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ふるさと納税が2018年大転換!返礼品で競う時代は終わった

2018年04月27日 06時00分更新

文● ダイヤモンド・オンライン編集部(ダイヤモンド・オンライン

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ふるさと納税が始まって今年で10年を迎えるが、返礼品目的で過熱してきたこの制度が、今年、転換期を迎えそうだ。2017年10月に総務省が自治体に使途目的を明確にした上でのふるさと納税制度の利用を推奨する通達を出し、寄付型のガバメント・クラウドファンディングが登場したからだ。特設サイト「ふるまるクラウドファンディング」を運営するレッドホースコーポレーションの川崎貴聖会長に話を聞いた。

寄付を集めるふるさと納税が
自治体プロジェクト実現のために転換

被災した益城町の給食センター
熊本地震で被災した益城町の給食センター再建のプロジェクトもふるさと納税型クラウドファンディングの対象だ

――「ふるさと納税型クラウドファンディング」が生まれた背景を教えてください。

「ふるさと納税」には、3つのステージがあると考えていて、まず第1ステージは返礼品がベースになっていました。ですが、返礼品と税額控除で寄付を募って、日本に寄付文化を根付かせる点では成功したのではないかと思います。

 ただ、自治体がなぜ寄付が必要なのかをあまり打ち出しておらず、極端な話、集まったお金の使途が不明瞭な部分がありました。

 これから第2ステージになるわけですが、第1ステージを踏まえた上で、自治体がプロジェクト実現のために集める「寄付目的主導型」になり、“モノ”より“コト”に移行するでしょう。そして総務省は、最終的な第3ステージとして、日本も欧米のような純粋な「寄付社会」に持っていきたいと考えているのではないかと思います。

 そういう意味で、ふるさと納税型クラウドファンディングは、第2ステージにマッチしています。具体的な手法としては、自治体がプロジェクトオーナーとなり、プロジェクト達成のために一般市民から寄付を集めます。これを、ふるさと納税の枠組みの中で行うので、寄付したお金が税額控除の対象となるわけです。

――ふるさと納税型クラウドファンディングを広めるため、自治体へのコンサルティング、企業の社員向けのセミナーの開催、在日外国人向けサイト、ブロックチェーン技術の利用など、さまざまなことに取り組んでいるそうですね。

レッドホースコーポレーションの川崎会長
レッドホースコーポレーションの川崎貴聖会長

 われわれからすると、当たり前のこと過ぎて差別化にもなっていないと考えていたのですが、自治体の方から相談があり「営業がクラウドファンディングのニーズを聞きに行きます」というと、それだけで「レッドホースさんは、わざわざ足を運んでコンサルテーションしてくれるんですか」と言われますね。

 総務省が、各自治体に対し、ふるさと納税型クラウドファンディングに取り組んでいるかを調査するらしく、自治体の担当者は右往左往しています。わが社には全国に営業マンがいるので、自治体に足を運んで、いろいろな話を聞いていますが、プロジェクトにふさわしい実にさまざまな課題があることに驚いてます。災害支援もその一つです。

東北、熊本の被災地プロジェクトは
「終わっていない」とメッセージ発信

――今回、東日本大震災の被災地の宮城県亘理町の新庁舎建設や、熊本地震の被災地の益城町に給食センターを建てるプロジェクトがありますね。

 亘理町は、地震から7年以上経った今でも庁舎はプレハブで、震災は終わっていないというメッセージになると思います。

 益城町に関しても、元の生活を取り戻せていない人たちが、たくさんいることを知ってもらえる機会になります。現在、益城町の小中学校の給食は、他の自治体の設備や委託により賄っている状態です。新しい給食センターは、単に元通りに復旧させるのではなく、平時は“食で子どもたちの笑顔をつくる給食センター”、緊急時は“被災者を助ける給食センター”として再建することを目指しています。

――どちらも大きなプロジェクトで募集目標金額が1億円と大きいですが、達成はできるのでしょうか。

「ふるさと納税型クラウドファンディング」は今年からスタートした制度ですが、特定のプロジェクトがなかった第1ステージでも、上位から150位くらいの自治体でもふるさと納税で5億円ぐらい集めています(2016年)。今回のケースは目的がはっきりして、返礼品も付いているので、これまでの経験からすると1億円はそんなには高いハードルではないと思います。きちんとPRしていけば集まります。お金ではなく住民税の移動なので、寄付のハードルが低いんです。

企業で無料セミナー開催
寄付者の「理解不足」「大義ない」を解消

――どのようなPR活動を行っていますか。

 企業の総務や人事部と組んで、全国各地で企業の社員向けにふるさと納税に関する無料のセミナーを開いています。2月1日から本格的にスタートして、すでに650社超で開催しています。

 私は「布教活動」と呼んでいるのですが、税額控除と返礼品のメリットがあるのに、ふるさと納税をしたことがない人が、いまだ8割くらいいます。「布教活動」により、この人たちの「理解不足」「大義がない」という二つの問題がクリアできるでしょう。

