントソリューション(TCS)と、世界の販売会社や中国の製造拠点などの関連子会社7社を一気に傘下に入れる。

 東芝は“ノートPCの生みの親”としての栄光の歴史を持つ。2000年代前半まで世界シェア首位に君臨。かつては半導体事業と並ぶ東芝の“2本柱”の一つだったが、その後競争力を失った。

 一方のシャープ、というより親会社である台湾・鴻海精密工業にとって、東芝のPC事業は長らく垂ぜんの的だった。「鴻海が最も強いIT機器分野でのシナジーを生かし、シャープとして市場に再参入したい」とシャープの戴正呉社長は再三表明していた。

 PC事業は、部品価格相場の下落に合わせて部材を大量に安く仕入れる調達力と大量生産による低コスト生産が収益性の鍵を握る。

 調達力で弱いNEC、富士通、ソニーなど日系メーカーは相次ぎ本体での事業継続を断念した。

 だが、世界最大のEMS(受託生産企業)で、かつそもそもPCのOEM(相手先ブランドによる生産)で創業した鴻海にとって、これほど得意な分野はない。現に鴻海は、PC世界市場トップの米ヒューレット・パッカード(HP)と3位の米デルから生産を受託し、両社の欧州の生産拠点を買収している。世界のPC生産のかなりの比率を担う鴻海に唯一欠けるのが自社ブランドだった。

首位ならうまみ残るPC市場

 TCSは現状、債務超過の状態だが、腐っても約1400億円の売上高と世界10位のシェアを持つ。販売・生産拠点とブランド込みで40億円は鴻海には“お買い得”だ。

 続々と事業撤退が続いたPC市場は、現在まずまずの堅調ぶりだ。

 ガートナーによると、18年1~3月期の世界PC市場は、前年同期比台数ベースで2%縮小したが、HP、中国レノボ、デルのトップ3社はそれぞれ販売台数を伸ばした。HP、デルに至っては共に1~3月期決算で売上高2桁成長を記録し、絶好調である。日本市場も同様だ。レノボ、HP、デルなど上位の会社がそれぞれシェアを伸ばす中、東芝だけが12.5%もシェアを落とした。

 優勝劣敗が際立つものの、すでに寡占化が進み、残存者利益を享受することができるフェーズにある。やりようによっては成長余地があるのがPC市場といえるのだ。現に中国・華為技術のように日本市場に新規参入した企業もある。

 今回の買収で、“ノートPCの始祖”の東芝ブランドは一応日本企業が引き継ぐが、実態は10年に鳴かず飛ばずでPCから撤退したシャープの“仮面”をかぶった鴻海。皮肉にも、同社が東芝ブランドのPCを復権させる可能性が最も高い買い手であることは間違いなさそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 鈴木洋子)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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