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イオンが「岡田ジュニア」を店長に据える有機食品スーパーの本気度

2018年04月25日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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イオン岡田元也社長の長男がビオセボン・ジャポン店長に就任
外資系金融を経てビオセボンの店頭に立つこととなった岡田尚也氏(中央)。イオンのどのような将来像を描いているのか Photo by Satoru Okada

小売業界のガリバー・イオンを率いる岡田家の“御曹司”が、フランス発祥のオーガニック食品スーパーと提携した国内2号店の店長に就任した。低価格戦略を得意とするイオンだが、品質重視のノウハウを磨き上げることができるだろうか。(週刊ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

仏スーパーとの合弁店店長に
岡田元也社長の長男が就任

 パーマのかかったヘアスタイルに蝶ネクタイ姿で、店員にきびきびと指示を出す。取引先などの関係者と笑顔であいさつを交わし、開店前に集まった買い物客に、濃縮還元ではない100%フルーツジュースを振舞う――。

 イオンがフランス発祥のオーガニック食品スーパー・ビオセボンとの合弁で設立したビオセボン・ジャポンの2号店が、東京・中目黒に4月20日開店した。その店長を務めるのは、国内小売業最大手のイオングループを率いる岡田元也社長の長男、尚也(なおや)氏である(写真)。

「明るく快活な性格で、むしろ父親よりも小売りのトップに向いている」(小売り大手幹部)ともいわれ、やがては元也氏の後継となるであろう尚也氏を店長に送り込むほど、元也氏は実は、オーガニック食品スーパーの展開に強い思い入れを持っている。

 決算や経営方針に関する記者会見後はいつも、報道陣による囲み取材を拒否し、逃げるように会場を去る元也氏。だがこの日は、フランスから駆けつけたビオセボン本社のティエリー・ショラーキCEOと共にこの店のオープニングセレモニーに臨んだ後、店舗をひと通り回ってから、報道陣に対して饒舌に語り続けた。

「農業生産者のスタートアップ企業や、経理など彼らの事業をサポートするスタートアップ企業も増えているが、まだ日本は欧米と比べて遅れている。変化が見えるのは日本酒など特定の世界だけだ」

「日本産の商品だけでオーガニックをそろえようとすると、そろわない。それは日本のメーカーの怠慢なんだ」

「一番の問題は、(日本産が)安全だと思ってんだもん。政府やマスコミの皆さんがグルになって、日本の消費者をだましてるわけだ。国産だから安全だというのは、嘘ばっかり」

 表現は過激だが、今や中国でも食品の安全確保の技術や手法が改善されている中で、日本産=安全で高品質という相対的優位性は薄らぎつつある。にもかかわらず、日本の多くの農業生産者やメーカーにはその危機意識が乏しいから、小売りの雄であるイオンが自らオーガニック食品の展開を手掛けざるを得ない――。元也氏の言葉を要約すれば、このようなことになるのだろう。

いかに低価格は維持しつつ
品質をアピールできるかが課題

 もっとも「今後、ビオセボンがイオングループの成長をけん引することになるのか」と問われると「それは、知らん。(質問をした記者自身が)笑いながら聞いているんだから」と自らも笑いながら指摘し「その程度だ」と答えた。

 国内のビオセボン1号店は、旧ピーコックの店舗を転換して16年にオープンした麻布十番店であり、今年5月には渋谷区神宮前に3号店、6月には川崎市のイオン新百合ヶ丘店の2階に4号店を相次いでオープンする。

「ビオ」とはフランス語でオーガニックや自然食品を指す言葉。日本のビオセボンの店舗でも、生産者や原料にこだわった日本産の有機農産物や加工品のほか、フランス直輸入のビオワインやチーズなどを販売。

 価格はもちろん、通常の食品スーパーよりもやや割高だが、ワインやチーズと並んで、焼きそばの麺や豆腐など、日本人に馴染み深い食品もそろえている。牛肉はイオン肝いりの「タスマニアビーフ」を販売するなど“イオンっぽさ”が漂うものの、全体として高級感のある商品展開と雰囲気作りで、高級スーパーの成城石井と競合しそうだ。

 また元也社長は、ビオセボンがイオングループ全体をけん引するまでには至らないとはしつつも、商品開発においては「グループの中でトップランナーになる」と語る。

 実はイオンは、自社で扱う農産物のうちプライベートブランド(PB)商品の全てについて、2020年に安全性の国際認証である「グローバルGAP」を達成するなどの目標を掲げるなど、品質向上に力を入れているのだ。ビオセボンで培ったノウハウも、こうした取り組みに注がれていくのだろう。

 一方で、イオンの中核事業である総合スーパーは、2018年2月期の営業利益が前年同期比118億円増の105億円と大幅な増益となった。

 その要因の一つが、PBである「トップバリュ」商品のさらなる値下げに踏み切ったことだ。1点当たりの単価を下げて1人当たりの買い上げ点数が増加した結果、売上高全体がアップしたためだ。これは、消費者がイオンに期待していることが、品質よりも、やはり価格の安さであることを示しているといえるとも言える。

 従って今後イオングループとしては、低価格を維持しつつ、品質へのこだわりをいかに消費者にアピールできるかが課題となる。現在ビオセボンの店頭で修行に励んでいる尚也氏が、いずれその重責を担うこととなるのであろう。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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