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新卒100人に2年間「タダ飯」を食わせるダイキンの太っ腹人材育成

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4月のダイキンの入社式
4月のダイキンの入社式。今年の採用からは、従来の機械系や化学系に加え、情報系のスキルに長けた理数系の新卒獲得にも力を入れている

 空調機メーカー世界最大手のダイキン工業が、今年4月に入社した理系社員100人に対し、2年間にわたって“ただ飯”を食わせるという太っ腹な戦略に乗り出している。

 特定の部署に配属することなく、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といった情報系スキルをゼロから学ばせるというのだ。5月から、大阪大学と連携して昨年12月に設立した「ダイキン情報技術大学」に通わせる。

激変しつつある競争環境

 背景には、並々ならぬ危機感がある。ダイキンは2015年11月にテクノロジー・イノベーションセンター(TIC)を開設。社内外の技術を結集し、より事業の収益化に貢献するような研究開発を目指してアクセルを踏んだ。

 しかし、ここで足りない技術が浮き彫りになった。これからは空調機でもIoTなどの技術が鍵を握ると分かっているのに、ダイキンは空調機専業の「ザ・機械メーカー」だ。三菱電機など総合電機メーカーである競合と比べても情報系の技術が不足していた。

 世界の競争環境は激変しようとしている。中国、韓国勢が空調機の開発力を高めてきており、これまでダイキンがリードしてきた技術は陳腐化しつつあった。

 おまけに米グーグルが、エネルギー効率を考えながら家の住人の好みに合わせた適切な温度を保つ自動温度調節装置メーカーを買収。空調機はともすると単なる端末と化し、「廉価のハードウエア」に成り下がる恐怖が高まっていた。

 新興勢の追い上げと、IoTの担い手であるIT企業の巨人による空調機業界への侵食──。ダイキンにとって情報系人材の確保はまさに焦眉の急なのだ。

 むろん、ダイキンは情報系の「プロ」の中途採用も否定しない。ただ、AI、IoTブームの中、機械メーカーのダイキンにこうしたプロの大量採用は難しい。

 100人のただ飯食いを許した理由はそれだけではない。「重要なのはAI、IoTを活用して何をしたいか明確にすることだ」(AI、IoTを担当する都島良久TIC副センター長)。つまり、ダイキンの各部署における課題を把握した上で情報系の技術の活用を考え、現場が運用しやすい仕組みまで整えられるまとまった数の人材を確保するには、ゼロから人を育てる覚悟も要ると踏んだわけである。

 よって、カリキュラムは座学にとどまらない。「営業部門とアフターサービス部門」など、業務がつながる複数の部署の現場経験も交えていく方針だ。

 AI、IoTのトッププロの年収は数千万円ともいわれるが、新卒育成なら2年間、収益に貢献しなくとも100人分で10億円程度(初任給から単純推計)と、リーズナブルでもある。デジタル時代で機械メーカーがリードを守るには、時に思い切った取り組みが必要になる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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