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「avenue jam」特別対談 第19回

対談・Planetway CEO 平尾憲映×東京海上日動 IT企画部 企画グループ 担当課長 堅田英次 第1回

エストニア電子政府の技術×ブロックチェーンが生み出すものとは

2018年05月29日 09時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita) 編集● ASCII

提供: プラネットウェイ

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 確定申告、保険金の請求。日本はいまだに個人が書類を作り手続きをしなければならないアナログな国だ。一方、北欧のエストニアでは行政や医療機関でほとんどの手続きがIT技術「X-Road」によりデジタル化・自動化されている。

 同技術をもとに日本企業向けデータプラットフォームをつくり、手続きの自動化、徹底的な効率化を進めようとチャレンジしているスタートアップがある。プラネットウェイだ。

 損害保険大手の東京海上日動火災保険株式会社(以下、東京海上日動)はプラネットウェイのプラットフォーム「PlanetCross」の可能性を検証するため、保険金の支払い等に必要な契約内容や医療情報を安全にやりとりできるか、福岡・飯塚病院協力のもと実証実験を行ったのだ。

 実証実験は成功した。たとえば診断書のやりとりを郵送からデータに変えることで、保険金支払いまでにかかる期間を1ヵ月ほど短縮できる可能性を示せたという。

 なぜ東京海上日動はプラネットウェイの技術に関心をもったのか。そして実証実験の成功の陰にあった、情報管理に慎重な医療機関の協力をとりつけるまでの苦労とは。プラネットウェイ平尾憲映代表と、東京海上日動 IT企画部 企画グループ 堅田英次担当課長が語る。(全3回)

Speaker:
プラネットウェイ 代表取締役CEO
平尾憲映

1983年生まれ。エンタメ、半導体、IoT分野で3度の起業と1度の会社清算を経験する。学生時代、米国にて宇宙工学、有機化学、マーケティングと多岐にわたる領域を学び、学生ベンチャーとしてハリウッド映画および家庭用ゲーム機向けコンテンツ制作会社の創業に従事。在学時に共同執筆したマーケィングペーパーを国際学会で発表。会社員時代には情報通信、ハードウェアなどの業界で数々の事業開発やデータ解析事業などに従事。

東京海上日動 IT企画部 企画グループ 担当課長
堅田英次

1976年生まれ。東京海上日動入社後は経営統合・合併、業務革新プロジェクトなどを通してIT開発の現場を徹底的に学ぶ。その後、IT投資計画の策定やITコストの適正化などの企画業務を経て、近年は、レガシーシステムからの転換を如何に進めていくか、デジタル領域とレガシーシステムを如何につなげていくかなど、来るべき変革の時代におけるシステムの在り方の検討に従事。

お客様の大切な情報をどうやってお守りするかを常に考えていました

平尾 初めて堅田さんにお会いしたのは、日本IBMのオープン・イノベーションプログラム「BlueHub」でした。ぼくのプレゼンにほとんどの企業がシーンとしていたとき、堅田さんが質問をしてくれた。理解してくださっていたのでうれしかったです。

堅田 以前からデータ交換には興味をもっていて、オープン・イノベーション系のコンソーシアムにもいくつか参加していたので、平尾さんのことも、初めはよくいる「データ交換でこんなこともできます!儲かります!」という会社の1つかなという印象でした。しかしよくよくプレゼンを聞いてみるとX-Roadがベースになっていた。実は、日本でマイナンバーが導入されるとなったときに、データを安全に取り扱う方法の1つとして情報収集をしていたことがあったんです。また、保険業界では非常に多くの関係者とデータや書類のやりとりを行っているので、ブロックチェーン技術を使って、スマートコントラクトが実現できないかということを真剣に考えていました。ただ、お客様の大切な秘匿性の高いデータをブロックチェーンに載せることはできず、他のセキュリティーが担保されるやり方ではコストがかかりすぎてしまってせっかくのブロックチェーン技術を使うメリットが無くなってしまう。ちょうど頭を悩ませていたところにX-Roadが紐づいた。これを使えば秘匿性の高い情報を大切に扱いながら、多くの関係者とつながっていくことができるんじゃないかと。それでプレゼン後にお声掛けしたのが、お付き合いの始まりでした。当時「プレゼンの方向性はこうした方がよいのでは?」という様な失礼なことを言ってしまった気もします。この場を借りてお詫びします。

平尾 全く気にしていません。変な話ですけれど、東京海上日動さんには「こうすべきじゃないか」というアドバイスを要所要所でもらっていたんですよね。不思議な関係ですが、それがあったからこそ会社として成長軌道に乗ることができたと思っています。東京海上日動さんほどズバッと提案してくれた会社は他になかった。パートナー企業として、一緒に成長できている感覚をもってます。

