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電力消費という、ビットコイン最大の問題は解決するか?

2018年05月02日 22時00分更新

文● 編集部

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ブロックチェーンの研究開発企業であるIOHKは5月1日(現地時間)、Ouroboros Praos(ウロボロスプラオス)のアルゴリズムをEurocrypt 2018で紹介した。

ウロボロスプラオスは、IOHKのバーナード・デイヴィッド、ピーター・ガージ、アジェロス・キエアス、そしてアレクサンダー・ラッセルの各氏によって設計された新しいProof of Stakeのプロトコルだ。Crypto 2017に承認され、仮想通貨カルダノ(ADA)でも使われている従来型のプロトコル「ウロボロス」を改良したもの。

ビットコインを始めとした仮想通貨のブロックチェーンでは、Proof of Workと呼ばれるアプローチがよく用いられる。より多くの計算作業をした方が採掘=マイニングに成功しやすくなる仕組みだ。ただ結果として性能の競争が起き、過剰なエネルギー消費が懸念されている。一方、Proof of Stakeでは保有するコインの量に応じて、マイニングが成功する確率が上がる仕組みとなっており、エネルギー消費の問題は生じない。ウロボロスプラオスでは、従来型に対してセキュリティの向上と確率を出すための仕組みを改良した。ウロボロスを成立させるために必要だった3つの要素、つまり敵対関係にある側が常にマイノリティであること=50%以上のコインを保有していないこと、敵対行動の遅延を利用して安全性を高めること、シンクロナスの通信をすることのうち、最初の1つだけで、セキュリティーを確保できる仕組みにしている。

なお、IOHKではウロボロスプラオスよりも次の世代のプロトコルであるウロボロスジェネシスを発表済みだ。Eurocrypt 2018のプレゼン後、IOHKのピーター・ガジー(Peter Gazi)氏に話を聞いた。

ビットコインの電力消費という問題をどう解決するか

ーー研究分野などについて教えてほしい。

研究分野としてはブロックチェーンのプロトコルとセキュリティーだ。もともとCryptographyを専攻していたが、その過程でブロックチェーンにはより堅牢な扱いが必要だと感じたのがきっかけだ。

ーーウロボロスやIOHKのプロジェクトに関わるようになったきっかけは?

私がIOHKで働くようになったのは、1年半ほど前の2017年から。スロバキアに住んでいるが、研究部門のチーフ・サイエンティストはエジンバラ大学のアゲロス・カヤステス教授で、Slackなどで連絡をとりながら、その下で働いている。IOHKを選んだ理由は彼がいたからでもある。

ーーブロックチェーンにおける大きなチャレンジは何か。

一般論で言えば、スケーラビリティー、パブリックアクセプタンス、レギュレーションなどだ。

ーーブロックチェーンの面白さは何か。

端的に言えば仮想通貨だが、例えば銀行にお金を預けてそれを安全に保管するなど、それ以外にもデータをやり取りするところであればどこでも必要な技術だ。言い換えるならば、ブロックチェーンの技術を使えば人々はあらゆることをアプリ化できる。信頼性が求められる様々な分野で使える、ポテンシャルのある点だ。

ーーウロボロス研究の経緯は?

ウロボロスに関しては、私がプロジェクトに加わる以前から動いていたものなので、始まりに関してはあまり詳しくはない。2、3年前になるはずだ。昨年8月のサンタバーバラのイベントで紹介されているのは確かだ。新バージョンに関しては、昨年の4月か5月位に着手し、10月ごろに論文を作成した。

ーービットコインの問題点を解決するプロトコルとのことだが、そのために最も重要な事は何だと考えているのか。

特に解決しなければならない問題としては、エナジーコンサンプションつまり電力消費を下げられるかと言う点だ。マイニングのリソース不足をプロトコル事態の改善によって解決していこうとしている。セキュリティーを担保していくために、ビットコインは多大なリソースを必要とする。

ビットコインの使われる規模が拡大すれば、その分だけリソースが必要になる。比例してエネルギー消費も増える。より効率の良いプロトコルが使われれば、Proof of Worksの呪縛から逃れられる。ビットコインはハードワイヤーのプロトコルであり、ブロックが10秒ごとに発掘される。そういう選択をサトシ・ナカモトがした。しかし機能をより効率的に実現するために新しい仕組みが必要だ。効率化する方法があると考えている。

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