 税額控除と返礼品のメリットがある中でやらない手はないんです。自治体が抱えている問題を解決したり、夢を応援したりするクラウドファンディングは、対面でプロジェクトの中身を知ってもらうことが大切だと考えています。

インバウンド事業との
親和性が高い

――在住外国人にも、ふるさと納税をしてもらえるようにしているそうですね。

 日本には約200万人の外国人がいて、そのうち住民税を払っている人は170万~180万人ぐらいいると推計しています。弊社は日本で唯一、英語と中国語でのふるさと納税ポータルサイトを運営していまして、日本に在住している外国人の方がふるさと納税をできるようにしています。

 しかし、総務省でさえ、ふるさと納税に関する英語版や中国語版サイトを作って在日外国人に制度説明をしていないなど、住民税を払っている在日外国人を実質的に差別していると言えなくもない状態です。国が在日外国人に制度説明を実施していない一方で、われわれ一民間企業が多言語版ふるさと納税ポータサイトを運営しているので、外国人ユーザーからは「詐欺ではないのか」「国が何も説明していないのに」と誤解されるなど高いハードルがあります。それでも、やってみる価値があると考えています。

「地域産品を世界で売りたい」というニーズは、自治体に根強くあります。日本の人口が減っていく中で、日本が生き残るには、海外でモノを売るか、日本に来て消費してもらうしかありません。ですが、ふるさと納税の仕組みを使えば、在日外国人に地産品がどのように受け入れられるのかデータ収集と分析ができますし、自治体にとって意味があるサービスになります。その結果を活用して、ゆくゆくは越境ECにもつなげることができると思います。

 ふるさと納税だけで切りだすと、日本という枠の中でモノと住民税が移動しているだけですから、国富は一切増えていません。しかし、日本に住んでいる外国人に地域や地域産品のファンになってもらい、訪日外国人にもクチコミで広がっていけば、国富を増やすことができます。ふるさと納税とインバウンド事業、および越境ECは非常に親和性が高いんです。

ブロックチェーンの技術は
災害時の寄付に向いている

――他の事業者にない特色として、ブロックチェーンの技術の導入開始を挙げられていますね。

 3月28日にIT企業のオウケイウェイヴと、ブロックチェーン技術を用いたふるさと納税型クラウドファンディングのプラットフォームの実証実験を開始することで提携合意しました。

 ブロックチェーンの技術は、寄付にとても向いています。リアルの通貨でやるより時間や手数料がかかりません。残念ながら、世界各地で災害は起こりますが、こうした際にも瞬時に寄付金を送ることができます。

 東日本大震災のときに、寄付が不正に使われてしまうケースがありました。こうした災害便乗型詐欺を食い止めることはできませんが、暗号通貨を寄付プロセスで流通させていれば追跡できます。我々が目指すブロックチェーン技術を用いた寄付プラットフォームは、寄付者と寄付される側の情報の非対称性が引き起こす、いわゆる「エージェンシー問題」を解決するこができるのです。

 それから一度寄付してくれた人や類似の寄付を行った人は、次に寄付してくれる可能性が高いです。上記プラットフォームとAIによるビッグデータ分析を組み合わせることで、潜在している寄付者データが抽出されると、次に寄付を集める側にとってもプラットフォームは利用しがいがあります。

 弊社が協定を結んでいる佐賀県みやき町は、ブロックチェーンの技術を取り入れたふるさと納税および、ふるさと納税型クラウドファンディングの在り方について実証実験を行う第1号となりました。

自治体はふるさと納税を通じて
ファンをどうつくるかという競争に

――今回のこの制度の特色は寄付の目的がはっきりしていることですが、寄付してくれた人たちにどのように伝えていくのでしょうか。

 クラウドファンディングは、支援者や共感者の注目を集めて、「ファン」にしていくプロセスでもあると考えています。

 今回は特に、寄付金を集める目的があるプロジェクトなので、寄付した人や、これから寄付しようとしている人に対して、写真や動画、SNSやコミュニティなどで進捗が分かるようにしていきたいと思います。自分が寄付したお金がどう使われているのかが分かれば、複数年にわたって行われるプロジェクトで、また同じ人が寄付してくれる可能性が高いからです。

 ファンになると、自分が育てている、自分が見守っているんだという参加意識が強くなります。今後、自治体は返礼品ではなく、自分たちのファンをどうつくるかという競争になっていくと思います。

――今後のさらなる展開を聞かせてください。

 日本でふるさと納税市場の枠でやっているさまざまな取り組みを、海外の寄付市場に向けて利用することを考えています。また、ふるさと納税は画期的な制度なので、このノウハウを輸出することは国策にもなると思っています。われわれの会社は台湾で上場しているので、まずは台湾政府には提言しようと思っています。

(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 小野寺暁子)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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