堅田 そう言っていただけると嬉しいです。ただ、正直なところ最初は平尾社長の風貌から心配の声もありました……。重ね重ね失礼な発言で申し訳ありません。

平尾 はははは。

堅田 ただ、お話をさせていただくと、社会をより良くしていきたいという強い思いをお持ちでしたし、ご一緒されていた、ラウルさんがエストニアとの関係を活かして、エストニアと日本との架け橋として活躍されていることを知っていましたので(プラネットウェイのラウル・アリキヴィ取締役は元エストニア経済通信省経済開発部局次長)、平尾さんの新しい社会を実現したいという「情熱」と、ラウルさんの「信頼感」のコンビネーションは、なかなか良いチームなのではないかと、すぐに感じるようになりました。

平尾 プレゼンはいつもラウルと行ってましたからね。巨漢でヒゲのラウルと。

堅田 もともとPlanetCrossのようなプラットフォームが必要だという思いは強く感じていたんですが、我々保険業界では非常に秘匿性の高い情報を扱うことが多いだけに、慎重にならざるをえない側面がありました。様々な課題を乗り越えて「実証実験をやる」とリリースを出したときに、たくさんの会社から引き合いがあったので、やっぱりみなさん興味関心はもたれているんだなと感じました。

平尾 X-Roadをベースに大手企業がシステムを作ることもできるとは思います。ただ、われわれの強みは顧客の懐に入りこんで作ること。そして、国家でなく民間で使える技術にするために、どこを改良するか技術的に考えられること。われわれはエストニアだけでなくフィンランド政府のX-Roadもとりいれていますが、いい部分を吸収しながら堅牢性を保てるよう改良しています。エストニア政府が他国からサイバー攻撃を受けたこともありますが、情報漏えいはしませんでした。当時担当していたトップもうちにいます。ここまでX-Roadを熟知しているメンバーが融合している会社は他にありません。

堅田 一方で、ずっと聞いていたのは「PlanetCrossを何に使っていくのか」ということ。個人データの交換プラットフォームとしてマーケティングにも使えるということそのものは否定しません。アマゾンが商品をレコメンドするのはお客さんも利便性を感じるためですし、同じ様な世界を企業連携で進めていくためには有効な手段かもしれません。ただ、そういう情報連携とわれわれが目指している世界はちがう。プラネットウェイがマーケティングで稼ぎたいと思っているなら早々に方向転換しないといけないと思っていたので、これからどうやって稼いでいこうとしているのかという事は常に気にしていました。

平尾 つねに聞かれてましたし、何度も論議しました……。

堅田 なぜエストニアのX-RoadをPlanetwayが使えるのか、なぜ最新のソースコードまでまかされているのか、なぜ他社がやらないのかというのもありました。着眼点が他社になかったり、エストニアの技術者を動かす力を持っていたのが平尾さんだけだったということもあるかもしれないですが、こうした我々の疑問に対して、平尾さんがひとつひとつ真摯に答えてくれたことで信頼関係が築かれていったのではないでしょうか。

平尾 そう言っていただけるとありがたいです。

堅田 その後、自分たちでPOCをはじめようと動き出したのは「誰かが実際のものを見せないと」という気持ちがあったから。この技術が大丈夫だという説明を誰かがしないと始まらないのだけれど、誰もしてくれそうにない、という状況でした。しかも、セキュリティーの確保とその実証はすごく難しいと思っています。どんなに新しくて優れた技術であっても、新しく作ったものは本当にセキュリティーホールがないか証明することがむずかしい。でも、PlanetCrossの場合はベースとなっているX-Roadがエストニアで15年以上にわたって培ってきた知見や技術的な実績がある。当然、第三者に入って技術検証もしてもらいましたが、この技術であれば、大切なお客様の情報を預けられるということを世の中に伝えたいし検証したいと思っていました。POCにあたっては、世の中の方々に納得していただくためにも、お客様情報の取り扱いに最も慎重な病院でやったらどうかと考えました。たまたま福岡市がそうした取組を支援していたので、一緒にやっていこうということになりました。

平尾 病院という選択肢については「一番難しいじゃないか」「もっと簡単なところからやるべきでは」という声が社内にはありました。結局、病院の交渉にほとんどの時間を割くことになりましたが、結果的にはいい病院に出会えて、特例的なスピードで進められました。

(第2回に続く)

(提供:プラネットウェイ)

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